株式会社ソレプロ

株式会社ソレプロは、滋賀県犬上郡豊郷町に本社を置き、神戸オフィス、近江八幡オフィスの3拠点でEC運営サポート事業を展開している会社。2024年1月現在の従業員数は16名。ディレクター、デザイナー、エンジニアが一体となり、ECのプロフェッショナルとして、マーケティング、新規構築、運営サポートまで一気通貫で支援している。

取引先は全国に広がる。規模感は中小企業から上場企業まで幅広い。手作り石けんやミネラルウォーター、食器、かばん、衣料、バレエシューズ、文具、家具、掃除用品等、業種業態も様々。EC運営のサポートをしているショップ数は46店舗、制作実績は435サイトに及ぶ（いずれも2024年1月現在）。

ECの中でも同社が注力しているのは、各種ASPを利用した自社サイト型のサイト構築だ。特に『futureshop』による構築では豊富な実績を持つ。同ASPの構築実績は国内トップクラス。株式会社フューチャーショップが認める「認定マイスター」（特に構築実績や運用経験が多く、高い専門性を持っていると認められた制作パートナー）の中でも上位に位置付けられている。

このような背景があるため、futureshopを利用して自社サイトを構築、リニューアルしたいとの相談が日々舞い込んでくる。強みは提案力だ。代表取締役・市川晴英氏が語る。

「見積金額は、50名規模の従業員を抱える大手制作会社と比べても決して安くはありません。ただし、当社は競合調査を含めて徹底したリサーチを行った上で、いかに利益を上げていくのかを具体的に示した提案書を作成します。当社が提示する構築費用を支払うことで、どれぐらいの売上が上がるかがイメージできる提案書が、大手クライアントからも選ばれている要因であると考えています」（市川氏）。

同社は“貴方の「利益」が出るまで伴走する”を経営理念とし、“EC運営者の本気の魂を燃やし続ける”というビジョンを掲げている。同社が作成する提案書も、これらの経営理念やビジョンに基づいて作成される。そして売上を上げるためのECサイト設計と構築に加え、運営の仕組み作りまで入り込んだ支援を行う。成果はクライアント側の取り組み方にもよるが、月商20万円からスタートし、5年で3,000万円規模にまで伸ばした事例もある。

「そのお客様は自社オリジナル製品を販売する会社で実店舗も構えていますが、今ではECがメイン事業になりました。スタート時は担当者1名でしたが、当社がEC部門の組織作りも支援し、10名以上のチームにまで拡大しました」（市川氏）。

同社が主催するクライアント向けの定期勉強会やチャットグループには、各企業からEC運営者が100名以上も参加。そのことからも同社のサポートに対する顧客満足度の高さがうかがえる。

同社の創業は2014年5月。市川氏を含め、滋賀県内でWeb制作を受託していた個人事業主3名が集まって立ち上げた。そして2015年1月に法人化し、紆余曲折を重ねながら成長してきた。社名には「IT（=それ）のプロフェッショナルであり続ける」という思いが込められている。

市川氏がWeb制作を始めたのは21歳の時だ。生命に関わるような大事故に遭い、病院での療養生活を送る中、Web制作を学び始めた。退院後は知人の仕事を手伝いながらWeb制作やアプリ開発の実務経験を積み、27歳の時に個人事業主として自立。地元の小規模事業者を中心に約150社の顧客を抱えるまでに活動範囲を広げた。

そういった経緯の中で学ぶ楽しみを覚え、それまで支えてくれた人々や社会に対し、自身ができることで恩返しをしたいという思いから立ち上げたのが同社だ。

「創業当時、Web制作に何百万円も払ったのに、成果が出ずに困っていると相談に来られる方が沢山いました。そんな悪徳商法のようなことをしていてはいけない。お客様の経営に寄り添える会社を作ろう。それが当社の始まりです」（市川氏）。

以来“デザインはトータル設計”という思想を掲げ、形骸化した格好良さではなく、顧客が持つ情報を必要としているユーザーに正確に届けるため、緻密に設計されたデザインにこだわってきた。

ターニングポイントは2018年、神戸のあるクライアントからEC部門の底上げを依頼されたことだった。要請を受けて、毎週クライアントを訪問。それを機に、市川氏自身が単身で神戸に移住し、まさしく担当者に寄り添うようにECサイトの改善や運用の仕組み作りを進めた結果、売上はクライアントの期待を大きく上回るほどに拡大した。その成功が自信となり、EC運営サポートに注力するきっかけとなったのである。

「“EC運営者の本気の魂を燃やし続ける”というビジョンも、この時の経験をベースに言語化したものです。まずは魂に火を付けることが大切です。火さえ付いてしまえば自然に売上は上がります。そこにテクニックは必要ないということが実感できました。現在はお客様のビジョンや年間計画の作成等も含め、奥深くまで入り込んで支援しています」（市川氏）。

事業の柱が定まったことで、成長の基盤も整ってきた。従業員の定着率が高まり、市川氏が制作の現場から離れてマーケティングや提案書の作成に注力する余裕が生まれた。緻密な提案ができるようになったことで制作単価も引き上げられ、制作現場にも余裕が生まれた。現在取り組んでいるのは、そこで蓄積した市川氏個人の知見を同社のノウハウとして共有し、定着させることだ。そのためにマーケティングチームを創設。現在は専任者を置き、部門として確立を図るとともに、新しい社員を迎え入れる際の教育研修の場として機能させている。

「人員が揃い、単価を上げたことで生まれた時間を活用し、社内勉強会を開く等、私が蓄積してきたノウハウを浸透させるための取り組みを進めています。今後は3年間で30名近くまで人員を拡大し、将来的には“関西の中でEC制作と言えばソレプロ”と言われるポジションの確立を目指します」（市川氏）。

同社の社員は、平均年齢34歳。20代から50代半ばまで、幅広い年代で構成された会社だ。創業以来、業界未経験者を採用し教育・研修を行いながら戦力に育ててきた経緯があり、個性的な人材が集まる。また、市川氏自身が中小企業の社長像からはかけ離れ、ワンマンではなくフラットな組織運営を志向してきたこともあり、言いたいことが言いやすい、オープンな社風が定着してきた。

ただ、今後の事業計画を進めるためには、指示系統が明確な組織体系が必要となる。そこで、2022年度にビジョンや行動指針を策定し、本格的な組織作りを進めている。外部人材の協力を得ながら、1on1ミーティング、中間管理職の育成、言語化スキル教育、意識改革等、様々な取り組みを行う。

「特に重要な課題はマネージャー層の育成です。これまでは未経験層を中心に採用してきましたが、軸足が定まった今、経験者採用に注力しています。既存の社員も含めて、経験者層を厚くして、その中からマネージャーに適切な人材を登用していく計画です」（市川氏）。

キャリアパス制度の整備にも着手している。スペシャリストまたはエキスパートとして特定の技能を突き詰めたい人、マネージャーとしてのスキルを伸ばしたい人、それぞれの適正や志向に合わせた人事考課の基準を策定し、本格運用に向け準備中だ。

さらに、週に1度の在宅勤務制度や、スキルやノウハウを共有するための社内wiki、経験者が講師を務めるデザイナー向けのデザイン講習、社員同士で学んだことをローテーションで発表する勉強会、頑張りによってポイントが貯まり報酬に変わるポイント制度等、社員の成長や働きやすさ、モチベーションアップに繋がる制度を積極的に導入してきた。2023年12月に近江八幡オフィスを開設し、滋賀県在住メンバーの就労環境も整備している。

こういった環境整備を通じて社員の定着率向上や雇用の促進を図り、2027年には30名近くまで会社規模を拡大する計画だ。また、2025年度に東京支店を開設する計画もあり、既に東京在住のメンバーを配置して準備を進めている。

市川氏が目指しているのは、“顧客も仲間も安心して頼れる会社作り”だ。そのために“顧客第一主義”、“プロフェッショナルであり続ける”、“主体性を大切に”、“夢を持とう”といった行動指針を定めた。求めているのは、成長意欲と知識欲求があり、変化を恐れず、前向きにチャレンジできる人材である。

同社の魅力は自由さだ。市川氏自身がフランクな性格のため、制度作りを進めながらも堅苦しい雰囲気にはならず、社員は伸び伸びと力を発揮できる。また、20名に満たない小規模な制作会社ながら、案件は全て直契約。外部から制限されず、クライアントに集中して向き合い、成果を追求できる。ECのプロフェッショナルとして成長し、活躍できる環境は充分に整った会社だ。