セイノーラストワンマイル株式会社

2024年4月1日よりセイノーグループでラストワンマイル配送事業を担うココネット株式会社、株式会社地区宅便とラストワンマイル関連のSaaS事業を担う株式会社ベクトルワンの合併として【セイノーラストワンマイル株式会社】が新たなスタートを切る。
ラストワンマイルとは物流や配送の分野で使われる用語で、配送された商品の最終物流拠点から受取先まで運ばれる最後の区間を指す。これは配達員が車やバイク等で荷物を届ける段階。この最後のワンマイルが物流プロセスの中でも複雑でコストが高い部分の一つとされ、効率的な配送ネットワークの構築や配送方法の最適化が求められている。会社体制の再編により、セイノーグループラストワンマイル事業の競争力強化に努める。

ラストワンマイル領域は、宅配便取扱量が過去10年で約12億個増加し、2035年には年間88億個に達する見込みである。加えて日本の買い物弱者は約850万人を超え、コロナ禍による宅配ニーズの急増もあり、日用品・食料品の即時宅配サービスが欠かせないラストワンマイルのインフラサービスとなっている。
それにもかかわらず、ラストワンマイル領域における運び手不足は深刻な状況にあり、さらに2024年から始まる自動車運転業務の労働時間制限によって、『荷物が当たり前に届く』という物流の根底が崩れる危機が起こり得る。

物流業界が抱える喫緊の課題を背景に、セイノーグループはその解消に向かい、ある構想を打ち立てた。それが2017年から開始した「オープン・パブリック・プラットフォーム（以下O.P.P）」の構築だ。
セイノーグループのO.P.P構想は、次の考えに基づいている。
・経済はオープンでないと循環しない
・クローズドなところでは価値は生まれず、オープン化して多くの人を巻き込むことが必要
・誰もが使えるパブリックなプラットフォームをつくり、そのプラットフォーム上で利用者がそれぞれの価値を見出していけることがなにより大事

これらの考え方をベースにして同業他社や地域と連携し、オープンで公共性の高い物流プラットフォームを構築することで、利用者の効率化や価値向上、さらには社会インフラとして産業・環境・生活への貢献を目指している。
2024年4月1日からは、ラストワンマイル関連のグループ会社を再編した上で新社名を掲げ、課題解決に向けて加速する。

新会社の代表取締役社長に就任するのは、ココネット株式会社代表でもある河合秀治氏だ。河合氏は西濃運輸株式会社に入社後、ドライバー業務、本社監査室での業務等を経て、2016年からセイノーホールディングスのオープンイノベーション推進室長に就任し、複数の新規事業開発を推進した人物である。BtoB取引が中心のセイノーグループにおいて新たな事業ポートフォリオの議論を行い、「パーセルソリューション」と呼ばれる小口貨物の新規事業開発に着手した。現場と意見交換を重ねる中で食料品の小口貨物に注目し、多くの課題があったことから着想したのがココネットの事業だった。

ココネットは「ハーティスト」と呼ぶ地域に密着した配送スタッフが、高齢者や共働き等、日常の買い物に不便を感じる家庭の買い物代行等、食料品・日用品を届ける事業を全国で展開している。特徴は荷物を届けるだけではなく、コミュニケーションを大切にする点。利用者と笑顔で会話を交わし、困ったことはないか、様子に変わりはないかと気持ちを寄せる。運送業ではなく、接客サービス業という位置付けだ。

前述の通り、ココネットはセイノーグループにおける成長戦略の一環として立ち上がった事業だが、一方で同事業には河合氏のある思いも込められている。それは河合氏が祖父母の様子を見て湧き上がった、「買い物で大変な思いをしている人々の助けになりたい」という思いだった。
「私達はハーティスト一人ひとりが一つの燈となって輝き、国全体・地域社会を明るく照らす『照国』をミッションとしています。ただAからBに効率的に物を運ぶだけなら当社でなくてもいい。地域社会の方々に寄り添い、身近な存在として生活を手助けする『社会課題解決型ラストワンマイル』こそ、我々がやる意義だと考えています」と河合氏は力を込める。

労働人口の減少や高齢化・核家族化の加速等、ラストワンマイルに対する社会的ニーズは高まるばかり。しかしながら配送スタッフ不足が大きな課題になっており、課題解決に向けO.P.Pの考えに沿って手を組んだのがベクトルワンだった。ココネットはベクトルワンが開発したラストワンマイルサービスの統合支援システム『DSS（Delivery Solution SaaS）』を活用し、配送オペレーションの効率化とハーティストの短期戦力化を実現した。

河合氏は「現在大手スーパーの4割ほどがDSSに繋がっていて、ラストワンマイルサービスに欠かせないインフラになりつつあります。輸配送管理システムの領域で、狭域圏の配送に特化しているのは当社のみ。今後さらにソリューションを磨き上げ、利用者と働く側の双方に対しての価値ある仕組みとして日本のデファクト・スタンダードにしていきたいです」と話す。
ベクトルワンは新体制となってこれまでの取り組みをさらに強化し、セイノーグループのラストワンマイルにおけるO.P.Pを推進する。

河合氏は「現場主義」をモットーに、自身もハーティストとして配送業務に携わる。今回の取材にもハーティストのユニフォーム姿で現れ、出張や現場への移動にも軽貨物車を使用しているという。
「現場の配送スタッフはもちろんのこと、私自身もDSSを日常的に使ってフィードバックしています。開発エンジニアは現場の声を受け、日々細かなカスタマイズと修正を施し、ソリューションのブラッシュアップに励んでいます」と河合氏。ユーザーの生の声がいち早く届き、すぐにソリューションへ反映できるスピード感が醍醐味だ。

複数の企業が異なるタイミングでグループに加わった変遷はあるが、セイノーグループの理念の下、志は同じ。困っている人の負を解消する仕事に喜びを感じるメンバーが揃う。そのため会社間の垣根を越えた、フラットなコミュニケーションが取られている。壁をつくらない河合氏の人柄によって社内カルチャーが醸成されている部分も大きいだろう。
2023年に移転したオフィスは大部分がフリーアドレスになっており、関連グループ会社のメンバーも自由に出入りする。執務エリアの他にカウンターバーが設置され、時折カジュアルな飲み会を開催して交流を深めている。

重厚長大な産業である運輸業大手グループの中で、ラストワンマイル事業は新しい取り組み。先駆的な役割を担い、機動力や柔軟性といったベンチャー企業らしさを持つ。現状維持ではなく、前進するためにチャレンジを奨励するカルチャーが持ち味だ。大きな組織の安心感を保ちつつ、挑戦が叶うベンチャーの良さを享受できる環境である。福利厚生や待遇の面は新体制になることで見直しを進めているが、現行条件から不利にならないよう配慮しながら議論を重ねている。社内は新たなスタートに向けて、活気付いている状況だ。

河合氏は次の通り、応募を呼び掛ける。
「我々は社会課題の解決に重要性を感じ、期待されているラストワンマイル領域で社会インフラをつくっていく会社です。ただ商品を運ぶだけではない、価値あるラストワンマイル事業を推進するために、新しい取り組みにも積極的に挑戦していきます。事業に意義を感じ、新しいチャレンジを楽しめる人にぜひ入社してもらいたいと考えています。チャレンジできる環境は整っています。ご応募をお待ちしています」
新体制において組織の原動力になり得る人材を求める。少しでも気になるポイントがあれば、まずは気軽にコンタクトを取ってほしい。