代表取締役社長にご就任されるまではどのようなご経験をされましたか。
当社は元々大手メーカーのグループ会社として設立された会社です。メーカーの資本比率は40%でしたが、下請けとしてメーカーの商標が付いたコンピュータシステムを開発する役割を担っていました。私も入社してしばらくは営業やSEに同伴し、打ち合わせやプログラム納品、稼働準備、本稼働の立ち会い、クレーム処理等に従事しました。 当時は当社以外にも、トスバックの名前が付いた会社は他の地方にも存在していましたが、今はほとんど存在しません。バブル崩壊を機に、なくなっていきました。当社が生き残ったのは、中部圏の一部上場企業と取引があり、継続的に仕事を頂けたことと、システム開発の上流工程から下流工程、そして運用保守まで任せていただけたことが要因です。一般的に当社ぐらいの規模感の会社は、プログラム製造だけ、プログラム試験だけ、打ち合わせだけ等、一部の工程を切り出されて請け負う形が多かったのですが、当社は設立当時から要件定義からシステム導入支援、システム保守まで全ての工程をを担っていました。また、エンドユーザーも、金融、流通、製造業と、親会社から来る仕事は何でもしていました。 状況が変わったのは、私が社長に就任する5年ほど前です。リーマンショックを機に世の中の景気が悪化して、親会社の下請けだけではなく、独自に営業する必要が生まれました。その際に私が当時の社長から指示を受け、SEをしながら営業も兼務するようになりました。社長に就任する頃には、SE兼営業以外にも細々とした雑用的な仕事も任されるようになっていました。
社長にご就任されてから、営業方針や経営方針等で変えられたことはございますか。
いいえ。当社は設立以来、大手メーカーの下請けとして、頂く仕事は全て「ノー」とは言わずにやってきましたので、何か特色があるわけではありません。その状況で何か変えようとしてもリスクは非常に高いので、自分達にできることで、世間の皆様にお役に立てることを優先的に考えて事業を運営しています。その方針に変わりはありません。 ただ、私が社長に就任した年度の3月に、親会社が資本を引き上げるということがありました。以来、完全に自主独立で会社を運営していく必要が生まれましたので、社内の意識改革に取り組んできました。特に、案件を担当する責任者クラスには、「損をする仕事はしない」ということを強調し続けています。 親会社の下請けだった時は、与えられた仕事は何でもやっていました。しかし、それでは本当に儲かっているのかどうかが分かりません。自主独立で生きていくには、そのような状態では会社運営ができません。それまでのように発注先に言われたことが正解だと思うことを止めて、見積もりの精度を上げるように指導してきました。 「IT業をやっている」と言うと、よく「特別な技術があるのか」とか「何か特別な商品を持っているのか」とか、「画期的なやり方があるのか」等と質問されます。もちろん私もそういうことを考えないことはありませんが、メインに考えたことはありません。40名弱の従業員が豊かに暮らせる、疲弊せずに暮らせるには、本業でしっかりと利益を生まなければなりません。時には取引先とも交渉しなければいけませんし、主義主張をする必要もあります。言われた通りにやっていては健全な事業継続は難しく、個人の成長と会社の発展も見込めなくなります。
福利厚生やオフィス環境の整備にも力を入れていると伺いました。
まず福利厚生に関しては、養老保険に入っています。しかも個人の名義で入っていますので、本人に万が一のことがあった場合でも、ご家族はそこから対価が得られます。また、退職時には間違いなく退職金が支給されます。私自身60歳を過ぎて思うのは、いくら貯蓄があっても退職金がないのは会社員としては非常につらいことです。途中で何かあった時には家族に還元されて、定年まで働き続けられれば積み立てたお金が退職時に返ってきます。損害保険にも入っていますので、病気や怪我をした時に入院費用もそこから給付されます。長く働き続けるには、このような安心が必要です。 また、終日パソコンに向かって仕事をしていると身体も凝ってきますので、整体の費用は会社が負担します。さらに、オフィスで仕事をしている間の飲料水やコーヒー、紅茶、お茶、小腹が空いた時のためのカップ麺やお菓子等も常備しています。 私自身も経験がありますが、毎日会社に出勤していると、休憩中に飲むコーヒーやジュース、昼食等にもお金がかかります。この出費は積み重なると馬鹿になりません。付き合いもありますので飲みに行ったり、ゴルフに行ったりすれば、小遣いではまかない切れません。それで自己啓発にお金を使えと言われても使えるお金等はありません。せめて会社にいる間のお茶代やおやつ代、軽食代を負担すれば、1カ月で1万円ぐらいのお金が手元に残ります。若い時の1万円は、ものすごく大きいですよね。 こういった費用を捻出するためにも、見積もりの精度を上げることは非常に重要です。自分や部下が動いた工数をしっかり見積もりにのせなければ、そういったところにお金が分配できません。
最近業務量が増えているとのことですが、特に伸びている領域はございますか。
いいえ。特に目に見えて増えた領域はないと思います。 もちろん、我々がやっているシステム開発の仕方や扱う技術は、日々進化、進歩していますので、10年前と全く同じことをやっているわけではありません。お客様の目に見えない変化には、個々のエンジニアが対応していってくれますし、ChatGPT等、新しい技術のトレンドが現れた時には、私から興味がありそうな社員に声をかけて、チャレンジを促しています。また案件の管理方法等も変わりました。例えば、これまでプログラムの管理方法は個々に任せていましたが、全社統一のツールを使って一元管理しています。その他にも、時代に合わせた開発手法は必要に応じて取り入れています。 そういった意味では、10年前と比べて、大きく変わったという実感はありますが、お客様からご依頼いただく案件自体には大きな変化はありません。 ただし、システム開発業界ではSESの形態が増え続け、請負で開発をしている会社は年々減少していることに間違いはありません。お客様からプロジェクトごと安心してお任せいただけるところが当社の強みですので、今後もその強みを生かして商圏を拡大し、取引先を増やして行きたいと考えています。
最後にメッセージをお願いいたします。
当社は安心して長く働きたい方や、エンジニアとして頑張っていきたい方にとっては、いろんな経験ができる会社です。また、当社はメーカー、Slerの下請けとして、業種業態にかかわらず、どのような案件にも対応してきたという経緯があります。そのおかげでお客様と密に打合せをする場への参加もできますし、社内でプログラム設計、開発に注力することもできます。またお客様の導入支援やアフターフォロー等、様々なポジションでの仕事があります。 将来的には、SEとして開発の上流工程から下流工程、運用保守に至るまで一気通貫で担当していただくことも可能ですし、「自分はここに特化したい」というものを見つけられるなら、SEにこだわらず、プログラマで頑張っていただいても構いません。さらにコンサルタントとして頑張る道もありますし、エンジニアとして経験を積んだ上でシステム営業に関わる道もあります。キャリアパスの選択肢は無限です。