株式会社アルカミクス総合研究所

デザイン、開発、映像の3つのクリエイティブで「なくてはならないもの」をつくることをミッションに、Webサイトを中心としたデジタルコンテンツの制作を手掛ける株式会社アルカミクス総合研究所。「目には見えないけれど欠かせない、大切な存在」である空気＝AIRをコンセプトに、大げさに姿を見せずとも必要な存在として世の中に貢献し、自然と頼りにされる心地よい存在でありたい。そんな想いから「Arcamix Institute for general Research」という社名が生まれ、通称AIRとして活動している。

「好きなように仕事をして好きなように生きてほしい」――そう語るのは、代表取締役の平松謙次氏。
同社の設立の経緯は独特だ。平松氏はデザイナー歴37年の経歴の持ち主。会社員、フリーランスを経てとある制作会社の立て直しを任されることになる。そこで後にもう一人の代表取締役社長となる坂田直哉氏を中心としたトップチームをつくり、売上向上・スキルの底上げに成功。そのトップチーム10名で立ち上げたのが同社だ。

そんな同社は、「デザイナーにとっての会社の在り方」に真正面から向き合っている。本来デザインは“属人性”が高いものであり、能力の高いクリエイターほど仕事が増える世界。しかし働き方改革が進む現代の会社づくりの常識では、できるだけ属人性を排除していく傾向がある。そんな状況に平松氏と坂田氏は歯がゆい想いを抱いたという。

「量によって担保されるチャンスや実績は必ずあります。効率化は良いことだけど圧倒的な量には敵わない。でも今は、昔のようながむしゃらな働き方はできません。その結果、世の中にWebデザイナーは増えましたが、能力の高いデザイナーは少なくなってしまったのです」（平松氏）。

「能力はあるけれど会社のルールによって抑えられてしまって尖りきれない人や、もっと自由だったらもっと力を発揮できるのに、会社組織の枠にはめられてしまうとパフォーマンスを発揮できないという人たちがいるはずです。そんな人が、会社に属しながら好きなように働けるようにしたいというのが設立の原点でした」（坂田氏）。

クリエイティブの世界では “属人性”は重要だ。その人にしかできないデザイン、その人からしか生まれない創造がある。時代に逆行しているようにも思えるが、同社はその“属人性”を大切にした会社づくりで、真に能力のあるデザイナーを輩出することを目指している。

AIRでは、現在Webサイトを中心とした受託案件をメインに多くの実績を積んでいる。50P以上ある大規模サイトやあらゆる業態のプロモーションサイトのほかCMS構築なども手掛け、「デザイン×開発×映像」の掛け合わせでAIRにしかできないものづくりを追求している。オンライン会議のバーチャル背景を提供する自社サービスもあるが、今後はさらに事業を拡大させていく活動にも力を入れていく構想だ。

と言っても、同社の「事業拡大」には一般的な企業と少し異なる目線も潜んでいる。平松氏の言葉をお借りすると「興味の赴くままに」。受託や自社サービスだけではなく、たとえば既存事業とは一見結びつかない飲食事業の立ち上げや国内外拠点の増加なども構想に入っている。面白いのは、それが「社員が好きなように生きていくためになるのではないか」という想いからの発想ということ。

さらに同社では、細かなルールや規律といったものをできるだけなくした自由度の高い環境づくりをしている。同社の考える“自由”は、決して社員に楽な仕事をしてもらうためのものではなく、「自分のやりたいように仕事ができるように、あらゆる選択肢を選べること」だ。

たとえば、もし自社で運営する飲食店があったら、社員割引で美味しいものを食べられる場所ができたり、飲食事業に興味がある人なら携わることができたり。別会社として設立したら副業という形も取れるかもしれない。もし国内外に拠点が増えたら、自分が働きたい場所を選べるようになるので、Uターンしたい人も退職しないでよいし、たとえば趣味を楽しむために一定期間だけ勤務地を変えるなんてこともできるかもしれない。

いわゆる会社員を“会社が決めた枠組みの中で働く人材”だと位置づけるなら、同社はその“枠組み”をあらゆる方向に広げていくことで、社員の自由を尊重するというスタンス。

自由に、自分らしく、クリエイターとして好きなように生きていくために――。
それを叶えていくための会社づくりに向けて、同社はこれからも前例のないことにチャレンジし続けていく。

AIRは、代表の平松氏と坂田氏を含めて現在28名体制（2024年7月時点）。ディレクター、デザイナー、コーダー、エンジニア、映像ディレクター、映像編集と様々な職種のメンバーが在籍し、ほぼ内製でプロジェクトを進めている。拠点は東京新宿区の東京オフィスと宮崎県宮崎市にある宮崎オフィス。ちなみに宮崎オフィスは、宮崎県出身の社員からの要望で新設された拠点だ。

同社では、個々のメンバーに大きな裁量が任されている。裁量が大きいということは同時に責任も伴う。好きな仕事をする＝やりたいことだけをやるというのではなく、案件に責任を持って進める中では初めてのことや苦手なことにも向き合わなければならない。そうしたハードルを越えることでデザイナーとして真の意味で成長でき、自分の好きなように働けるようになるという考え。同社には、そのチャレンジができる機会が豊富にある。

また、リモートワークを実施していないこともクリエイティブ業界においては特殊だろう。同社では自身でプロジェクトを進めていく能力が求められる。チームで動く上ではリモートだとどうしてもコミュニケーション不足になりがちだ。そのため決してお互いが補う仲良し的なチームワークではなく、個々が自律しているからこその「チームプレー」を重視している。

そんな同社が求めているのは、自分のデザインで勝負したいというクリエイター。
平松氏は、「デザイナーは職種ではなく、デザイナーという人種だと思っている」と語る。仕事としてデザイナーを選んでいる人ではなく、“デザイナーとして生きている人”が同社には集まっている。そのため、「万人に向いている会社ではないし、全ての人におすすめしたいかというとそうではない」とは坂田氏。たとえば現在組織の中で自身のスキルや実績を積むことを抑えられていると感じている人、スキルを持ちながらそれをアウトプットできる環境がない人などにとっては、高い意欲や向上心が満たされる会社だろう。

「クリエイターとして自分のやりたいようにできるまで能力を高めるには、会社員的な働き方や組織の枠組みを飛び越えなければいけないタイミングが必ず来ます。私たちはその邪魔をしたくないのです」（坂田氏）。

デザインがしたくてしょうがない、デザインができる環境に飢えている――。
そんな人が思う存分チャレンジし、クリエイターとして生きていく能力を伸ばせるのがAIRだ。