株式会社STANDAGE

株式会社STANDAGEは、デジタル貿易プラットフォーム『デジトラッド』の開発・提供を通じて貿易業界にイノベーションを起こすスタートアップである。

『デジトラッド』は、受発注・CRMシステムの『貿易クラウド』、貿易決済システムの『デジトラッド ペイメント』、国際物流概算見積もりシステムの『デジトラッド フォワーディング』で構成されている。

●『貿易クラウド』
貿易業務における受発注や進捗管理等の顧客情報を一元管理する機能や、請求書の自動生成、ニーズに合致する顧客やサプライヤーとのマッチング、財務諸表の管理・出力等の機能を備える。これにより、膨大な貿易関連書類の管理やパートナー企業との情報共有、貿易プロセスの見える化を通じて貿易実務の大幅な効率化を実現。

●『デジトラッド ペイメント』
ブロックチェーン技術を活用した貿易決済システム。輸入者と輸出者にデジタル金庫を提供し、ステーブルコインとeBL（電子化された船荷証券）で安全かつスピーディーな貿易決済を実現。これにより、送金手数料や着金までの時間、送金後に商品が届かないリスク、代金回収リスク等を劇的に削減する。

●『デジトラッド フォワーディング』
見積もり依頼・発注から担当者間とのやり取りまでの案件管理、概算見積もり・比較、レート管理等の諸機能により、即時見積もりからのスムーズな発注を実現。これにより、荷主にとってのフォワーダー各社への見積もり依頼と比較検討、フォワーダーにとっての各社からの見積もり依頼への対応業務を効率化できる。

『デジトラッド』は貿易業を手掛ける事業者向けのソリューションであるが、貿易を手掛けたことのない中小企業向けに貿易実務を包括的に支援する『まるなげ貿易』というサービスも提供している。これは、ツールとして『デジトラッド』を活用するとともに、輸出入を手掛けたことのない顧客に対して、海外の市場調査からパートナーや販路の開拓、展示会や商談会の参加、物流の手配等までの諸業務を代行するというもの。

「元総合商社で経験を積む等、貿易のプロフェッショナルであるメンバーが貿易未経験のお客様に寄り添い、『デジトラッド』を用いながらあらゆるニーズに応じて貿易づくりを支援するというサービスです。当社が貿易業者になってお客様の商品を輸出入することにも対応しています。こうした“フィジカル×デジタル”の貿易実務サービス提供者は、当社が唯一無二の存在であると自負しています」と代表取締役CEOの足立彰紀氏は胸を張る。

大分市で生まれ育った足立氏は、子供の頃から、不動産賃貸業を起業した祖母に商売の仕方を教え込まれながら育つ。
「祖母はいつも私に『わしはたった一人でここまで事業をつくった。おまえはわしを超えられるか？』と説教したのです。そのたびに『絶対に超えてやる』と思っていました。これが、私が経営者を目指した原体験です」と足立氏は述懐する。

大学は理系の学部に進学したが、地方出身者として海外に出て勝負したいとの思いを募らせる。そこで貿易業に着目し、大手総合商社に入社。医薬品の輸出入や海外の工場建設等のプロジェクトマネジメント、石油化学品の先物トレーディングに携わる。
「海外のパートナーとのビジネスが面白くてたまりませんでした」（足立氏）。

こうして20代は成長曲線を辿り、30代に差し掛かった頃、ブロックチェーンやAIといった技術が台頭してきた。「当時、自分がこうした技術から遠いところにいることに『これでいいのか？』と疑問を感じた」と足立氏は打ち明ける。

そして、2015年のネパール地震の時、現地の若者がSNSで暗号通貨での募金を呼びかけると、インフラが破壊された被災地にたちどころに送金されたことに足立氏は衝撃を受ける。
「ブロックチェーンに価値のあるデータを乗せて、誰でも銀行を介さず海外に送金できる。これで貿易が変わると確信しました」（足立氏）。

そして、2017年3月、勤務先の後輩（現・副社長）と共に同社を創業する。
早速、ステーブルコインでの決済システムを立ち上げて貿易業への提案活動を始めるも、相手にしてもらえなかった。
「当時は暗号通貨の価値が激しく変動していて、決済に使うことは難しいと受け取られたのです。ならば自ら貿易を行って、ステーブルコインなら問題なく使えることを証明しようと思い立ちました」（足立氏）。

インフラが整っていない新興国との取引を決め、当時、暗号通貨のトランザクションが世界第3位、人口が2億人でGDPがアフリカNo.1であったナイジェリアに着目する。
「アフリカに関わるセミナーで情報収集しましたが、そこに登壇した人材との出会いが決め手になりました。彼は現在、当社のナイジェリア現地法人の代表を務めてもらっています」（足立氏）。

足立氏の思惑通り、ナイジェリアとの貿易でステーブルコインを活用する実績を上げ、再度国内への営業活動に力を入れる。すると、新たな課題に直面した。
「中小企業は、海外との貿易をやりたくてもできる人材がいないという問題があったのです。ならば、そこから支援するしかない。これが『まるごと貿易』に繋がりました」（足立氏）。

それとともに、複雑で専門性の高い貿易実務における諸ツールが分断されていて、効率化が阻害されている現状をDXすべく、それらを統合した『デジトラッド』の開発に取り組む。こうして、国内初の貿易に特化した複合型のSaaSを実現させた。

同社の掲げるMission、Visionは次の通り。

●Mission
革新的なビジネスの創造を通じて世界の全ての地域を豊かにする

●Vision
すべての国が、すべてのものに、平等にアクセスできる世界の実現

この思いについて、足立氏はホームページで次のように語っている。
「（略）国の事情や企業規模によって、自由でスムーズな貿易にアクセスできない国や企業が存在しているという現実。私たちSTANDAGEは、世界中で今この瞬間にも生じている貿易の不平等や不利益を、イノベーティブな発想とテクノロジーの力で解決します」

2024年9月現在、同社の社員は約50名で、海外現地法人や業務委託パートナーを含めると約80名という組織。構成メンバーに対しては、次の7項目のValueを掲げて風土づくりの行動基準としている。

1　Be the First Penguins.　全員にベンチャースピリットを。
2　Expansion of Joy.　楽しさの伝播。
3　Never Give Up.　困難に立ち向かい、最後までやり抜く。
4　Stay Hungry.　ハングリーであれ。
5　Grow Together.　共に成長する。
6　Leave your Pride.　プライドを捨てろ。
7　Velocity is Vitality.　走りながら考える。

「この価値観でここまで成長してこられたという認識があります。このValueは、MissionやVisionとともに毎週の全社ミーティングで繰り返し私から話して浸透を図っています」（足立氏）。

7項目をひとまとめにすれば“挑戦と成長”というキーワードになり、これが同社経営の核心にあるという。
「このため、全メンバーにチャレンジの機会を提供し、成長に繋げてもらっています。一般的に、20代はがむしゃらに仕事をし、一定レベルに成長した30代になると力を抜いて仕事をこなすようになるもの。そこを、当社は再度ギアを上げ、挫折と再チャレンジをプレゼントしています」と足立氏は言う。

例えば、30代前半で入社したマネジメント経験のない人材に10名のメンバーを付け、業績を上げると次は地方拠点の開設を任せる、といった具合。
「もちろん、失敗する者もいます。そういうメンバーは降格していますが、打ち込まれたピッチャーのように一旦“降板”し、失敗要因を把握した上で再度登板してもらうという考え方です」（足立氏）。

こうしてチャレンジと成長を繰り返すことで、「制度が整った大手企業での生活を捨てて飛び込んできたメンバーが、目を輝かせて働いている」と足立氏は目を細める。
なお、人事考課は専用のクラウドを導入し、半期ごとのMBO制度を運営。それに応じて給与改定も半期ごとに行っている。

早くから新卒採用も行っている同社では、人材育成においては英語と簿記とPCタイピングを必須スキルとして教材を提供。希望者には英会話スクールへの通学も補助している。
社内コミュニケーションの推進策として、毎年参加自由の社員旅行を実施。2024年は3泊4日の沖縄旅行に約50名とほぼ全員が参加した。「参加率が非常に高く、全員が楽しみにしている」と足立氏。

また、毎週の全社ミーティングで周囲に貢献した社員に感謝する時間を設けていることも特徴的だ。

そんな同社が求める人材像は、「七つのValueに共感・実践できる人材」と足立氏は期待する。
日本企業の貿易を増やすことで、国力の向上にも貢献する。そんな画期的なサービスを手掛ける同社の業務は、やりがいに溢れていることだろう。