株式会社モイネットシステム

株式会社モイネットシステムは、調剤薬局向けレセプトコンピュータ（以下、調剤レセコン）『Pharmy（ファーミー）』シリーズの開発・販売を行うITベンチャーだ。2001年10月、神戸市で設立。約2年間の開発期間を経て2003年8月に販売を開始して以来、調剤レセコンに特化したビジネスを展開してきた。

調剤レセコンとは、調剤薬局から健康保険組合などの支払機関に対して保険請求を行うために診療報酬明細（レセプト）を作成するための専用コンピュータシステムである。大手コンピュータメーカーを含め多数のメーカーが参入する中、同社は主に個人、または小規模法人が経営する調剤薬局を対象として、コスト面、機能面ともに、導入・継続しやすい製品づくりを行っている点が大きな特徴である。

費用は全て全国一律で、低コスト、かつわかりやすい価格設定となっている。初期導入コストは、ソフトウェア代とハードウェアの組み合わせで変動するが、ソフトウェア代は業界標準の約2分の1で、なおかつ5年間のサポート料が含まれている。初期導入から5年間は、法令改正に伴う更新料以外の費用は発生しない。

また、在庫管理や処方箋のQRコード読み込み機能、患者管理、電子薬歴等、保険請求業務に必要な機能は全て標準で搭載。有償オプションはない。使い方さえマスターすれば、ノンカスタマイズで使い始められることも大きな特徴だ。

その手軽さから、業界の中では比較的後発であるものの、着実な成長を遂げてきた。発売から10年後の2013年11月には全国47都道府県での導入を達成し、2015年1月には導入件数1,000局に達した。その後、さらに成長速度を速め、2024年10月までの10年足らずで、導入件数2,500局を上回っている。

同社の強みを支えているのは、開発から営業、サポートに至るまでの社内一貫体制だ。全ての業務で外注を使わずに社内で完結。しかも拠点を神戸本社と東京営業所に集約することで販管費を抑えている。また代理店をはさまないためユーザーの声を直接聞いて製品に反映できる。ユーザーに寄り添った対応は顧客満足度にも繋がり、継続利用率は99.7%にのぼる。数ある同業者の中でも、直販体制を取るメーカーは数えるほどしかない。

2024年1月には、クラウドに対応した新バージョン『Pharmy Connect』を正式にリリース。拠点を置く兵庫県と東京都からスタートし、対応する都道府県を順次増やしている最中だ。

「私達自身は、当社が設定している料金体系はレセコンの適正価格であると考えています」

そう語るのは総務人事部・伊東拓哉氏だ。そもそも調剤レセコン業界はニッチな市場で、参入障壁が高い。大手IT企業が参入したものの、撤退した事例もある。ただ導入率が約96%というデータが示すように、調剤薬局にとっては必要不可欠なシステムのため、高額でも導入が進んできた。

同社は、調剤レセコン大手メーカー出身者がそのような市場に疑問を持ち、是正するために創業した会社だ。高齢化社会が進行するにつれ医療費が増大し、被保険者が負担する金額も増加。それに対して国は薬価を下げてきたが、それは調剤薬局の売り上げにマイナスの影響を及ぼす。そういった背景のもと、調剤薬局に高額なシステムを売ることに疑問を持ったことが、同社を設立するきっかけとなった。

会社設立以来、同社は、創業者を含めた10名未満の人員体制で事業を立ち上げ、ユーザーに寄り添った製品開発とサポートで着実に導入件数を増やしてきた。“薬局からITを通じて医療の新しい価値を創造し、人々の健康と幸せに貢献する”というステートメントや、“医療費削減と医療サービス向上”、“医療事故ゼロを実現”、“医療の発展に貢献”といったミッションは、会社設立時から掲げてきたものだ。

当初は問い合わせを基点に対応するインバウンド型の販売スタイルだったが、販売開始から10年で全都道府県へ導入したことを機に、積極的な営業スタイルへと転換。それが急成長の起爆剤となった。2016年には株式会社くすりの窓口のグループとなり、営業のノウハウを獲得。さらに大手営業会社出身の代表取締役・杉山健二氏が代表に就任してからは、営業、サポート、開発、それぞれの部署で増員を図り、さらに体制を強化。直近の3年間で従業員数は約3倍にまで増え、現在（2024年10月）は、神戸、東京、2拠点合わせて80名弱で業務を行っている。

同社が、2030年までの目標に掲げているのは、導入数1万6,000局の達成と業界シェアNo.1だ。その実現によって調剤レセコン業界の変革を牽引したい考えだ。

その目標を達成するためには旧バージョン『Pharmy』の保守に加え、新バージョン『Pharmy Connect』の全都道府県への対応を粛々と進めていく必要がある。調剤レセコンという専門性の高いシステムを扱うため、開発だけではなく営業やサポートの人員確保と教育も重要な課題だ。2025年度が始まるまでに、新卒採用、中途採用合わせて50名規模の採用を行う計画である。

同社は、代表の杉山氏が40代半ば、平均年齢は32歳と若い世代が集まる会社だ。開発、営業、サポート、コーポレート等、全ての部門が集約されている神戸本社は、全部門、同一フロアで業務を行うため、部門間の連携が取りやすい。また、杉山氏を含めた経営陣やコーポレート部門も、同一フロアで一般社員と席を並べているため、コミュニケーションも取りやすい。社員から職場の環境改善を提案し実現することも可能だ。マニュアルの電子化など、エンジニア発信で実現した企画もある。

「当社の魅力は、居心地の良さです。上司も同僚も温かみがあります。調剤レセプトという一般消費者には馴染みのない製品を扱っている難しさや、ベンチャー企業特有の忙しさはありますが、自分の力を発揮しながら、チーム全体で目標に向かって成長していることを実感できる環境です」（伊東氏）。

公平で透明性が高い評価制度も魅力の1つだ。特に営業は、売り上げの目標達成率に応じた給与テーブルや昇進基準を明確に示す。一方、開発やサポートはMBO（目標管理制度）を軸に、業務態度を考慮して評価を決めることを公開している。

「自社開発のためエンジニアの育成もしやすく、経験の浅い方でも入り込みやすい環境です。また、営業やサポートも中堅層が育って定着してきました。今後は若い人材の育成が課題です。ベンチャーマインドを持ち、能動的に考えて行動できる方をお待ちしています」（伊東氏）。

同社は年功序列制度を取っておらず、未経験からのスタートでも成果を上げれば、入社半年後に係長昇格もあり得る。

さらに、同社が取り組む事業は社会貢献性が高く、やりがいを持って働ける領域である。日本は超高齢化社会に入り、医療の重要性はより高まっている。同社が直接向き合うのは調剤薬局だが、薬局の業務効率が進み、薬剤師の対物業務が減れば、対人業務の時間が増える。それは薬局を利用する患者の幸福度を高める結果にも繋がる。

「調剤薬局を利用するのは親や子供、友人等、自分の身近な存在です。そこで稼働するシステムによって医療事故ゼロを実現することが私達の目標です。医療業界で働くことは人の人生に貢献することです。ご入社いただければ、その醍醐味を実感していただけるでしょう」（伊東氏）。

創業20年以上の事業実績と上場企業のグループ会社であることを背景に、福利厚生などの社内制度も充実している。その事業基盤を背景に、業界の変革とシェアNo.1の座に挑む同社。新たなステップを踏むための舞台としては申し分のない環境だ。