大学卒業後、大手総合商社に進路を決めた理由は?
私は就職留年しました。在学中の就活では、なんとなく進めてメガバンクから内定をもらいましたが、辞退して就職活動をやり直しました。学生時代から、将来、起業したいという思いがあって、銀行で働くと「辞める」と言いながら、定年まで勤めてしまう自分の姿が想像できました。それまでストレートで来ていたので、少し回り道も悪くないかと考え、就職留年を決断しました。 二度目の就職活動では、起業を念頭に事業創造できるフィールドを軸に探しました。総合商社なら、人とお金を集めて事業を作る体験ができると考え、日本の大手総合商社に入社しました。その企業を選んだのは、当時、社内ベンチャーに力を入れていたからです。私が入社する直前に、その企業の社内ベンチャーが3社上場しており、そこでなら事業創造にチャレンジできると考えました。 大手総合商社入社2年目に、個人ブログで就職活動生向けのブログを始めました。順調にPVも伸びて、アフィリエイト収入が月に10万円を超えた時点で、そこを辞めて、起業に踏み切りました。そのタイミングで、ブログからWebメディアへモデルを変更しました。
2011年に立ち上げたWebメディアを展開するITベンチャーは、どんなビジネスをしていましたか?
私たちが立ち上げたのは、就職活動のノウハウと内定者の「エントリーシート」が見られるメディアです。当時は就職活動に関する情報があまり流通しておらず、大手就職サイトや企業側の情報発信がメインで、ユーザーである就職活動生が求める情報がWeb上にあまりない状況でした。また一部の大学生は成功した大学の先輩のエントリーシートを譲り受けて就職活動が楽だったという話を聞いて疑問に感じており、ユーザー目線にたったノウハウと欲しいコンテンツがあれば伸びるだろうと感じていました。実際に個人ブログで一定のPVと収益を得られたため起業に踏み切りました。 勢いで起業したものの、最初は売上が伸びずに苦労しました。共同創業者と生活を共にしながらビジネスを伸ばすために、あれこれと施策を考えましたが、どれもうまくいきませんでした。Webメディアの制作を外注したこともあって、費用ばかりが嵩みました。そこで一念発起し、プログラミングの勉強を始めました。時間だけはたっぷりあったので、短期集中型でプログラミングを覚え、自社メディアの内製化を実現しました。そこからスピード感を持ってサイト運営ができるようになり、売上が伸び始めました。
Webメディアを売却した背景は?
業績は比較的順調に伸び、このままやっていけばある程度は伸びるだろうとは思っていました。一方でユーザーニーズがあり自分が提供できる領域として事業を始めただけで、達成したいビジョンややり続ける覚悟といったものはそこまでなく、M&Aを経験してみたいという気持ちもあり、人材系ベンチャー企業に会社を売却しました。 その後、退職した後にたまたま売却した事業の初期のユーザーで事業を手伝ってくれていた元就職活動生で、次にジョインする子供服D2Cブランドを立ち上げた代表と再開しました。話を聞くと今度起業するので相談に乗ってほしいということで、最初はエンジェル投資家としてジョインさせてもらいました。 その後、投資家として話を聞く中で一緒にやったら伸びそうというタイミングで取締役として入社させてもらいました。商品企画やブランディングに抜群のセンスを持っている反面、オペレーション構築や会計といった部分はあまり得意ではないタイプの経営者だったので、私が経営の実務面を担当することで、彼にクリエイティブな業務に集中してもらい、事業を一気に伸ばすことができました。 上場準備に入りましたが、もろもろの意向でこの会社も売却することとなり、大手アパレルの上場企業グループに売却することができました。次は、長く情熱を持って打ち込める仕事がしたいと考え、子供服D2Cブランドの運営で得たノウハウを生かすべく、株式会社Bizgemを立ち上げました。
仕事を進める上で、大切にしていることは?
「世の中を前に進める感覚」を大事にしています。こんなサービスがあったら、こんなものがあったらもっと世の中がよくなるという意識で事業やサービスを作っていて、それをお客様に届けたときのよい反応のために仕事をしています。 そのため、中で働く方も様々なモチベーションの方がいますが、実際にユーザーの役に立っていることを実感することが楽しいという方に向いていると考えています。逆に自分が目立ちたい、役に立つかはわからないけど何か凄そうなものづくりに関わりたいというには向いていないと思います。個人的に1社目の就職活動生向けのWebメディアを立ち上げた時に、これまでなかったものを生み出せた充実感みたいなものを感じました。今後もそういったサービスを一つでも多く世の中に提供していけたらと思っています。
樋口様の趣味は何ですか?
趣味は「ランニング」です。毎月100kmを目標に、平日に時間を作ってトレーニングし、フルマラソンの大会にも出ます。先日の大会では、4時間00分で完走できました。ランニングを始めたのは、経営者の本で朝は4:00に起きて散歩しているのを見て、散歩は続かなさそうだけどランニングなら続けられるかもと思って始めました。始めてみると、仕事のことを集中して考えることのできる良い時間になりました。仕事中は、他の人とのコミュニケーションがあり、家に帰れば家族と過ごすため、一人で自分と向き合って思索をする時間がなかったからです。走っているときは、雑念を取り払って自分のことに集中できます。今もランニングの時間は大切にしています。 Bizgemは、大人ベンチャーといった雰囲気の会社です。メンバーがそれぞれのライフスタイルを大事にしながら、仕事に全力で打ち込める環境がある職場を目指しています。みんな定時になったら、仕事を切り上げて帰ります。私も子育て中なので、あまり社内に残って残業することができないため、短い時間で集中して効率的に業務を行うことは大事にしています。