株式会社シー・エイ・ティー

株式会社シー・エイ・ティーは、建設業界に特化したBPOサービスを手掛けている企業である。

建設会社は、請け負った工事に関する設計や施工というコア業務のほかに、施主や役所への提出書類や図面の作成、工事写真の管理といったノンコア業務がある。特に国や自治体が発注主となる公共工事は、大量の書類や資料を作成しなければならない。
例えば、施工延長が1Kmほどのトンネル工事の場合、八人ほどの会議室のテーブルを埋めて積み上がるぐらいの書類ファイルを作成する必要がある。

建設業界は慢性的な人手不足で、デジタル化も遅れている状態にある。多くの建設会社は、現場監督や作業員は日中、施工に従事し、その後に一連のノンコア業務を行うといった実態がある。一方で、こうした長時間労働を効率化する働き方改革への要請は強まるばかりだ。
そこで、同社のようなノンコア業務でありながら専門性や技術・知識も問われるBPOサービスの存在価値がある。同社の技術部は、顧客である建設会社の現場や本社に常駐したり、同社オフィスからのリモートの形で一連の業務を請け負ったりしている。

そうした業務の中に、法律で定められた労務安全書類の作成・提出がある。現場ごとに、施工に関わる協力会社の作業員の氏名や血液型、健康状態、外国人の場合は在留資格等、数多くの記入項目があり、記入した書類は専用のサイトにアップし、元請会社が受領しなければならない仕組みだ。こうしたサイトの利用方法の問い合わせ対応や書類の提出確認を効率良く行うためのサポート業務を、同社の総合システム事業部が担っている。

同社の特徴は、取引先が約5社と限られているところ。特に、売上の大半を創業以来30年にわたって取引を続けている準大手ゼネコンが占めている。その会社は海洋土木工事に強く、海外プロジェクトの実績も多数ある。
「船舶を用いる工事等、特殊性・専門性があり、長年にわたる経験の蓄積で業務内容を熟知し信頼関係を深めています。この確固たるポジションが当社の大きな強みとなっています」と話す。

同社の設立は1995年7月。2025年に30周年を迎える。

創業者で代表取締役の山下仁次郎氏は、以前、書類のコピーや製本を主体とする会社に在籍していた。当時から、現在のメインクライアントを担当していたが、「これからはCADの時代となる」とチャンスを見出し、独立して同社を設立する。その際に、メインクライアントから引き続き取引を要請された。
当初は山下氏のほかCADオペレーター等と数名でスタートしたが、CADでの設計図面作成を外注するという認識がない時代。思うように仕事を取ることはできなかった。
「そこに苦労しながらも、一方で主力のお客様から『この書類作成はできないか？』『写真管理も請け負ってほしい』といった要請を受けたのです。CADに固執することなく、こうしたニーズには積極的にチャレンジを重ね、徐々に業務範囲を広げていきました」（藤山氏）。

建設業界のノンコア業務というニッチな領域につき、人材の増強に当たっては基本的に未経験者しか採用できない状況にあった。そこで、書類作成や管理、問い合わせ対応といった業務を地道にこなせる適任者の採用を続け、現在は結果的に女性が70%以上を占める55名の組織となっている。

「今後も既存のお客様と密に取引を続けていきますが、新規顧客開拓に決して消極的なわけではありません。未取引の建設会社からの引き合いが多数寄せられていますが、対応できる人材を確保できれば広げていきたいと考えています。そういう意味では、建設業界の働き方改革がこれから本格化する中にあって、成長性の高い領域に位置していると言えるでしょう。これは当社の大きな魅力ではないかと自負しています」と強調する。

2024年10月1日現在、同社の社員数は55名。前述のとおり女性が70%以上を占め、平均年齢は約30歳という組織だ。

働き方としては、技術部の場合は取引先のオフィスや建設現場事務所に通える場合は常駐し、遠方で通えない場合はリモートという形を取る。総合システム事業部の場合は、基本的に同社の本社オフィス（千代田区神田須田町）で業務を行う。
「PCを操作する業務が主体なので、黙々と作業をしがちになります。そこで、『視野を広げ、周りの人はどんな仕事をしているのかを見るようにしよう』と話しています。当社は様々な業務を受託していますが、会社の業務の全容を知ることで新たな業務が来た時に向かいやすくなるからです」

そのためもあって、週1回は定例会を開いてメンバーの業務状況を共有する機会を設けている部署も多い。一方でフラットな風土があり、勤務中は黙々と業務をしていても、ランチタイムや休憩時間にはコミュニケーションを取り合うメンバーばかりだ。

人材育成においては、新人は基本的に未経験者につき、数カ月の導入研修を行い、その後は専属の教育係が1～2名付くメンター制度を運営している。
同社の職制は、定型的な事務作業が主体のA職と、それに加えて非定型業務や営業的な顧客対応も担うB職に分かれる。
人事考課は、職制別に評価項目や基準が決められており、年2回の上長による評価面談でランク付けを行い、年1回の昇給が決まるという仕組み。
「評価項目が明示されているので、個人がステップアップに向けて努力しやすい環境があると思います」と遠藤氏は話す。

そんな同社の総合システム事業部が求める人材像について、“黒一点”の遠藤氏は次のように期待を寄せる。
「相手の立場を思いやり、優しく、明るく対応できる方だと嬉しいですね。私以外の9名は全員女性で、女性が働きやすい環境があると思いますが、もちろん男性も大歓迎です！」

ニッチな領域において特定顧客に密着した強みをコアにしつつ、人材を得て業容を広げていく同社。その成長性は大きな魅力と言えるだろう。