株式会社アイエスサービス

株式会社アイエスサービスは、地方銀行の開発部に在籍していたエンジニアが集まって設立したシステム開発会社である。

同社の主要業務は、金融機関（銀行、生命保険会社、クレジット会社、証券会社）や医療機関、自治体の業務用システムの開発である。中でも、地方銀行の次期システムの構築案件を中心とする金融機関向けのシステム開発が得意分野であり、勘定系の基幹システムの構築で実績を積んできた。

銀行のシステム開発プロジェクトは規模が大きくなるため、1社の開発会社が一括して請け負うケースは少なく、エンドユーザー側で構築するプロジェクト体制の中に、各社が役割分担しながら作業を進めるケースがほとんどだ。

その中で、設立メンバーをはじめ銀行の業務知識を持ったSEが多数在籍し、上流工程から構築後の保守までを担うことが多いのが同社の特徴である。
また、銀行の勘定系システムは、大型汎用機で構成されることが多いため、同社にはPL/1やCOBOLといったプログラミング言語に精通した技術者が多い。これらの技術者が、同社の事業発展を牽引してきたのである。

同社は2002年の設立以来、これらを強みとして実績を積み重ね、大手ベンダーからのゆるぎない信頼を獲得し、大阪でも数少ない金融系基幹システムのスペシャリスト集団としてのポジションを確立。18名の技術者でスタートした同社には、設立から16年後の現在、35名の社員（うち技術者30名）が在籍している。協力会社から参画する支援技術者を含めると、約50名の技術者が常時、同社の指揮系統下で業務に従事するシステム開発会社へと成長を遂げた。

現在の大きな流れとしては、大型汎用機は構築や維持メンテナンスにコストがかかるという理由で、多くの業界では業務システムをWebシステムへ移行する傾向が目立つ。それに伴い、開発言語の環境も、COBOL や PL/1からJAVA、.NETへと移行しつつある。銀行の業務ノウハウを身につけたいと同社へ入社を希望する人にも、大型汎用機の技術を習得した技術者ばかりではなく、WEB系の技術を身につけた若手技術者が少なくない。

また、金融機関においても、基幹系以外の周辺業務を中心に、Webシステムへ移行しているケースがある。そのため、同社は、ユーザーの要望に合わせて柔軟に対応できる体制を整えるために、銀行とは無関係な業界出身のWEB系の技術者も積極的に採用してきた。さらに、それらの人材を活かすため、他の業界へも臨機応変にフィールドを広げてきた。

しかし、ここ数年間は、経済状況などを見据え、より競争力を高めて強固な事業基盤を構築するために、自社の強みをさらに強化する方向性を打ち出している。営業担当・湯元氏は、直近の方向性を次のように語る。

「金融機関の経営統合やシステムの共同化などで、市場は変化してきましたが、組織が統合すれば大掛かりなシステム統合も必要となり需要が発生します。また、銀行のシステムではミッションクリティカルな環境を維持し続けるかということが非常に重要なため、大型汎用機は必要不可欠だと考えられています。金融機関の業務システムの分野では、今後も当社の技術力が必要とされる機会は十分にあります。一方、エンドユーザーとしてはシステムの構築やメンテナンスを安価に賄えるオープンシステムに対して、魅力を感じるのも事実。UnixやWindowsのサーバーでの構築にも順次対応していきます。」

当面は核となる事業分野に資源を集中して投下し、確固たる事業基盤を築いた後に、さらにいくつかの柱となる分野を打ち立てて行く構想である。

同社の今後のテーマは“次世代の育成”だ。

「元銀行員の業務ノウハウを全て習得せよといっても無理な話ですが、その中でも、“得意なものはこれ”といえるものを1つでも持ったエンジニアを育成していきたい。」

業務に精通したエンジニアが核となる同社には、上流工程の仕事が多いが、その後の工程ではプログラマーの頭数が必要だ。今後は下流工程の部分も担っていけるよう、スキルに固執せずにエンジニアを拡充し、裾野を広げていく計画である。そして、ベテランのSEとチームを組んで現場へ送り、業務スキルを習得させたい。

「オフショア開発の浸透などの影響で、これからのシステムエンジニアには、業務知識がますます求められると考えています。30歳くらいまでに、色々な業界を経験して自分の適性や方向性を見極め、30代後半までに“この業務は任せてください”と言える分野を作れば、その後はプロジェクトマネージャーとして活躍できます。
その業務知識を身につけるために、当社では、お客様と一緒に頭を悩ませながら知恵を働かせて、ノウハウを身体にしみこませていく教育スタイルをとっています。当社に所属するSEは、そのような若いエンジニアを適切に導いていけるノウハウを持っています。」

金融機関関連の業務はセキュリティが厳しく、システム開発プロジェクトの一部を切り出して社内に持ち帰るといった受託案件は少ない。そのため同社の社員の業務形態は、顧客のもとへの出向するケースがほぼ100％。そこで求められるのは、現場に相応しいスタイルに合わせて、コツコツと業務をこなせる人材である。

同社のSEが築いてきた実績と信頼が同社の最大の武器。業務SEとしてさらに成長できる環境が整った会社だ。