株式会社ミスミグループ本社

世界の製造業の企業に対し、精密機器部品を中心とした生産工程に必要な商品を提供している株式会社ミスミ。取り扱っている商品は3,000万点を超え、さらにサイズをミクロン単位で指定することが可能なため、バリエーションは800垓（1兆の800億倍）にものぼる。MTO（make to order=受注製作品）でも標準2日目で出荷されるため、“ミスミに発注すれば、納期が読める”という「確実短納期」、つまり「時間価値」をお客さまに提供することができるのだ。このように同社は、「時間戦略」というキーワードを掲げ、IA（インダストリアル・オートメーション）産業界の非効率解消、持続的発展に貢献している。

1963年の創業以来、時代や顧客のニーズに応えながら進化を続け、顧客数は国内外含めて33.4万社にものぼる（2022年3月期）。メーカー事業と流通事業を併せ持つユニークな業態、そしてグローバルな拠点網を活かし、コロナ禍にも関わらず、2021年度連結売上高は過去最高の3,661億6千万円（前年同月比17.8％増）を記録。利益面についても過去最高を更新し、事業の安定性を確固たるものにした。

そんな同社の事業を支えている一つが、強固なIT基盤だ。もともと紙カタログを通じて顧客から受注を受けていたが、需要の変化に伴い、現在のECサイトの形式に進化した。

「ECサイトが誕生したのは2005年です。当時は紙カタログの内容をHTML化して表示するだけのものでしたが、2017年以降、IT基盤を強化するため年間100億円を投資し、デジタル化を推進しました。先ずは地域別の顧客ニーズに合わせたECサイトのグローバル展開を行い、その後、社内の環境整備として、オンプレからクラウドへ移管しています。2020年にはデジタルトランスフォーメーションシステムプラットフォームが設立され、デジタル革新に向けたIT組織体制をさらに強化しています」。このように語るのは、デジタルトランスフォーメーションシステムプラットフォーム DX推進統括の西田哲郎氏だ。

今後のビジネスモデル革新に必要不可欠な取り組みとして、2020年度から基幹システムの全面刷新が本格的にスタート。グローバル展開に向けて、積極的な投資が行われている。

アジア・ヨーロッパ・北アメリカといった産業の主要国に営業拠点・配送センター・生産拠点の3点セットを設置し、グローバルで事業を展開している同社。取り引きしている33.4万社のうち6割強が海外の顧客を占めているが、海外はまだまだビジネスチャンスを秘めているという。しかし、地政学的リスクも踏まえると、輸出だけではなく、地産地消も視野に入れた事業展開も想定している。グローバルの地域拠点が自力で稼げるように、国内のIA産業へもしっかり寄与していく考えだ。

今後の展開についても基本姿勢は変わらない。同社のお客さまやサプライヤー（仕入先）に対して、“時間”を切り口に貢献していく所存だ。自動化を進めることで、見積もりや納品を待つムダな時間を削減でき、その分本来人間が対応すべきコトやモノに時間が割ける。IA産業の持続的成長が結果的に社会の発展に繋がり、好循環が生まれる構図だ。
こういった姿勢は同社のサステナビリティ基本方針からも読み取れる。

また、“時間戦略”を掲げる同社の特徴の一つが、EC基盤の更なる進化だ。第1メディアを紙カタログ、第2メディアをECサイト、そして第3メディアとしてデジタルものづくりへの対応強化を位置付けていることから、デジタル部品調達サービス『meviy（メビー）』や3D-CADデータライブラリー『RAPiD Design（ラピッドデザイン）』を提供している。「meviyは自分で作った部品の設計データ（3D-CADデータ）をアップロードするだけで、AIが即時に価格と納期を回答し、製造プログラムの自動生成により短納期で出荷してくれるサービスです。また、RAPiD Designは、普段お客さまが使っているSOLIDWORKSやiCADをそのまま使いながら、設計から見積もりまで完結するため、設計時間と調達コストを削減できます。これまで作業負荷がかかっていた工程を効率化し、お客さまに“時間価値”を提供しているのです」。（西田氏）

「お客さまに“時間価値”を提供することが最大の使命」というミッションを掲げる同社では、“時間”と“あらゆるムダの排除”いう観点から常に検討を重ね、新しいサービスを生み出し、進化させ続けている。

「私はミスミに20年ほど在籍していますが、“自分で仕事を進めていきたい方”には、これ以上ない会社だと思いますね」。そう語るのは、西田氏だ。「挑戦を尊ぶ文化なので、一人ひとりのチャレンジを尊重しています。企画を提案すると、“じゃあやってみようか”という答えを返す企業文化が根付いています。1万2,000人の社員を抱える企業にまで成長しましたが、後ろ向きな人は殆どいません。役職者問わず、とにかく前向きに捉える社員が多いですね。また、開発言語や開発環境に関する提案も大歓迎。意見が通りやすいので、エンジニア冥利に尽きると言えるのではないでしょうか」。（西田氏）

現在、IT業務に従事する本社勤務の社員は350名ほど在籍している。平均年齢は38.6歳で、中途入社が8割、新卒入社が2割という構成だ。同社では特に“人材育成”に注力しており、外部研修の導入や社内勉強会も積極的に行われている。特に注目すべきなのが、経営トップ自ら、経営リーダーに必要な視座と戦略思考能力を鍛える研修を実施していることだ。人材育成について、西田氏は次のように語る。「会社が成長すると、そのおかげで社員も成長すると考える経営者の方が多いと思います。しかし、当社は逆です。社員が成長できたからこそ、会社が成長すると考えています。とにかく人の成長ありきです。だからこそ、経営のトップが社員教育の携わっているのです」。

また、キャリアについても自ら選択できるように、「手挙げ昇進昇格」制度を導入。これは、より大きな裁量を持ったポジションを担いたいと自ら手を挙げた人が面接を経て、昇進昇格できる制度だ。部下を持ち“組織マネジメント”を担う職位と、部下を持たない“エキスパート人材”の職位の2つがあるので、自身のキャリア志向に合った選択が可能となる。

同社で活躍できる人材について、西田氏に伺ったところ「向上心・好奇心があり、前向きに仕事を捉えられる人には、絶対ハマります」との答えが返ってきた。「いろいろなツールを使いたい方、上流に行きたい方、今よりもっと挑戦したい方など、当社には描けるキャリアが豊富にあるので、ITエンジニアとして成長したい方にはピッタリです。また、自分が携わったサービスを使って、喜んでくれるお客さまの顔を見たい方にも向いています」。（西田氏）

同社の事業をより加速させるために欠かせないエンジニア人材。グローバルに展開する大手企業だからこその安定感、そして挑戦を全力で推奨するベンチャー気質も兼ね揃えた同社であれば、理想のエンジニア像を目指せるはずだ。