目指すのは、患者自身が積極的に健康管理を行うインフラをつくること。それには、医者が患者に対し一方的に治療を押し付ける仕組みから、患者が治療に参加する仕組みへの転換が必要になる。メディカクラウド株式会社は、これを後押しするITコンテンツ制作・システム開発を行う会社だ。創業者の宮川一郎氏は、現役の開業医。勤務医だった頃から電子カルテの導入を推進するなど「メディカル×IT」に意識的だった人物だ。
「医療の現場にはまだまだITが普及していない。それは医療関係者や患者さんのITリテラシー低さが1つの要因ですが、一方では、アプリにしてもサービスにしても医者にとって使いにくいものがほとんどであるという現実があります」。
創業後、最初にリリースしたサービスは、iPadで問診票を作成できるWeb型アプリ「iPad問診票」。各電子カルテメーカーの電子カルテと連動することで、現場の医者が電子カルテに入力し直す手間をゼロにする。また親しみやすいデザインにより、高齢者にも入力しやすいインターフェイスに仕上げた。また「IC動画HD」は患者説明用のiPadアプリケーション。高品質なオリジナル医療用CG動画を無料で提供する。疾患・投薬・手術・処置・リハビリテーション等、言葉で説明するだけではわかりにくい内容を表現した。宮川氏によれば「このアプリは当社のコンセプトそのものを伝えている」だという。
「患者が治療に参加できないのは医者の説明に専門用語が多く理解できないため。無料でアプリをリリースしたのは、まさにこの問題を解決するために会社を作ったからです。会社は目的を解決するために存在する。解決し続けるにはお金が必要ですが、それは別の事業で得たらいい。目的と手段を逆転させてはいけないと思っています」