株式会社サイズ

XMLベースのCMS（コンテンツ・マネージメント・システム）として高い評価を集める『Web Meister』。導入先には、資生堂やリコー、岩崎電気、芝浦電子といった上場企業や神戸大学、東京農工大学、法政大学、国立音楽大学などの教育機関がズラリと並んでいる。この『Web Meister』の開発から導入までを行うCMS事業を主軸とし、CMSの絡まないWeb制作やWebコンサルティングも手掛けているのが、株式会社サイズだ。

そもそも『Web Meister』が誕生したのは、2004年のことだった。W3Cのホスト機関である慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスWebサイトへの導入のために、同社の創設メンバーらがIMJ在籍時に開発した。その後、汎用性を持たせた『Web Meister２』がリリースされ、サイズ起業後も、マルチデバイス対応や多言語対応など、コツコツとバージョンアップが重ねられてきた。2015年４月には、HTML５に対応した『Web Meister 5』をいち早くリリース。時代のニーズに迅速に応える確かな技術力と「マニュアルを必要としない操作性」など、ユーザーの使いやすさにこだわった開発方針によって、着実に顧客の信頼を獲得し、実績を積み上げてきたのだ。

「CMSが日本市場に出回り始めた頃、企業側には、『システムが複雑で難しいほど高級品だ』という勘違いがありました。そのため、CMSを導入してもサイトの管理画面が複雑だったり、更新作業に専門知識が求められたりといったおかしな状況がそこかしこで見られたのです。本来、CMSは煩雑なサイトの更新作業をWebの知識がほとんどない人でもできるようにするツールなのに、です。だから、私たちは、使いやすさには徹底してこだわってきました」（代表取締役・糟谷博陸氏）

その結果、CMSの導入経験がある企業が切り替えを検討したとき、『Web Meister』に行き着くケースが多いのだと続ける。
「静的なHTMLを出すCMSでエンタープライズ向け、デザインと運用しやすさの融合性など、フロントとCMSをバランス良く適切な形で統合しているところに期待する企業から声をかけていただくことが多いですね。なかには、『いろいろ調べた結果、Web Meisterしかなかった』という嬉しい言葉をいただくこともあります」

現在、サイズの社員は12名だが、100名規模のWeb制作会社と同程度のプロジェクト数を回している。これを可能にしているのも、CMSだと糟谷氏は語る。
「CMSを導入することで工数を減らせ、人的リソースも最小限で済むことで、生産性を飛躍的に高めることができます。また、これまでに蓄積してきたテンプレートを活用することで、新規案件の導入にかかる工数も抑えることができています」

その一方で、『Web Meister』のバージョンアップや改修も進めており、間もなくJavaScript版もリリースされる。さらには、「詳しくは話せない」と前置きしつつ、「今までになかった、パッケージ単体で機能するCMS」も来年には完成するそうだ。これが完成すれば、距離の壁により断念していた、「日系企業にとどまらないグローバル展開」も視野に入ってくるという。

また、会社としても財務面や実績面において、「上場できる状態にまで持っていきたい」とも。しかし、そのためには新たな戦力が欠かせないと糟谷氏は力説する。
「今、思い描いている未来を現実のものにするには、人材が不足しています。現状でさえ、依頼に応じきれずにお断りしている状況なのです。特に、ディレクターやプロデューサー業は、私と取締役の山本（聰）の２人だけでこなしている状態です。CMSというのは箱であり、情報設計やクリエイティブ・ディレクションなどがあった上で、CMSテンプレートの実装が必要です。つまり、お客様の要望を整理して箱の中身を考えられる人材が圧倒的に足りないのです」

過去、経験の浅い人を採用して育てようとしたこともあった。しかし、「サイズが必要としているレベルに達することができなかった」のだという。
「ディレクターは、論理的思考とクリエイティビティを適切に使い分けられなければなりません。右脳と左脳のバランスというのでしょうか。また、システムによって何を実現したいのかを明確にし、機能に強弱をつけ、捨てるべきものは捨てる勇気も必要になります。お客様があれもこれもと要求してきたとしても、お客様が本質的に必要としている機能、性能と使いやすさを両立できる完成形を冷静に見極め、不要なものについてはお客様を説得して切り捨てるくらいの気持ちがないと務まりません。ただ、こういったディレクターとしての基本を理解して実践できるだけの素養ある人であれば、活躍できるチャンスは数多くある会社だと自負しています」

起業した当初は、実績がないゆえに上場企業と取り引きすることは難しかった。そこで、戦略的に攻めていったのが、オープンコンペで参入できる教育機関だったという。同社は、この領域で着実に実績を積み上げていったわけだが、それは裏を返せば、土俵に上がることさえできれば、コンペを勝ち抜くだけの技術力を備えていることを意味してもいる。同社の技術力が業界内で高く評価されているのは、これまでの実績のみならず、代表を務める糟谷や取締役の山本が、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの外部講師を務めた経歴を持っていたり、講演依頼や執筆依頼が数多く寄せられていたりすることからも、うかがい知ることができる。

ただし、IT企業に抱きがちな華やかなイメージは、同社にはない。むしろ正反対といっていいほどの落ち着いた雰囲気が社内には漂っている。
「プロ意識のある人たちの集団といった感じで、皆、地道にコツコツと業務と向き合っています。ここでいうプロ意識とは、決められたことを決められた期日までにきっちりとやりきる責任感のこと。その繰り返しが、お客様の信頼に結びついていくのですから、ここを疎かにするような人は、ウチでは務まりません」

このようなプロ集団の一員として馴染むには、物事を途中で投げ出さず、粘り強く最後まで向き合えるかどうかがとても重要だと糟谷氏は続ける。
「仕事を完遂してお客様との関係性を構築できるかだけでなく、自身の実力を伸ばしていくためにも、粘り強さや仕事に対する責任感は大切だと思います。その基本姿勢があれば、技術的なスキルは、入社後、これまでに蓄積してきたテンプレートやドキュメントを見たり、さまざまな案件に携わっていくことで伸ばすことができます。ただし、粘り強く頑張ることと、ダラダラ徹夜することは違うので、その点は勘違いしてほしくありません。当社では、長い目で見たとき非効率でしかない徹夜は推奨していません（笑）」

自身の仕事に誇りを持って働きたい、自社プロダクトの強みを活かしてCMS領域で日本のトップを目指していきたい――そんな熱い思いを持っている人には最適な環境が整っている会社だといえるだろう。