株式会社アイティテラ

システム開発会社の株式会社アイティテラ。世界中の優れたオープンソースソフトウェア（OSS）を活用し、高度なシステムを好条件で開発・提供できる体制を整備。このため、エンドユーザー直取引が90％程度を占め、受託開発のほかSESにおいてもユーザーの情報システム部門及び100%子会社へのサポートが多くを占めているというレベルの高さを誇っている。主要顧客は25社程度であるが、社員数2000名近くの複数の大手企業から小規模のベンチャー企業まで幅広く直取引している。

システム開発におけるビジネスとしての難易度は、一般的にSIerへのSES（下請け）、エンドユーザーへのSES（直請け）、エンドユーザーからの受託（直請け）というスタイルの順に高度化するといえる。同社において中心を占めているのは、エンドユーザーとの直取引。この業務に安定的に対応していくため、フィリピンの首都・マニラに100％子会社のIT-TERA PHLIS.INCを設立し、15名の優秀なエンジニアを現地採用してオフショア開発を行っている。現地には英語が堪能の日本人ブリッジSEが赴任しており、本社のエンジニアとの日本語でのやり取りも可能にしている。

同社の大きな強みは、OSSの活用によるCRMやERP、ワークフローなどのアプリケーション開発にある。OSSベースのため、一から開発するよりもイニシャルコストがかからず、またカスタマイズするにもパッケージを購入するより安上がりとなる。また、同社にとっては、自社製品を持つ大手企業はOSSが取り扱いづらいというメリットもある。
「このため、大手SIerとコンペになっても勝てています。お客様は、企業の情報システム部、もしくは情報システム子会社の方が大半。このため、営業面ではOSS情報提供サイトをつくってコンテンツSEOを行うことにより、OSSを活用して自社システム開発を考えるユーザーに着目され、すべて問い合わせへの対応で開発案件を獲得できています」と取締役営業管理部長の武山 克徳 氏は胸を張る。

同社は2002年、社員数200名ほどの中堅SIerの社長を務めていた秋山 忠 氏（アイティテラ代表取締役社長）と、その部下であった武山氏がスピンアウトして設立。
「秋山はプロジェクトマネジメントのプロで、私は営業担当でした。エンジニアがいなかったので、最初はプロマネと営業を派遣するサービスからスタートしました」と武山氏は述懐する。その後徐々に旧知のエンジニアをメンバーに加え、開発プロジェクトの営業から納品まで完結できるチームをつくり、徐々に独立を果たしていった。

設立4年後には早くもIT-TERA PHLIS.INCを設立。
「フィリピンの仕事を確保しなければならなくなったことが、いい意味でプレッシャーとなり、受託開発案件の獲得に力が入った」と武山氏。
ちなみにフィリピンでは、100％オフショアの場合、免税される特別区内に設立することができる。このため、IT-TERA PHLIS.INCは、人件費に加えて税金面でもコストメリットを享受できている。

そんな同社は、2007年頃からいち早くOSSの活用を始める。当時、オープンソースにおいてはOSやDBはすでに広まっていたが、アプリケーションを活用している競合はまだなかった。
「当社の独自性を打ち出すにはどうすればいいかを考え、OSSに着目したのです。OSSならば常に改善が加えられ質が高まる上、無料なので強力なコストメリットがあります。そこで、OSSをカスタマイズしソリューションとして顧客に提供しようと決めました」（武山氏）

しかし、OSSに設計書などがついているわけではない。そこで、同社は獲得した案件に対応させながら自力でソースコードを解析し、エンハンスのナレッジを蓄積。機能ごとのモジュールもつくっていった。
「各アプリケーションにつき、最初の数プロジェクトは赤字です。しかし、エンドユーザーへのSESで利益を出せていたので、先行投資的に回すことができました。この時のナレッジの蓄積がモノをいいましたね」と武山氏。また、英文しかないOSSの情報を理解するのに、フィリピン子会社のバイリンガルの存在が大いに役に立った。その後、上場企業含め開発事例が増えていき、信頼感を構築。まさに“先行者利益”を享受できた形である。

今後は、いよいよCRMやワークフローなどの独自製品を自社開発し、ASPで提供する新事業が視野に入った。そのために、Webサービスで良く使用されているNode.jsやAngularJSなどのJS開発基盤、Redis、MongoDBなどを組み合わせフルスクラッチでCRMシステムを開発し、運用フェーズに乗せたところだ。
「最新の技術を積極的に活用して、大量かつ高速の処理が可能な開発基盤をつくる必要があります。当社には、エンジニアとして刺激的な業務環境があると思います」と武山氏は強調する。

本社30名、フィリピン15名のエンジニア集団の同社のポリシーは“エンジニア・ファースト”。同社にはSIerへのSES、エンドユーザーへのSES、エンドユーザーからの受託、自社サービスという開発ステージがそろっている。これにより、あらゆるレベルのエンジニアがステップアップを図っていける環境がある。
「エンドユーザー直体制やオフショア開発基盤を整えたので、次は規模の拡大を狙います。そのため、経験度の浅いエンジニアも積極的に採用し、スキルレベルに合った業務から対応して頂きます。無理をして高いレベルの仕事を任せるとパンクしてしまいますが、当社ならばスムーズに成長できると思います」（武山氏）

最新の技術に研修などはない。自力で情報を探し、試しながらノウハウを獲得していくしかない。しかし、普段からそういう作業をずっとやっているので、自然にスキルアップを果たしていける環境があるということだ。

人事評価は年1回。社長とチームリーダーの3者で面談し、自身の実績をアピールできる。
「当社では、年下の上司もいるなど実力主義です。パイは限られていますが、年齢や経験年数など関係なく活躍すればそれに見合った報酬が得られます。やりがいはあると思います」
そんな同社には、アウトドアやスポーツ好きのエンジニアが集まっているという。自らもスキューバダイビングのライセンスを持つ武山氏は、次のように話す。
「IT-TERA PHLIS.INCから車で1時間も走れば、ゴルフやスキューバができるスポットがあり、行くたびに楽しんでいます。国内でも、よくみんなで四万十川や長野のカヤックや渓流釣りを楽しみに行きますね」（武山氏）

同社が求める人材について、武山氏は次のようにまとめる。
「多少コミュニケーションが苦手でも構いません。プログラミングが好きで、新しいことを追求していくことに生きがいを感じるという人に、ぜひ来ていただきたいと思います。また、今後は海外に活路を求めていくことにもなると思います。海外事業に関心がある人や新しいサービスを立ち上げたい人なども大歓迎です」（武山氏）