有限会社クレスト

有限会社クレストは、大阪市に拠点を置くシステム開発会社である。ERPパッケージ・SAPを専門領域として、大手システムベンダーのプロジェクトにおいて、財務・管理会計や販売管理・購買・在庫管理といった基幹業務システムの導入コンサルティングや、ABAPを使った追加機能プログラムの設計・開発を担っている。

SAPはドイツのSAP社が開発・販売するパッケージであり、40年以上の歴史を持つ。現在は世界のグローバル企業のほとんどが導入していると言われ、大企業向けのERPパッケージとしては世界トップシェアを誇っている。企業が必要とする業務を標準機能として一通り揃え、ノンカスタマイズで導入しても業務が回るという特性を持ち、独自開発に比べて短納期、低コストで導入できるメリットがある。日本においても、1990年代に日本法人が設立されて以降、大手企業を中心に導入が進み、着実にシェアを伸ばしてきた。

クレスト社は2003年の設立以来、SAP導入を目指す企業の支援をしてきた。SAP認定コンサルタントの有資格者も在籍する。システム部 主任・谷本氏もその一人だ。SAPの開発チームで経験を積む中で、クレスト社の取締役社長・椿本昌弘氏と出会い、その人柄と統率力に惹かれて2007年に入社。以来、新規導入プロジェクトのFit＆Gap・要件定義・カスタマイズ、導入済みプロジェクトの追加機能の要件定義、アドオンプログラムの設計などに従事してきた。

「SAP ERPは標準機能だけで導入しても業務は回りますが、導入企業の要望があれば追加機能プログラムを設計、開発します。弊社は特に、そのような追加機能プログラムの設計・開発を担っています」（谷本氏）

強みは取引先であるベンダー各社との信頼関係だ。在籍メンバーは椿本氏や谷本氏を始め、全員が長年の経験と実績を持つエンジニアであり、１度アサインされると長期に渡り継続的に仕事を任されることがほとんどである。しかも、指示されたことをそのまま再現するだけではなく、はっきりと意見を言う“物言うプロ集団”としてのポジションを確立している。

「弊社ではエンジニア自身が営業マンです。この業界では、エンジニアそのものが財産であり商品でもあります。システムベンダーからすれば、アサインされたエンジニアが信用できるから会社も信用できるわけです。弊社の経営理念は“人と繋がり、企業と繋がり、社会に繋がる”です。繋がりを大切にすることが自ずと取引する企業を増やすことに繋がりました」（椿本氏）

椿本氏は、クレスト社を設立する前も、同業のシステム開発会社で、現在と同様、大手システムベンダーを顧客としSAPの開発に従事していた。クレスト社を設立したのはちょうど40歳の時だ。現場に出ているエンジニアの意見が通る会社づくりというビジョンを実現することが独立した目的だった。クレスト社設立以降、椿本氏は一貫してその実践に努めてきたのである。

「自分が所属する会社をどうしていきたいかは社員が決める。それが弊社のコンセプトです。弊社の魅力は、自分の意見が言える、自分たちが主体となって会社を運営できる、ということにあります。先日リニューアルしたWEBサイトの運用や求人などに関しても、社員が主体となって取り組んでいます」（椿本氏）

創業以来、SAPの市場拡大や顧客との間で築いた信頼関係を背景に、安定的に事業を継続してきた。途中、リーマンショックの影響は受けたものの、社員全員が一丸となって新規顧客の開拓に取り組み、耐え凌いだ。そして好景気を背景にシステム開発業界で様々なプロジェクトが活発に動き始めている現在は、同社にも新規取引先からの案件を含め引き合いが急増中だ。

特に増えているのが中小企業の導入案件だ。従来、大手企業を中心にシェアを伸ばしてきたSAPは、近年は中小企業においても導入が進んでおり、市場がより拡大している。過去に自社の業務に合わせて情報システムを独自開発した企業の中には、せっかく開発したシステムの使い勝手が悪く、使われないままで放置しているケースも珍しくはない。そのような企業が改めてシステムを導入し直す際に、短納期・低コストで導入できるという利点からSAPを導入するケースが増えているのである。

「そのような背景のもと、中小企業に狙いを定め、成功しているシステムベンダーも現れました。弊社も2017年春からその中の1社と取引をスタートしています。中小企業への導入プロジェクトは少人数のチームで取り組みます。そこに参加するエンジニアは、1つの企業の全業務に関与するため、幅広い業務知識を身に着けることができます。一通り身につけておけば、別の現場にアサインされる時の強みとなります」（谷本氏）

現在、同社ではSAP導入コンサルタント、SAPシステムエンジニア、ABAPプログラマの各職種の採用に力を入れているところだが、採用するエンジニアは、その中小企業の導入プロジェクトにアサインしていく計画だ。そして個々のエンジニアのレベルアップを図るとともに、会社としての組織力も高めていく考えである。

「将来的に組織が拡大しても“社員自身が会社を作る”という創業時の想いは変わりません。これからも社員が考えたことを、会社の予算を使って実現していく。そのような組織でありたいと考えています。組織が拡大して人的な余裕が出てくれば、事業拡大の方向性も状況に応じて選択することも可能です。同様に個々のスキルアップに関しても、会社を利用してやってくれれば良いという考えです。谷本を例に取れば、入社直後に会計の仕事にアサインされましたが、会計がわからないから学校に行かせてくれと言ってきました。忙しい現場の合間を縫って学校に通い、短期間で簿記二級を取ってきました。そうやって積極的にスキルアップを図ってくれる人が多いほど、会社は大きく発展していきます」（椿本氏）

さらに将来的に会社の方向性と個人の目指すこととがずれてきた時には、独立してくれても良いとも考える。もちろん何でも自由にできるというわけではない。新しい取り組みをする際には、社長である椿本氏と相談しながら進めていくことになる。そのため椿本氏は、社内では出来るだけコミュニケーションを取り、考えていることを話しやすい雰囲気を作ってきた。毎年、社員旅行を実施するなどして、社員同士の親睦も図っている。そういった中で、経営者、従業員という関係性に捕らわれず、歯に衣を着せず意見を戦わせる文化を育んで来た。

一方、社員の就労環境にも気を配ってきた。例えば残業は極力しない方針を掲げている。
「社員には生活を優先して欲しいと考えています。もとより、弊社の社員は全員真面目なのできちんと仕事をしているため残業する必要がありません。ただ、今の開発現場は、予算が限られているため、限られた人で残業させるというやり方が増えています。そこで弊社の方針と矛盾が生じます。その矛盾が目に余る時は、私から契約先であるシステムベンダーに交渉して改善してもらいます。そういったことについても弊社は言うべきことは言い続けています」（椿本氏）

そのような交渉も、普段から真面目に業務に向き合い、その姿勢や成果が顧客からも認められているからこそ可能だ。また、常駐型の開発会社に見られるような、所属する会社への帰属意識が薄れ孤独感に苛まれるということも同社にはない。谷本氏が中心となって普段から声を掛け合い、頻繁に帰社日を設けて、コミュニケーションを取っている。今後は、常駐先をできるだけ集約することも考えている。

「社員が主体となった働き方ができること、幅広い業務知識が身に着けられること、さらに各現場で様々な人と出会うことで個人の人脈が広がること、それがクレストの魅力です。現在は10名に満たない会社ですが、今すぐにでも20名、30名にできるだけの仕事はあります。SAPのハードルはそんなに高くないので、現時点で多少スキルが不足していても、コミュニケーション力さえあればやっていけます。自分なりにビジョンを描いて行動できる力を持った方にぜひともご参画いただきたいと考えています」（谷本氏）

プログラマからSEへ、SEからコンサルタントへ、システムの知識だけではなく幅広い業務知識を身に着けたいなど、クレスト社には各レイヤーにおけるキャリアアップの受け皿が揃っている。自己実現を果たす環境としては申し分のない会社である。