株式会社エンファシス

新宿駅南口から徒歩3分、オフィスビルのワンフロアにある、賃貸集合オフィス。株式会社エンファシスはここに本拠を構える。穏やかそうな人柄の同社取締役　池之本氏は、常駐先のオフィスから取材のために戻ってきてくれた。<br /><br />株式会社エンファシスという社名は「Embedded」「Firmware」と「組み込みシステム」を意味する二語を合わせた造語だ。その名の示すとおり、同社は組み込みソフトの開発を事業領域としている。広島にあるシステム会社にて、DVDシステムの開発に携わっていた7名の社員がスピンアウトする形で2003年11月に設立した。DVDシステムの将来性を見込み、また自分達の特化した技術を活かしていく場を自ら創出しようと意図しての独立だった。<br /><br />現在、社員は16名にまで増えた。社長の山田氏を除いて、平均年齢は28歳。若い技術者達が、それぞれ担当の客先に常駐するスタイルで仕事に取り組む。基本的には、3人の取締役が営業を兼務し仕事を獲得。主に、現在の取引先による紹介が中心のようだ。13人の技術者達は2，3名のチームを組んで、業務を請け負っている。

現在、同社の収益の柱であり得意分野であるのは、もちろんDVDシステムだ。DVDプレーヤー、レコーダーのみならず、地上デジタルテレビ、カーナビ、デジタルビデオ、カメラなど、あらゆるアプリケーションに利用される映像・音声圧縮/伸長技術を対象とし、技術提供している。同分野においては特に、ノウハウの蓄積が著しいという。<br /><br />また、DVDシステム以外にも、AVアンプや携帯ブラウザのワンセグ部におけるハード制御ソフトを手がけている。「組み込み」と一言で言っても、その最終製品は多種多様だ。D VDシステム以外のプロジェクトも、徐々に手がけている同社、次は自動車分野への進出を狙っているという。これに関しては、2007年度中に果たすべく、取り掛かりを始めたところだ。<br /><br />同社の技術者は、SIベンダとパートナーシップを組み、大手家電メーカーである客先に常駐する。顧客は誰もが名前を知っている有名企業ばかりだ。そんな職場で、常に新しい技術に取り組み、新しい商品を生み出していく仕事はエキサイティングだ。自分が手がけたものが、形となって世に出て行くのを見届けるのだから。<br /><br />「将来的には、ありとあらゆる組み込み分野において、当社の製品を入れたい。」と語る池之本氏。その夢は始まったばかりだ。

社風を問うと、「明るく、壁がない。休日も会っている人もいるほど、仲が良く、一言で表せばアットホーム。」と語る同氏。そんな社員達も、それぞれの職場では、最先端の技術に触れられるOJTや研修で身につけた確かな技術力、会社の蓄積するノウハウをいかんなく発揮し、納期を厳守して着実に評価を高めている。<br /><br />普段はばらばらでも、月に一度は全体会議が開催される。ここでは、各自の状況や納期などの伝達報告が行われている。また、同じく月に一度のペースで、土曜日に社内研修を行っている。取締役らが講師となり、実際に基盤を用意して組み込みソフトを試作するなど、実践的な内容だ。さらに、職場が近いもの同士は定期的に集まって飲み会をするなど、コミュニケーションを密に取っているという。<br /><br />また、同社の社員は真面目な性格。「コミュニケーション」と「真面目さ」で、確実にノウハウを共有し、情報を伝達し、会社の成長の原動力となっているのだろう。<br /><br />まだまだ小さな同社だが、3年以内に社員を50人程に増やし、毎年成長を続けて行きたいという。採用にあたって重視するポイントを池之本氏は以下のように語ってくれた。<br /><br />「会社自体は小さいですが、常駐先では数百人規模でのプロジェクトに1年ほどのスパンで参画することになります。組み込み技術者としての技術力を上げるには申し分のない環境で、多くの人と一緒に仕事をしていただくので、コミュニケーション力を最重要視しています。」また、「悩んだときなどは、気軽に相談してほしい。社内のコミュニケーションは非常に大事。」と付け加える。コミュニケーションによる重要なノウハウの共有と蓄積が、これからのエンファシスを発展させていくことだろう。