株式会社学研メディカルサポート

株式会社学研メディカルサポートは、看護師向けのe-ラーニングを提供している。医療の世界は日進月歩。免許を取得した看護師も、最新の医療に関する情報にキャッチアップすることが必要。病院は提供する医療サービスのクオリティーを高めるため、看護師の勉強をバックアップしている。同社は病院と契約し、所属看護師がe-ラーニングで最新医療を学ぶ機会を提供している。

同社が提供するサービスは複数ある。メインサービスである『学研ナーシングサポート』は、講義型のe-ラーニング。受講する看護師のレベルや勤務年数に応じてコース設定が細分化されており、受講対象も明確なので研修計画を組みやすい。約1,300のテーマで著名な講師陣による動画を配信。動画の長さは1テーマ15分以内。パソコン・スマートフォン、タブレット端末で受講できるため、スキマ時間での受講が可能。忙しい看護師の負担にならない配慮をすることで、受講率アップも念頭に置いたサービス設計で、病院の研修担当者の仕事を全面的にバックアップする。

「『学研ナーシングサポート』が解決するのは、病院の研修担当者が抱える課題です。最新の医療・看護の情報を学んでもらわなければならないのですが、対象に合わせた研修内容を考えるのは大変です。集合研修を開催するためのスケジュール調整や、資料準備等で研修担当は忙し過ぎます。当社のe-ラーニングを活用すれば、研修担当者の業務が効率化されるだけでなく、受講する看護師にとってもスキマ時間を活用できるため、効果的な学習が可能となります」(代表取締役社長・清水修氏)。

『学研ナーシングサポート』が最新医療を学ぶための座学であるのに対し、『ビジュアルナーシングメソッド』は、看護師の技術的な指導に特化したコンテンツ。看護手順書の更新やスタッフの手技指導をe-ラーニングでサポートする。

「看護師の業務内容は、病院ごとに少し異なり、看護師は自分が覚えた手順で日々の業務をこなそうとします。ただ、病院としてクオリティーの安定した医療サービスを提供するには、看護師の業務手順を共通化するのが好ましいとされています。しかし、新人看護師に事細かく手順を説明するには、先輩看護師が教える時間が必要となり非効率です。『ビジュアルナーシングメソッド』は、Webで簡単に看護手順書の更新やスタッフの手技指導を動画で制作し、共有することができます」(清水氏)。

そのほか、訪問看護ステーションや介護施設向けにもe-ラーニングを提供。2015年10月から開始された制度「特定行為研修」にも対応し、複数の団体と共に本制度の普及に努めている。

「特定行為研修は、研修を受講することで、医師の発行する手順書の下、一部の医行為を診療の補助（特定行為）として行えるようになる制度です。今後の急性期医療や在宅医療を支えていく看護師を計画的に養成することを目的としており、社会的に活用が期待されている制度です。当社では、研修動画だけでなく、看護師による特定行為研修の実践をサポートするe-ラーニングも制作・提供しています」(清水氏)。

同社は、その名の通り、教育・医療福祉事業を広く展開する学研グループの会社。2011年に社内ベンチャーとして立ち上げられた。学研グループのコアビジネスの一つである出版事業において、医療と看護の書籍を取り扱っていた。そのノウハウを活用するため、看護師の研修向けにセミナーを開催していた。

看護師が忙しい業務の合間を縫ってセミナーに参加し、そこで学んだことを病院に帰って他の看護師と情報共有する。それならば、最初からセミナーを録画・配信することで、病院に所属する全ての看護師がセミナーを受けることができ、手間も省ければ情報伝達の効率も上がる。そんなアイデアを形にすべく、看護師向けのe-ラーニング事業はスタートした。

「オフラインのセミナーを開催していたことで、配信する動画コンテンツの制作に関するノウハウは学研グループの内部にありました。ただ、e-ラーニングシステムの開発に関する知見がありませんでした。そこで外部の協力を仰ぎ、e-ラーニングシステムを開発する会社と業務提携。現在も引き続き、e-ラーニングシステムは他社が開発するものを利用し、当社は配信する動画コンテンツの制作と、顧客管理やコンテンツ管理のシステムを自社で開発しています」(清水氏)。

動画コンテンツの制作に関しては、自社で講義収録専用スタジオを所有し、年に一度、コンテンツの更新を行っている。

「毎年、全動画の約7割を更新しています。一般的なe-ラーニングでは頻繁に動画の内容を更新しませんが、医療は人々の命に関わる重要な領域だけに、最新情報にアップデートしなければなりません。自社スタジオを所有するからこそ、フットワーク軽く動画の更新ができると考えています。ライブ配信に対応できる設備も備えており、クライアントニーズに合わせた柔軟なコンテンツ制作を心掛けています」(清水氏)。

2024年8月、同社は看護師向けのe-ラーニング事業で培った経験を生かし、新サービスを開発した。患者説明のDXをサポートする患者説明動画『Gakkenメディカルクリップ』だ。

「入院案内や検査、麻酔等の患者・家族向け説明動画を簡単に作成し、LINEを用いて患者・家族に簡単に配信できる、学研が独自に開発した動画編集・配信システムです。現場でよく使われる六つのカテゴリーに分けて動画テンプレートをご用意し、それをベースに各施設が独自に編集することで、簡単に自施設の動画が作成できます」(清水氏)。

同社は、現在約110名の組織。コンテンツ制作部隊が最も多く、半数以上を占めている。エンジニアは16人。開発の上流工程を主に担当し、外部ベンダーと協力して、自社サービスのUI/UXの向上に努めている。

「事業が好調に伸びていることもあって、直近の1年間で30名以上の新入社員が入社しました。学研グループがダイバーシティ&インクルージョンを積極的に推進していることもあって、当社も女性が活躍できる環境を積極的に整えています」(清水氏)。

従業員一人ひとりとその家族のさらなる健康保持・増進のため、2024年9月に「健康企業宣言」を更新。健康経営推進最高責任者の下、「人生100年時代」に見合った健康経営を積極的に推進する姿勢を示している。

「当社は『医療・看護分野の教育支援活動を中核として世界の医療水準の向上に寄与し、人類の健康福祉に貢献します。』という理念に基づき、事業を発展させてきました。これまで取り組んできた健康保持・増進活動をさらに発展させ、従業員とその家族が心身共に生き生きと健康で安心して過ごせるよう、会社・従業員・健康保険組合が一体となって健康経営を積極的に推進することを宣言します」(清水氏)。

従業員が働きやすい環境をつくり、生産性を上げられるよう働き方改革も進めている。計画年休の実施により年次有給休暇を取得しやすくし、年5日間のワークライフバランス休暇も付与。長時間労働の削減に取り組み、ワークライフバランスが向上する就労環境の整備に余念がない。

「学研東京本社ビルおよび学研大阪本社は、22時以降のオフィス利用は原則禁止。長時間労働の削減には、グループ全体で取り組んでいます。社員の数が順調に増えていることから、一人当たりの業務量も安定しており、無理なく働ける環境が整いつつあります。ハラスメント撲滅に向けてグループ全体で取り組んでおり、全ての従業員にとって安全で快適な職場環境づくりを約束し、トップ自らが会議や社内報で強いメッセージを発しています」(清水氏)。

従業員の仕事と子育ての両立を支援するための取り組みを実施している企業に与えられる厚生労働省の認定マーク「くるみん」、女性の活躍促進の取り組みが優良である企業が受けられる「えるぼし」認定も取得済み。育児・介護休業法の改正に合わせ、2022年10月には「産後パパ育休（出生時育児休業）制度」が創設。SDGsに挙げられている「ジェンダー平等の実現」や「全ての人が働きがいを持った経済成長」に向けて、実践を続けている。働く環境に関しては、日本を代表する大手企業「学研」と同水準の働き心地がある。