株式会社JAM

株式会社JAMはクリエイティブ事業、システム開発事業とマーケティング事業を行っている。クリエイティブ事業部、システム開発事業部ともに社内開発を行っており、取引先はヨドバシグループやドン・キホーテグループ、日テレ7などの有名企業が多く、今挙げたクライアントとは直接取り引きしているともいう。

プロジェクトもクリエイティブ事業は某ビューティーショップサイトやタレントファンサイト、システム開発事業は大手通信キャリアのスマホアプリ開発やWEBシステム開発のほか、昨今話題のコネクティドカー関連の開発案件など、2015年4月にシステム開発事業を開始してから8年。社員数20名のスタートアップながら、注目度の高いものが多いのも特徴だ。

その背景には、代表取締役を務める酒井 誠氏の強い想いがある。

「私は、小売業界で営業をしていたので、IT業界のことはあまり詳しくありませんでした。しかし、外側から見ていたからこそ、IT業界の歪さをひしひしと感じたのです。

私たちの生活は多様なIT技術によってものすごく便利になっています。そして、この世界をつくってくれているのが、エンジニアです。それなのに、エンジニアがユーザーから感謝される機会はほとんどないのが実情です。また、顧客向けの開発支援の案件にエンジニアをアサインする際、エンジニアの意向はあまり重要視されません。クライアントが必要とするスキルや経験を満たすかどうかでエンジニアが決められていくのが現状です。

しかし、エンジニア側から見たとき、クライアントが求めるスキルを満たしているということは、そのプロジェクトで働いても技術的に得るものは少ないということ。エンジニアの成長という観点で考えれば、あまり魅力的とはいいづらい現場だといえます。私は、こんなIT業界の当たり前を変えていきたいのです」（酒井氏）

エンジニアがユーザーに触れる場面はほとんどないが、少なくとも友人などと話したとき「あのプロジェクトをしてるんだ、すごいな」などと感謝される内容、エンジニア自身の成長に貢献できるプロジェクトを用意したいのだと酒井氏は語る。そして、持ち前の営業力によって、そのような理想を有言実行しているところに同社の凄さがある。

「IT業界はエンジニアが不足していることもあって、それほど営業をしなくても案件を確保できてしまいます。そのような環境だからこそ粘り強い営業力とタフな交渉力を持って臨めば、真のエンジニア・ファーストを実現できる案件を受注することが可能であり、当社はそこに徹底してこだわっていきたいと考えています」（酒井氏）

株式会社JAMは、2015年4月にECサイトの受託（システム開発事業）とビューティー商品の卸（マーケティング事業）を始めている。その内、企業理念の実現に向け、主軸事業として本格開始したのがシステム開発事業である。その位置づけは、在籍するエンジニアのスキルアップのためであり、多様な条件のプロジェクトに参画し、成長を望むエンジニアの要望に応えていくのが狙いなのだ。

そして今、同社は請負開発とITサービスの展開を並走中。請負開発を行うことで、ノウハウの蓄積と適正なポジションを自己分析できる体制にて進行している。

とはいえ、請負開発できるのであれば何でもいいというわけではない。真のエンジニア・ファーストにこだわるJAMだけにプロジェクトの内容も重要視。現在開発しているのは、全国の学校向けのデジタル教科書。

「システム開発部を持ち、社内で開発できる体制を整えることは、お客様に提案し、受注し、開発して納品するといった開発会社“本来の姿”で世の中を豊かにするための第一歩だと考えています。請負開発と自社サービスを展開し、世に貢献していきたいと考えております。」（酒井氏）

酒井氏の話すことを"きれい事"だと感じる人もいるかもしれない。しかし、彼は彼のやり方を貫きながら、着実に実績を伸ばしている。売上高は昨年度比10倍ペースで推移し、次期はさらなる伸びが期待できるという。その実力は本物と言わざるを得ない。

同社には一つのルールがある。「人の意見を絶対に否定しない」。これは強制されるものではないが、代表の考えや会社の理念に共感しているメンバーが集まっているため、自然と定着している感があるという。

「モノの見方や考え方は人それぞれであって、自分なりの意見を持っているのは当たり前のこと。複数名が集まれば、考えの違いは生まれるものです。だからこそ、みんなで話し合う必要があります。でも、話している途中でその内容を誰かに否定されてしまうと、発言しにくくなってしまうものです。それは、メンバー同士理解し合う機会を失うことにもなります。だから、意見は否定しない。たとえ自分の考えと違うと思っても、最後まで聞いてから自分の意見を言えばいいだけのことです」（酒井氏）

この考え方が浸透しているため、同社には気兼ねなく意見を言いやすい雰囲気がある。月1回の全体会議に集まれば、自然と会話が弾む。業務連絡などの後に開かれる懇親会もにぎやかなものになるという。

「JAMという会社は、社員全員でつくり上げていくものです。そのためのベースの一つがコミュニケーションしやすい環境だと考えています」と酒井氏が語るとおり、福利厚生や制度なども、これから社員同士がアイデアを出し合って働きやすい形をつくっていってもらいたいという。

「現状、就業時間は9時30分～18時30分としていますが、これも社員たちが変えたいというのであれば、話し合って決めればいいと思っています。給与についても、売上から会社の維持に必要な一定額を引いた全額を社員に還元しています。そのため、売り上げが伸びていけば、社員の給与もそれだけ伸びていることになります。売り上げが伸びたからといって会社の維持費が急激に上がるわけではありませんから」（酒井氏）

このように、真のエンジニア・ファーストを徹底するJAMという器を最大限活用するには、エンジニアとして「こうしたい」という強い想いが欠かせないと酒井氏は続ける。

「3年後、5年後、10年後、技術者としてこうなっていたい。そういった目標は、学ぶこと、成長することへのモチベーションになります。成長したい、次のステップへ進みたい。でも、今いる環境が許さない――そんなもどかしさを感じているエンジニアを私は応援したい。エンジニアたちが感謝される世界、もっと自己成長に貪欲になれる世界をつくりたいと本気で思っています。そのために、自分の営業力を活かしていきたいし、JAMに加わることで1回しかない貴重な人生の時間を奪うことへの恩返しをしたいと考えています」（酒井氏）