株式会社アークネクト

地方企業のIT化を推進するユニークな会社が東京にある。ITコンサルティングサービスと中小企業向けソリューションサービスを提供する株式会社アークネクトだ。

ITコンサルティングサービスと中小企業向けソリューションサービスなら、どこのIT企業でも手掛けているサービス。アークネクトの特徴は、「地方」を意識してビジネスモデルを組み立てている点だ。

「私は富山県の出身です。東京でITコンサルティングの仕事をしていますが、家族の事情でいつ富山に帰る必要があるか分かりません。富山に帰った時に、今までの仕事を続けられる環境があると、帰郷がスムーズになると考え、富山県の企業をターゲットにしたITコンサルティング会社として、アークネクトを立ち上げました」（代表取締役・地村未知弘氏）。

東京や大阪、名古屋等の都市部に比べ、地方都市にある企業のIT化は、進んでいないと地村氏は語る。そして、そこに大きなチャンスがある。

「東京あたりの企業が、当たり前に使っているソフトウェアやサービスを、地方の企業は知らないケースが多々あります。また一方で、地方の企業は深刻な人手不足に悩まされており、ITソリューションによる効率化が急務です。東京のエンジニアが持つITスキルを地方企業は切に求めています」（地村氏）。

地方企業のコンサルティングで、それぞれの企業の課題を抽出し、既存のソリューションを導入して解決する。例えば、売り上げや経費を全て「台帳」に記帳して管理しているアナログな企業に、クラウド会計ソフトを導入するだけで業務効率は劇的にアップする。

「IT化が遅れているだけに、ITツールを導入した際の効果は計り知れないものがあります。経営者には喜ばれるのはもちろん、地方の活性化にも一役買えますし、上流工程を経験できることがエンジニアにとっては非常にやりがいのある仕事といえます。必要な場合は自社でシステム開発することもあります」（地村氏）。

地方の会社だけではなく、東京の企業のコンサルティングも並行して請け負う点がポイントだ。最新技術に精通するには、やはり東京の企業の課題に触れていなければならない。常に最先端のIT情報や技術トレンドをキャッチしていることで、地方の企業にとって価値が出るのだ。

「エンジニアの視点で見れば、東京の企業をクライアントとした案件でご支援しながら得た知見や最新の技術を、地方の案件で実際に活用する機会に恵まれます。全くIT化が進んでいないと、一気に最新技術の導入に踏み切ることができます。現に当社がシステム開発する際は、AWS・GCPを基本としています。ゼロからシステムを構築できると、創造性のある仕事が体験できます！」（地村氏）。

地方の企業をメインターゲットに、コンサルティングを展開しているアークネクトだが、そのビジネスモデルには、もう一つ狙いがある。地方の企業ならではの課題に接することで、自社提供のソリューション開発に生かすことができる。

「地方企業の課題の多くは、ビジネス現場でのリアルな困りごとです。それをもとにシステム開発し、全国に販売するのが当社のソリューション事業です。既にフリーランスや副業のエンジニアの手を借りて、いくつかソリューションを開発しました」（地村氏）。

アークネクトが開発した『YubiQlo（ユビクロ）』は、タイムカードをアプリ化したソリューションサービス。従業員が出勤した時にタイムカードを打刻する代わりに、スマホで出勤ボタンを押すだけで、データを表計算ソフトにまとめてくれるシステム。『YubiQlo（ユビクロ）』を導入するだけで、タイムカードの情報を表計算ソフトに転記する業務が軽減される。会計ソフトや労務管理ソフトと連携すれば、より効率化ができる。しかも、地方ならではのちょっとユニークな機能も付いている。

「勤怠入力時にお弁当を注文できる機能を付けました。地方の会社ではランチを食べに行く場所も限られ、会社で仕出しの弁当を頼んでいるところも多々あります。『YubiQlo（ユビクロ）』で行った注文は、お弁当屋さんへ届き、そのデータを活用すれば、給与から天引き処理することも簡単にできます。お弁当の注文だけでなく、クライアントの利用シーンに応じた機能の追加が可能です」（地村氏）。

AI搭載の在庫管理サービス『AiCon（アイコン）』は、スマホのカメラ機能を利用して、自社で抱える膨大な在庫を一元管理するソリューション。棚卸・在庫管理に膨大な工数を要しているものの、在庫管理システムは高価で導入できない企業には嬉しいサービスだ。

「スマホで写真を取るだけでAIが瞬時にカウントして、在庫データをクラウドへ保存します。専用端末の購入は不要で、GoogleSpreadでデータ管理・保存・共有ができ、誰でも迷わず簡単に利用が可能です。2020年2月12日～14日に東京ビックサイトで開催された第4回スマート工場EXPOに出展したところ、多くの来場者に興味を持っていただきました！」（地村氏）。

今後もコンサルティング事業で集めた、地方企業ならではの課題を解決するソリューションを積極的に開発していく意向だという。

「開発したソリューションがコンサルティング事業のクライアントの課題解決に繋がります。二つの事業がシナジーを生み、全国各地の企業のIT化のお手伝いができればと考えています。新しいソリューション作ることは楽しいですし。」（地村氏）。

この記事の冒頭に「富山に帰る日に備えて会社を作った」という地村氏の言葉を紹介したが、アークネクトの最終的な目的は、東京で活躍したエンジニアが地方に移住しても、引き続き活躍できるネットワークを作ることだ。

「富山に子会社を作って、そこを開発の拠点にする計画を進めています。地元で雇用したエンジニアを、東京のコンサルティング部隊が指揮して開発を進めます。富山の会社のコンサルティングを東京で行っていれば、富山に帰った時にそのまま仕事を続けられます。富山で雇用したエンジニアも、富山に居ながらにして東京の案件にも携わることができて、地方のエンジニアのスキルアップにも繋がります」（地村氏）。

地村代表の出身地である富山でロールモデルを作り、軌道に乗ったタイミングで、ほかの地方にも広げたい意向だ。富山に限らず、将来自分の地元に帰ることを考えているエンジニアなら、どこの出身でも大歓迎だという。

「当社で自分の地元と東京の架け橋を作って、子会社の代表になってくれれば、アークネクトを創業した甲斐があるというものです。地方のITニーズはこれから顕在化してきます。東京のコンサルタントが地方に行って案件を片付けるのではなく、その地方に愛着を持ったエンジニアが地方企業と一緒に盛り上げていくことが大切です。社名のアークネクトは、Arch（橋）＋Connect（繋ぐ）という意味。地方と東京のエンジニアを繋ぐ架け橋にしたいという思いを込めています」（地村氏）。

事実、既に富山の次に東北地方への進出を考えて、人材の確保も進んでいる。同社で働くコンサルタント、最高執行責任者・小田川潤氏は次のように語る。

「私の出身は北海道ですが、十数年もの長い間仙台で働いていました。しかし、震災後の翌年に当時在籍していた会社より東京へ転勤を命じられました。自分にゆかりのある地方や街を応援したい気持ちが強くあり、以前より飲み仲間だった代表の想いに強く共感しジョインしました。アークネクトを仙台および東北地方と東京の架け橋にして、生活の基盤を東京におきながらも大好きな仙台の街や人を応援したいと考えています」（最高執行責任者・小田川潤氏）。

今後、ニーズが増えると思われる地方のIT化に着目し、地方との架け橋になりながら、エンジニアが地方でも活躍できるフィールドを作ろうとしているアークネクトのビジネスモデル。東京で磨いた腕を地方で存分に振るいたいエンジニアも、地方で東京と変わらない高い水準の仕事に携わりたいエンジニアも、地方活性化を東京にいながらITの力で成し遂げたい意欲的なエンジニアも、アークネクトの事業を成長させるためにジョインすれば、そこにはやりがいのある仕事が待っていることに間違いはない！