ご略歴をお教えください。
人間は、どこまでのことができるのかということに関心があって、理論物理学を学ぼうと東京大学に入学しました。しかし、在学中に情報科学という新しい魅力的な学問に出会い、進路を変更しました。情報科学は、知能とは何か?人間はどこまで世界を理解することができるのか? を新たな見地で解明する分野だったからです。いい大学だったので素晴らしい先生方が揃っていましたが、最も鍛えられる先生の下で学ぼうと、修士課程では人間の意志決定や判断の仕組みとも大きな関わりを持つ情報科学の重要分野である「組合せ最適化」の第一人者である今井浩先生の研究室に入ることにしました。 研究室では組合せ最適化の理論から応用まで幅広く学び、鍛えられましたが、私は特に、実際にコンピュータプログラムを制作してアルゴリズムを検証する 応用分野に惹きつけられ、交通や輸配送の現実の問題を対象として研究を行いました。当時はちょうど、ハードウェアの性能が劇的に向上し、現実世界の複雑な問題がどんどん手軽に解けるようになってきた時期で、世界中の研究者と競いながらより優れたアルゴリズムを開発していくのは非常にやりがいのある楽しい研究生活でした。 1998年の修了後、是非、研究の成果を現実社会に役立てていきたいと考えていたところ、 同じ研究分野の著名な先生から「アメリカの数理計画ソフトウェアメーカーが日本支社開設メンバーを探しているがどうか」というお話をいただき参画させていただきました。 同社では何しろ人がいないので、営業から製品の導入、サポートまで全てを担当し、グローバル大手企業から地場の運送会社まで、様々な企業のロジスティクス最適化プロジェクトに携わらせていただきました。忙しくも大変、充実した会社生活でしたが、クライアントから不満が寄せられても、開発の本拠地が海外であるためすぐに解決できないことは歯がゆく感じていました。日本拠点の立ち上げに一区切り付いたこともあり、より自分の能力をフルに使ってロジスティクス業界の役に立ちたいとの思いから2000年5月にライナロジクスを起業することにしました。
ライナロジクスをどんな会社にしようと考えましたか? また、20年間でどこまで実現できましたか?
一言で言うと、“AIの民主化”を追求する会社です。従来、人間の“勘と経験”に頼ってきた判断を、コンピュータによってより速くより楽にできるようにし、誰でも簡単に楽しく仕事ができるようにしていきたいと考えています。言ってみれば、働く人、一人一人に“ドラえもん”のような仕事のパートナーを付けてあげるイメージですね。もちろん、ドラえもんのような汎用のAIの完成はまだまだSFの世界の話ですが、たとえば私たちが取り組んでいる配車計画のように、特定のタスクに限定すれば、多くの分野ですでにコンピュータは人間にとってかけがえのないパートナーになってきているのですよね。 20年間取り組んできてどこまで実現できたかは、富士山の登山でいえばようやく登山道の入口に辿り着いたところという感じですね。実は10年目くらいの頃、ちょうど多くの企業様で私たちのソフトウェアが受け入れていただけるようになった頃ですが、その頃はもう5~6合くらいは登ったのではないか、と思ったりしたこともありました。しかし今思えばそれは頂上が曇っていた、いや、頂上を見る自分の目が曇っていたのだと思います。AIが本当に働く人たちの間に受け入れられ、かけがえのないパートナーとなる。そうして全ての人がより楽しく、より生き生きと働く世界を実現する。どれほど遠い先であったとしても、そういう頂上を私たちは目指したいと努力しています。
朴さんの仕事観をお聞かせください。
働く、ということは100パーセント自分のためだけ、ということもないですし、100パーセント社会のためだけ、ということもなく、個人と世の中をつないでくれる非常に貴重なものだと思います。 世の中には、働かなくてもいい人、働きたいのに働けない人、様々な人がいます。そうしたことを思うと、自分がこうして日々、働いている境遇にあるということは本当に有り難いことだと感じています。仕事とそれを通じた多くの出会い、経験は、誰にとってもその人の持っている豊かな可能性を引き出してくれるものだと思います。仕事は人を成長させ、そうして今とは違う新しい景色を見せてくれるものなんですね。
社員に対して、どういった存在になってほしいかの思いをお聞かせください。
その意味でも、当社は一人一人が、自分と互いのポテンシャルを最大限に引き出し、引き出されるような場でありたいと願っています。多くの人は、持てるポテンシャルを必ずしも十分に発揮できていないものではないでしょうか。何か少しの巡り合わせや環境からの刺激によって、そうした個人のまだ見えない可能性が発露していくということはままあることと思うのですが、当社で働くことがそうした機会となるのであればこんなにも嬉しいことはありません。 新しいメンバーに対しては、当社は今非常に面白い成長ステージにあるので、是非ジョインして力を貸していただきたいとの思いがあります。もちろん、成長期特有の大変な部分はあります。しかし、今のステージでないと経験できないことが確実にあると思うのです。皆さま、ぜひ、当社と一緒に大きく成長していきましょう!
オフタイムは、どういった過ごし方をしているのでしょうか?
よくオンオフの切り替えが大事とも言うので、オフはできるだけリラックスして過ごそうと思っています。しかし、根が技術系のオタクなので、結局はPC触っていたり、プログラムいじっていたりすることが多いかもしれません。頭が回らないときは音楽かドライブ、というか最近は音楽聴きながらドライブですね。昔は車に何枚もCD入れてみたいな時代でしたが、今はスマホだけで何でも聞けるので有り難いです。良い時代になりました。