スマサテ株式会社

賃貸不動産物件の賃料設定を劇的に効率化する賃料査定サービス『スマサテ』を展開するスマサテ株式会社。2020年11月にサービス名を社名とする変更を実施した同社は、2015年に株式会社ターミナルとして事業をスタート。当初は、物件の空室・在室情報を中心としたデータ活用サービスを展開していたが、多くの不動産関係者へのヒアリングの結果、賃料査定業務に大きなペインが存在することが判明したことから、2018年にその業務をサポートする『スマサテ』のサービスを開始した。

当社代表の山岸氏は日本最大のレシピサイトを運営するスタートアップに、まだ数名だった2005年に参画し10年間勤務。様々な役職を経て副社長兼COOの役割もこなていた。2009年にマザーズに上場し10年間勤務の後2015年に退職。その後はエンジェル投資家として活動し20社以上に投資、直近では医療ベンチャーのメドレーへの投資実績もある。当社もその投資先の一つだったが創業者である前代表が会社を離れることになり代表取締役に就任することに。当時苦戦していた事業からピボットし、スマサテに舵を切り現在に到る。

現在、提携先など様々な取得先から得た約20億件以上という膨大な不動産ビッグデータを保有する同社。その圧倒的なデータ量に加え、日々更新される数百万件のデータを反映できる点に特徴がある『スマサテ』は、賃料推定アルゴリズムを駆使した機能により、世界最高水準の賃料査定精度を誇っている。実際、同社の賃料推定精度はMER（誤差率中央値）1.4％と米国最大の不動産テック企業Zillow社の1.9％を上回る。同社代表取締役である山岸延好氏は、自社のAIサービスについて次のように語っている。

「賃貸不動産ビジネスの鍵を握る最重要な変数の一つが家賃です。ところがこの賃料設定に非常に大きなペインがあります。近隣の賃料を参考にするためにデータを集めること自体も大変な時間と手間がかかる作業になりますし、駅からの距離や広さ、築年数などの条件が少しずつ異なっており正解が非常に難しい。さらに言えば過去に遡った賃料の変動等を知ることができません。適性や家賃を決定するのは思っている以上に難しいのです。さらにオーナーや関係者に説明するための資料作りの業務も発生します。業界に関わるその課題を解決するのが『スマサテ』であり、その地域の傾向やこれまでの推移等を踏まえた適正な数値を知ることができ、資料作成も一瞬で完結するサービスとして、不動産業界の多くの方々をサポートしています」

蓄積されたデータの量、精度の高い査定アルゴリズムに加え、『スマサテ』が競合優位性を保つ要因となっているのが、そのユーザビリティの高さだと山岸氏は語っている。実際に同サービスには、査定結果のアウトプットのしやすさ、レポートする情報量の豊富さ等、使う人の立場に立った機能性へのこだわりが感じられる。自身、オンラインレシピサイト運営会社の経営に参画した経歴を持つ山岸氏は、ユーザーが使いやすいサービスの構築力に自信を持つ人物だ。その山岸氏は、『スマサテ』においても同様のコンセプトをサービスに反映させていると説明してくれた。

「当社の強みは、ユーザー、クライアントのことを徹底的に理解した上でのプロダクト開発力にあります。『スマサテ』についても、これまで現場の査定業務担当者の方々に100回以上のインタビューを実施しながら開発・機能改善を繰り返してきました。正しい顧客理解、業務内容の深い考察があるからこそ、高い評価をいただけているのだと、私は考えています」（山岸氏）。

今後の事業展開については、『スマサテ』同様、不動産業界向けソフトウェアサービスやマーケットプレイス事業をいくつも考えていると語る山岸氏。具体的なアイデアとしては、リフォーム関連の領域や地域情報に関わる領域、マーケットプレイス等数多くあるそうだが、これからの同社の事業は賃貸領域に限定されない、不動産業界全般に適用できるようなデータ＆ソフトウェアサービスとなるということだ。

「不動産業界の特徴としてあるのが、事業が非常に細分化されているということ。例えば賃貸や売買、マンションや一戸建て、そして土地の仕入れから建売物件の仲介等、サービスは多様ですし、投資やサブリースといった領域も含めると、一つの業界の中に沢山の業態が存在していると言えるでしょう。そして、それぞれの業態に対してソフトウェアサービスを展開できる“空白”がいくつも存在しているとも言えるので、不動産業界には無数のチャンスがあると思っています」（山岸氏）。

不動産業界で活用できる大量の物件データを保有し、かつその情報整理や分析に関する手法によって高い評価を獲得してきた同社には、そのチャンスを成功に結び付ける力があると言えるだろう。同時に、不動産業界に存在する数々の問題点を解決することも、同社の事業テーマになっていると、山岸氏は付け加える。

「不動産業界には、非生産的な業務が多く残っていると感じています。また、不動産会社とエンドユーザー、つまり情報の出し手と受け手との間にズレが生じる“情報の非対称性”のような問題も存在していると思います。そうした業界としての負債のようなものを、自分達の活動によって取り除いていきたいというのが、私達の事業テーマになっています。生活者の住まいを取り扱う業界において、技術の力を駆使して問題を解決していく。そんな意義ある取り組みに参加できることが、当社での仕事にある一番の面白味なのではないでしょうか」

同社の特徴は、出来上がったものを販売する営業力ではなく、あくまでも顧客理解をベースにしたプロダクト開発力を武器にしている点にある。革新的なプロダクトを手掛け、それを世の中に発信していくという業務に魅力を感じられる人材こそ同社にマッチし、数多くのチャンスを形にする取り組みに力を発揮できるということだ。

現在の同社は、社員15名体制で運営されている。エンジニアリングの業務領域については外部リソースを活用していたが、エンジニアが増え内製化が整っている。今後は、自社サービスの開発・改善と同時に、積極的に開拓を進める新規事業の責任者となる人材をも強化しながら、社内体制の充実化を図る予定だという。そのビジョンを掲げる上でも、当社が重視しているのは「卓越したマーケット選定、正しい顧客理解、優れた技術力の組み合わせ」によって、充実した機能と分かりやすいユーザーインターフェースを併せ持つプロダクトを世に送り出すことだという。

「技術者である新谷は、インフラやサーバーに関するエンジニアリング力、そしてデータベースに関する高いスキルを有しています。また高澤は、不動産業界の知識に加え、不動産データに関する細かな知識と経験を持つ人物。そこに、不動産業界未経験ながらも、ユーザーが使いやすいものをつくることを得意とする私が加わり、その三人の特性を絶妙に掛け算できたことが、当社のプロダクトのレベルを高める結果になったと思っています。今後は、そのバランスを大切にしながらそれぞれの業務領域を強化し、卓越したプロダクトを作り続ける体制を整えたいと考えています」（山岸氏）。

現在、スマサテ事業は急激に成長している。

不動産業界の実業ではなく、その実業を支えるデジタル化に関わる同社の事業は、そのマーケット自体の成長性と同等の成長性があると言えるだろう。そんな事業領域にチャレンジし、他社には真似のできないサービスを少数精鋭の体制でつくり出す同社のメンバーとなる魅力について、山岸氏に語ってもらった。

「間違いなく言えるのは、会社が大きくなってからでは味わうことができない経験ができるという魅力があるということ。組織が大きくなれば役割も細分化され、限られた範囲内での仕事しか経験することはできません。しかし、広い守備範囲の中で様々な業務を経験しながら、全体を見据えた仕事ができることで、より成長を果たすことができると思います。また単純に、小さな会社が大きくなっていく動きを、コアメンバーとして体験できるという喜びもあると思います。それは、私自身も経験してきたことですし、これから入社される方々にも私達と一緒に、ここで心震えるような時間を味わっていただきたいですね」

卓越した開発力を武器に、チャンスあふれる業界で成長を目指す。そんな魅力を持つ同社の事業に参画し、不動産業界に変革をもたらすようなプロダクトを創出できるチャンスを、是非手にしてもらいたいと、山岸氏は語ってくれた。