スタジオアンビルト株式会社

スタジオアンビルト株式会社は、建築デザインに特化したクラウドソーシングサイト『スタジオアンビルト』や、建築家による間取り作成サービス『マドリー』を運営している、名古屋発のスタートアップベンチャー。テクノロジーの力で建築業界のワークスタイルを変革することを目指し、つくる人と住まう人を繋ぐ画期的なサービスを世に送り出している。

「建築家が生み出す設計デザインには、その空間で過ごす人々の生活に、煌めきを与える力があります。でも、実際の社会の中で建築士が設計を手掛ける建築物は極めて少なく、注文住宅を建てた人の95%が間取りに不満を持っているというデータもあります。私達は、もっともっと多くの人達に建築家の優れたデザインを届けるために、この会社を立ち上げました」

上記のように語るのは、代表取締役の森下敬司氏。一級建築士の資格を持ち、大手建設会社でオフィスビルや大型複合施設の設計を手掛けた経験を持つ人物だ。

建築の仕事は完全受注生産かつ一品生産であるため業務の効率化が難しく、徹夜で図面を描く等のハードワークが常態化しているケースもあるという。また、多くの物件を取り扱うハウスメーカーや工務店では、設計士ではなく営業担当者が設計を行うケースが多く、優れた建築デザインが生まれにくい構造になっているという。そんな状況を変えるため、森下氏は建設会社を退職してECサイト構築やWebプロモーションの経験を積んだ後、2013年にこの会社を立ち上げた。

同社が2014年にリリースした『スタジオアンビルト』は、設計事務所や工務店の設計担当者が発注者となって、建築図面・パース・設計プラン作成等の仕事を、全国の建築系デザイナーに依頼できるマッチングサービスだ。仕事の一部をアウトソーシングすることで、設計担当者はデザインの思考等、より本質的な仕事に専念することができる。逆に、自分の手が空いた時には仕事を受注することもでき、建築の専門家同士が仕事をシェアできる場として、7,500人の登録者数を誇る日本最大級のプラットフォームになっている。

さらに、2018年には、注文住宅を検討するユーザーに向けた間取り依頼サイト『マドリー』をリリースした。スマホに要望や条件を入力するだけで、『スタジオアンビルト』に登録している建築家が作成したオリジナルの間取りが届くサービスだ。『マドリー』は、リリース直後からネット上で大きな反響を呼び、SNSにおける公式アカウントのフォロー者数は14万人に上る。

「Instagramの世界では『＃間取り迷子』というハッシュタグの付いた投稿が1.6万件を超えていて、ここに大きな課題があることが分かります。一方で、『マドリー』を通して建築家に設計を依頼した人の満足度は非常に高く、確かな手応えを感じています。これからもさらにサービスを充実させて、誰もが理想の間取りに出会えるような、新しい注文住宅のあり方を提案していきたいと思います」（森下氏）。

2014年に同社が『スタジオアンビルト』を立ち上げた当初は、建築業界にオンラインで仕事を発注するという文化がまだあまり浸透していなかったが、2016年に始まった働き方改革をきっかけに、労働時間の短縮や、多様で柔軟な働き方に対する意識が高まり、サービスが一気に動き出したという。コロナ禍でリモートワークが普及したことを機に、今後はさらに、住宅業界においてもオンラインサービスの需要が高まることが予想される。そんな中で、同社が今、最も力を注いでいるのが、『マドリー』の最適化と、『マドリー』を通して蓄積された間取りデータを活用した新しいサービスの立ち上げだ。

森下氏によると、現在、『マドリー』には3万5,000人のユーザーが会員登録しているが、推計によると家づくりを検討している人の数は全国で400万人以上に上り、今後より多くの人達にアプローチすることを同社は目指している。その方法の一つとして計画しているのが、同社に蓄積された間取りデータを活用した、新たな設計サポートツールの開発だ。
2022年度中のリリースを目指し、開発チームの人員強化にも取り組む計画だ。

現在、同社では9名のフルタイム社員と7名の時短スタッフが勤務しており、フルタイムでシステム開発を担当しているエンジニアは2名だ。ここに新しく5人前後のエンジニアを採用し、開発チームとして新たなプロダクトの立ち上げと、既存プロダクトの最適化に取り組んでほしいと考えている。開発に使用する言語やフレームワーク、開発チームの体制等もゼロから決めていく、裁量権の大きな環境だ。

「今はまだ小さな会社ですが、上場を目指し、その先もより大きなチャレンジを続けていきたいと思っています。急成長する会社と一緒に、自分も大きく成長したいと思うエンジニアが仲間に加わって、私達の想いを形にしてくれたら嬉しいです」と、森下氏は期待を語る。

同社は、名古屋駅の近くにある廃校となった小学校校舎をリノベーションして生まれたインキュベーション施設内にオフィスを構えている。一つの教室の3分の2に当たるスペースをオフィスとして使用しており、体育館や運動場、カフェ等の共用ゾーンも利用することができる。

「職場として、インキュベーション施設はとても魅力的な環境です。人工芝の上でお昼を食べたり、体育館でバドミントンをしたり、この場所で出会う異業種の方達との交流も、とても良い刺激になっています」

そう語るのは、取締役の山川紋氏。森下氏と共に建築を学んだ同級生で、人材業界でメディアプロデュースの仕事に携わった後、設計事務所を立ち上げ、住宅設計やリノベーションのデザインを手掛けた経験を持つ人物だ。テクノロジーの力で建築・住宅業界にイノベーションを起こしたいという森下氏の理念に共感し、森下氏と共に同社を立ち上げた。

「森下から『スタジオアンビルト』の構想を聞いた時、まさに自分の事務所が必要としているサービスであり、世の中で絶対に必要とされるサービスになるだろうと感じました。二つのサービスが軌道に乗り、家を建てる人達が求めている設計やデザインを届けられることに、大きなやりがいを感じています。社内のメンバーがとても優秀で、一人ひとりが自分の頭で考えて行動しているところも、弊社の魅力だと思います」と、山川氏は語る。

採用担当を務める津田暁美氏も、森下氏の想いに共感して入社を決めた一人。営業を担当する傍ら、ホテルやウエディング等のサービス業で活躍してきた経験を活かし、プロダクトを通したカスタマーサクセスを任されている。

「弊社では、自分の担当業務だけでなく幅広い仕事に挑戦することができ、私もサービスという視点からプロダクト開発に参加しています。社内には、建築、技術、Webマーケティング等、各分野のプロが集まっていて、みんな穏やかでありながら、強い信念を持って仕事に取り組んでいます。それぞれの立場から、いい意味で意見をぶつけ合い、失敗しても『よくやったね』、『次頑張ろう』と言い合える文化を、これからもずっと大切にしていきたいと思います」（津田氏）。

スタジオアンビルトという社名には、「未完成」という意味が込められている。妥協することなく、満足することなくつくり続けるという、同社の強い決意の表れだ。一人では到達できない大きなゴールを目指すため、同社の新たな組織づくりは今始まったばかり。共に挑戦し、共に成長できる仲間に出会えることを、皆が心待ちにしている。