クリプトン・フューチャー・メディア株式会社

『初音ミク』を生み出す等、クリエイターに向けたプロダクトやサービスを提供しているクリプトン・フューチャー・メディア株式会社。同社の主な事業内容は、次の通りだ。

●DTMソフトウェアの配信プラットフォームの開発・運営
DTMやサウンド関連素材、ソフトウェアをオンライン配信するWEBサイト『SONICWIRE』を開発・運営。ソフト音源やプラグインエフェクトなどのDTMソフトウェアの取り扱い点数は1万6千点以上で、世界でも有力な配信プラットフォームとして知られている。また、効果音やBGMなどのサウンドライブラリーの取り扱い点数は1千万サウンド以上。クリエイターのサウンド制作を強力に支えている。

●DTMソフトウェアの開発
歌声合成ソフトウェアの『初音ミク』らは同社が開発したソフトウェア。同梱の歌声エディタ『Piapro Studio』はJUCEライブラリーを活用して自社で開発している。歌声合成のNTエンジンは産業技術総合研究所との共同研究の産物。その他にも、DTMや音声技術に関する製品開発を進めている。

●音楽配信のためのプラットフォームの開発・運営
独立系ミュージシャンが作品を配信するためのプラットフォーム『ROUTER.FM』を開発・運営している。Spotify,Apple Music,YouTube Music,LINE Music,AWA,Amazon Musicなど、世界の主要な配信プラットフォームに対応。その他、世界のフィンガープリント事業者とも連携し、音楽クリエイターの活動を支えている。

●CGM型コンテンツ投稿サイト『piapro』の開発・運営
音楽・イラスト・歌詞などの投稿・コラボレーションが可能なCGM型コンテンツ投稿サイト。「ピアプロキャラクターズ」の作品やオリジナル作品が投稿できる。インターネット上のクリエイターが協業することで新たなコンテンツを生み出す“創造の場”を目指している。

●3DCGキャラクターによるコンサート技術の開発、ライブイベントの制作
リアルタイムで3DCGと歌声をコントロールするシステム『R3』を開発し、作曲家・冨田勲氏のコンサート等で活用。また、『初音ミク「マジカルミライ」』や初音ミクの世界ツアー『MIKU EXPO』のイベント＆ライブ制作を担当している。5年間で欧米・アジア27都市、計63公演、のべ17万人を動員。コロナ禍の今年は札幌で開催のライブを全世界に配信した。

●モバイルコンテンツの企画・開発・運営
「ピアプロキャラクターズ」が登場するスマホゲームや、待受／着信楽曲／きせかえコンテンツを配信する『初音ミクモバイル』、5万音以上の効果音等がダウンロードできる『ポケット効果音』等を企画開発。

●キャラクターに関する国内外ライセンス事業
「初音ミク」「鏡音リン」「鏡音レン」などのキャラクターたちは、同社が開発したバーチャル・シンガー・ソフトウェアのパッケージイラストとして生まれた。これらのキャラクターを活用してグッズ、ゲーム、CD、書籍等多方面で展開を広げる。

●地域を応援するローカルプロジェクトの企画・運営
各地のイベントや観光等の北海道の「今」を受け取ることができる地域情報発信アプリ『Domingo』を企画開発。また、北海道を応援するキャラクター『雪ミク』の展開で2010年から毎年『SNOW MIKU』を開催し、冬の北海道を盛り立てている。

●その他ジャンルにとらわれない技術の企画開発
スマホ用音楽カード『SONOCA』は、QRコードでスマホに直接音楽をダウンロードできるカード。音楽をモノとして所有できる感覚と、ダウンロードという利便性を掛け合わせた。クリエイターが音楽作品をリリースする新しいスタイルを提供している。

同社は、1995年7月、代表取締役の伊藤博之氏によって創業された。伊藤氏は大学の職員として働く傍ら、趣味としてコンピュータミュージック（DTM）で創作活動を行っていた。1990年代初頭のインターネット黎明期、職場にいち早くインターネットが導入される。すると、それまで趣味で創作した音源をヨーロッパの知人とセッションするために郵送していたところが、ネットで瞬時にやり取りできるようになったのだ。
「インターネットは世の中を変える！」と確信した伊藤氏は、北海道に居ながらにして世界を相手にビジネスができると独立し、クリプトン・フューチャー・メディアを設立する。

世の中にDTMが広まり始めていた当時、最初は効果音等のサウンド素材の輸入販売を手掛ける“音の商社”からスタートし、徐々に輸入先を広げていった。
2001年にはサウンドコンテンツ配信公式サイト『North Sound』をリリースし、モバイルコンテンツ事業に参入する。

販売する素材のライセンスは、誰でも自由に使って音楽を創作できるというもの。そこから歌声合成ソフトウェアの開発に派生し、2004年11月にヤマハのVOCALOID技術による世界初の日本語対応歌声合成ソフトウェア『MEIKO』をリリースした。次いで、2006年には日本語男性歌唱として世界初の歌声合成ソフトウェア『KAITO』をリリースする。
サブカルチャーが盛り上がりつつあった2007年に、そのコンセプトをまとわせた『VOCALOID2 初音ミク』をリリース。同年12月にはCGM型コンテンツ投稿サイト『piapro』をスタートさせ、二次創作に関するガイドラインを公開しクリエイターの創作活動を支援する体制を整備した。

そこから、キャラクタービジネスや様々なイベント、プロダクトやサービスの提供を重ねると共に、バーチャルシンガー『初音ミク』の世界ツアー『MIKU EXPO』を欧米やアジア各国で行う等、グローバル展開を図る。現在、初音ミクのSNSでのフォロワー数は全世界で約250万人強、YouTubeでは約200万人がチャンネル登録している。

コロナ禍の2020年には、産業技術総合研究所等の技術協力を得て、ユーザーのスマートフォンから流れる音楽と光等の街そのものに仕込まれた演出が同期する、新しいコンテンツ体験『SYNCHRONICITY 2020』を札幌市中心部で開催する等、最新技術へのアプローチを続けている。
「これまで、ファンやユーザーの皆様に支えられて事業活動を行ってきました。これからも変わらず、より使いやすいプロダクトづくりやさらに楽しめるコンテンツ開発に取り組んでいきます」と採用担当の寺田好美氏は話す。

同社が標榜するミッションは、“メタクリエイター”。「クリエイターが創作活動に必要な製品やサービスをクリエイトする存在」という意味だ。このミッションを通じて、「社員・会社・社会のHappinessを達成すること」をゴールに描いている。

2021年10月現在、社員数は約120名。そのHappinessを達成するための制度としてまず挙げられるのは、「オフモード」。伊藤氏同様、音楽等の創作を趣味とする人が多い同社では、オフィスのDTMソフトや端末等を業務時間外にいつでも自由に使うことができる。その他の機材や備品も同様だ。
その点で、残業が月平均10時間程度という少なさは社員の魅力になっている。
「ほぼ全てが自社プロダクトやサービスなので、いい意味で自分の裁量やペースで進められる点が大きいです」と採用担当の赤間小百合氏は語る。

社員による主体的なプロダクトやサービスの改善や創出を支援する仕組みも整備。既存事業のスケールアップをテーマとする「チャレンジ制度」と、新規事業を提案する「スーパーチャレンジ制度」がある。これらに応募して認められると、応募社員には予算と裁量権を授与され取り組むことができる。これまでの事例としては、『雪ミク』の隣にいる『ラビットユキネ』というキャラクターの着ぐるみの製作を提案し採用されたケース等がある。
さらに、子会社の設立を支援する「インキュベーション制度」もある。

「当社では、エンジニアもプロダクト開発の最上流から関わり技術的な是非の検討を行う等、プロジェクトの全般において知識やスキルを発揮できる環境があります」と寺田氏は言う。
人材育成においては、新人にはチーム以外の先輩社員が付くメンター制度がある。チームの人には言えないような、チームリーダーやメンバーに対する不満等も打ち明けてもらいやすいような環境づくりが目的だ。

社員間のコミュニケーションを促進する機会づくりとしては、五人以上の同好会に対して活動費の補助がある「部活制度」がある。「会議室にサーキットを設置し、クリプトン杯を開催するミニ四駆部といったものや、北海道の自然を楽しむアクティ部等がある」と赤間氏。

同社が新たに求めるメンバーも、“メタクリエイター”というミッションを理解し、自発的に業務に取り組める人材であること。
「エンジニアは、趣味がプログラミングというほど開発が好きで、かつバグを出さないような慎重さや生真面目さがあり、企画段階から関わるためにもコミュニケーション力のある方だと嬉しいですね」と寺田氏は期待を寄せる。
特にDTMや音楽に関心のある人材にとっては、見逃せない募集といえるだろう。