DICO株式会社

DICO株式会社は、ゲーム開発やローカライズ等の事業を手掛ける会社で、東京、ケルン（ドイツ）、グラナダ（スペイン）に拠点を構える。2011年の設立以来、ゲーム・エンターテインメント各社と共に歩み、数々の素晴らしいコンテンツの海外進出（アウトバウンド）、および海外のユニークなコンテンツの日本展開（インバウンド）を支援し、存在感を放ってきた。

創業者で代表取締役を務めるガジェゴ・サンブラノ・エミリオ氏は、スペイン出身だ。日本の大学に留学し、そのまま日本を気に入り、大学院を経てローカライズ等の仕事を手掛けるようになった。ゲーム業界との縁の始まりは、ゲームを手掛ける会社のヨーロッパ拠点から来た1本の電話。当時、日本の漫画の海外版制作等に携わっており、その経験を海外の求人データベースに登録したところ、ローカライズの仕事を手伝ってほしいという話が来たのだ。

「そこからゲーム業界に入りました。色々なタイトルに恵まれて、ゲームを手掛ける会社ならではの経験を積むことができました」とエミリオ氏。その経験を活かして、今度は日本でローカライズ事業を手掛けるために立ち上げたのが、DICOの前身の会社だ。その後、ローカライズだけでなく、開発等の事業を拡大する形で設立したのがDICO。以後、年々、事業が多角化していった。

「DICOは、エンタメ業界にソリューションを提供するために事業を展開しています。大手の会社でも痒い所に手が届かないようなことがあります。それを、我々のノウハウとサービスを組み合わせて解決し、既存のサービスがなければ、新しくサービスをつくってでもソリューションを提供してきました」と、エミリオ氏は流暢な日本語で経緯を語る。

例えばローカライズも、アウトバウンドからスタートしてインバウンドも、また、テキストの翻訳だけでなく、音声収録（アテレコ）も自前で行うようになる等、徐々にサービスを広げていった。現在のラインアップは、コンテンツ開発（コンシューマ、ソーシャル、アプリ等要望に応じて何でも）、ローカライズ、3Dグラフィック量産、パブリッシング、メディア（エンタメ情報の『STARTT』）、多言語対応カスタマーサポート、ゲーム開発スタッフ派遣等。

「困っている会社があれば我々の出番です。例えば人材派遣は、スタッフを出してほしいという要望を受けて始めました。ほかにもグラフィックに困ったり、部分的に制作してほしい等、様々な要望があります。カスタマーサポートもそう。十何カ国語で提供できる会社はほぼありません。お客様との関係を強くするために、次々とソリューションをつくってきました」とエミリオ氏。取引先はゲーム関連を中心に国内外に多数。ビッグネームがズラリと並ぶ。多くの会社から頼られ、事業を拡大してきた。

主力事業は、コンテンツ開発とローカライズ。コンテンツ開発は、コンシューマタイトル、ソーシャルゲームのほか、アプリ等様々なコンテンツに対応する。コンシューマゲームとソーシャルゲームは、著名なタイトルも多く手掛けてきた。横スクロールアクションRPG『Bloodstained: Ritual of the Night（ブラッドステインド：リチュアル・オブ・ザ・ナイト）』もその一つだ。DICOはPlayStation 4、Nintendo Switch、Steam、Xbox Oneの各バージョン開発を担当。販売数は全世界で100万本を突破した。

コンテンツ開発において、DICOは技術力や制作力に優れているほか、何より最初からローカライズを見据えたプロダクト設計が可能な点が、大きな強みとなっている。世界展開を前提としてDICOに依頼するケースが絶えない。

ローカライズは、海外市場を熟知しているネイティブスタッフが、プロジェクトの立ち上げからアフターフォローまでサポートする。言語だけでなく、その国の文化を理解し、適応させるカルチャライズが不可欠だが、DICOには、総勢200人を超える各国のネイティブチームがあり、強力にバックアップする。英語を経由せず、日本語からほかの言語への直接翻訳を行うため、オリジナルのニュアンスを損なわない品質と翻訳スピードも実現する。

ゲームだけでなく、ローカライズの対象はWebサイト、プロモーション、企画書、業務マニュアル、観光ガイド、字幕制作等、多岐にわたる。これまでに様々な業種、業界の400社以上の企業に向けてサービスを提供してきた。世界的に有名なゲームタイトルを多数手掛けてきたほか、世界各国で上映された有名映画（アニメも実写も）の字幕も、多く手掛けてきた実績がある。直近では、海外の有名知育アプリの日本進出をサポートした。日本版の開発、音声収録、プロモーション等を手掛けるインバウンドの事例だが、同時に今後、何カ国語版も制作するアウトバウンドの事例でもある。これらをワンストップでシームレスに実現するDICOらしい事例だ。

DICOの社名は、Developers for international Communicationの頭文字から付けた。社名の通り、世界中の会社と繋がり、全世界に向けてものづくりをしている会社だ。

エミリオ氏は、DICOの存在意義を「グローバル企業であること」と言う。その意味するところはこうだ。「日本の会社では、グローバル＝外貨を稼ぐことと捉えます。私が言うグローバルはそうではなく、国籍も文化も人種も性別も、多様な人が何の隔たりもなく、同じ目的に向かって頑張るのが本当のグローバル。ウチはまさにそう」

少し長いが、DICOが掲げるミッションを紹介する。
1.文化・人種・性別の隔たりない“人と人”とが協力し合う作業の成果を世界に届けます
2.テクノロジーの進化やグローバル化によって、変わり続ける世界のなかで、常に新しい価値を生み出していきます
3.エンターテインメント業界に向けて、皆様のお役に立つソリューションを提供し、業界の皆様と共に歩み続けます
4.世界中の人々から愛され、喜んでもらえる作品を生み出すことを目指します

隔たりなく協力し合い、アウトプットを世界へ。このミッションを体現し、DICOにしか出せない価値を提供してきた。そんなDICOは先頃、ソフトウェアの品質保証・テストを手掛ける一部上場企業、株式会社SHIFTのグループ入りした。業績は絶好調で、さらなる拡大を図ろうとする今、敢えてグループ入りしたのは、あらゆる機能の強化を図り、スピーディーに成長するためだ。中でも大きなシナジーを期待できる領域が、エンタープライズだ。

「翻訳でも開発でも、我々のような会社は希少であり、エンタープライズでも貢献できる点があるはずです。エンタメだけでは成長機会が限られます。我々にとって、エンタープライズ領域はネクストフロンティアです」とエミリオ氏。世界同時の事業展開を望むのは、エンターテインメント業界だけではない。あらゆる業界でニーズがある。エンタメで鍛えたアウトプットの豊かさも、エンタープライズ領域で価値を発揮するだろう。

あらゆる隔たりのないDICOは、会社の文化もみんなでつくる。都度、みんなの意見や文化背景を取り入れながら、DICO流のやり方を探っていく。「直近ではコロナで急にリモートワークになった時、自宅の電気代が上がるという声が出て、手当を付けました」とエミリオ氏は一例を挙げる。

DICOらしいエピソードをもう一つ。某アニメーション番組の脚本を、DICOが手掛けた。「脚本を勉強している社員がいて、実践してみたいというので、そのメンバーのために全力でとってきた仕事です」と笑顔を見せるエミリオ氏。社員一人ひとりのスキルアップやキャリアプランを尊重し、時には余暇時間を使った自己研鑽をサポートする目的で、社内副業として、本業とは別に仕事を発注することもある。このようにして一人ひとりの得意を伸ばし、ありたい姿を尊重し、それを会社としての価値提供に繋げる。それが創業以来変わらぬDICOの姿だ。現在、案件の引き合いはとても多く、現メンバーでは対応しきれないほど。この多国籍な環境を楽しめる、新しい仲間を待っている。