株式会社イーネットソリューションズ

株式会社イーネットソリューションズは、データセンターサービスを主体にソリューション開発を付加し、真の顧客満足を追求しているクラウドサービスベンダー。本拠地は石川県金沢市。同社のサービスラインアップは、次のとおりだ。

●データセンターサービス
サーバーやネットワーク、セキュリティ等、インフラに関する困りごとを丸ごと解決するトータルソリューション『merisis』のほか、オンプレミスからクラウド環境への移行、運用監視、リモートバックアップ等のサービスを提供。

●ソリューションサービス
顧客の真の課題を解決するオリジナルなシステムやアプリ、プロダクトの開発をはじめ、Web制作やCMSサービスを提供。

●AIサービス
IBMが提供するAIを活用し、テキストマイニングやログ分析、チャットボットを提供する『Magic』シリーズや、データ予測分析プラットフォームを提供。

●クラウドサービス
ワークフローの『ActionPassport』、緊急通報・安否確認の『Saftylink24』といった独自のクラウドサービスを提供。

「これらサービスの品質や技術力にはもちろん自信はありますが、それ以上にお客様のことをどれだけ深く考えるか、という姿勢については、どこにも絶対に負けないと自負しています」と代表取締役社長の上岸弘和氏は強調する。
顧客の「こうしてほしい」という要請に対して、そのとおりのシステムを納めるのは当然のこと。しかし同社はさらに、なぜ「こうしてほしい」というニーズがあるのかに踏み込む。その上で、顧客の課題の真因を探り出して最適なソリューションを提供しているのだ。

一般的なベンダーは、顧客のニーズを聞き、必要な工数を割り出して見積もりを行い、契約後はその工数の範囲内で収まるよう管理する。そうしなければ、自社の利益が守れないからだ。
「しかし、それは自社の都合であって、お客様のことを考えているとは言えないと思います。当社は、適正な見積もりで受注した後は、工数のことは置いておき、どうすればお客様が満足できるものがつくれるかに集中します。お客様が満足できないものを納品すれば、離れられてしまうからです。一方、顧客満足のために工数が増えて損失がでることになったとしても、それはやむをえないと受け入れるようにしています。お客様は何のためにデータセンターという“サービス”を使うのか。その目的を果たすためのシステムを提供することで、お客様はずっと当社を利用してくれます。（上岸氏）。

大手クラウドベンダーが群雄割拠する中、データセンターサービスを主力とする同社が勝ち残っていくには、顧客に選ばれ続けるしかない。その最大の手段が、同社が掲げるビジョン「お客様のために何ができるでしょうか」なのである。

同社は、2000年12月、上岸氏が設立した。その経緯は次のとおりである。
上岸氏は大手ITベンダーの金沢拠点で営業に従事する中、顧客にとって必要な製品やサービスが会社が提供しようとしている製品やサービスと必ずしも一致しないことへの葛藤の中で、自社の利益、即ち自らの評価も重視していては真の顧客満足度を得ることができないことを経験する。

「もちろん、できるだけお客様のニーズに叶うよう努力はするものの、純粋にお客様の利益を考えるのではなく、自社の利益を重視しなければ自分の立場を失うことに強い違和感を覚えました。そんな商売をしていては、限りがある北陸の商圏では持続的なビジネスは難しいと感じたのです。2000年の当時、ITベンチャーがブームになっていて、自分でもできないことはないという根拠のない自信もありました。そこで独立起業を考え、当時のメインクライアントであった金沢のシステム開発会社であるシステムサポートの社長に、経営の先輩として教えを請うたのです。すると、『出資するから子会社として設立しないか』と。ありがたかったですね」（上岸氏）。

出資の条件は、連結対象のグループ企業としてシステムサポートの上場を共に目指すこと（2018年に達成）と、システム開発のような労働集約型ではない事業にすること。サーバーも“所有から使用へ”の流れにあった当時、上岸氏はデータセンター事業に関心があったため双方の意向が合い、データセンター設立資金が得られるオファーを受ける形でイーネットソリューションズを設立する。

経営に口出しされず取引先の紹介も受けないという主体性を尊重してもらい、上岸氏は自ら顧客開拓に励むものの、事業を軌道に乗せるのに一苦労。設立2年目までは赤字を計上したものの、3年目以降は右肩上がりの成長を続けている。2021年度の利益率は13%強という高収益体質を築いた。
「高い収益力は、親会社の東証プライムへの移行にもそれなりに貢献しているのではないかと自負しています」（上岸氏）。

今日までに、東京、名古屋、大阪に営業拠点、バンクーバー（カナダ）にブランチを設けている。「24時間365日データセンターを監視するのに、時差を利用することで担当スタッフの負荷を軽減しようと考えた。そこで、治安が良く日本人が多く住むバンクーバーに着目した」と上岸氏。3カ月間という短期サイクルを基本に、海外駐在を希望する社員を主体に福利厚生も兼ねたローテーションを実施。一石二鳥の運営を実現させている。

今後も、創業時からのビジョン「お客様のために何ができるでしょうか」と共に、“三つの自立”を追求し続ける。

一つ目は、会社の自立。「子会社だから」という甘えや言い訳は一切せず、資金や人材等のリソースは自ら調達する。
二つ目は、社員の自立。指示がなくとも、自らすべきことを考え、計画し、行動に移す集団となる。
三つ目は、サービスの自立。各サービスを分社化しても、単独で収益を上げ続けられるサービスにするということだ。

「主力サービスである『merisis』とは、細胞分裂し成長していく意味の生物用語。分裂して成長した細胞がお互いのシナプスにより結び付いていく様子を、提供していくサービス基盤に置き換えて名付けました。まさしく当社の事業も“merisis”のごとく自立し成長していければいいと考えています」と上岸氏は話す。

同社の社員数は70名ほどで、20～30代が7割を占める若さ。女性比率も43%とこの業界では高い。「優秀な人材を採用したら、たまたま女性だったに過ぎない」と上岸氏。

そのカルチャーの特長は、社員が主体的・自律的に活動し、会社づくりに関わっていること。その象徴的存在が、「いい会社の条件委員会」である。同委員会が、社員満足度調査からスタートし、フレックスタイムの導入、コロナを機にオフィスの固定座席からフリーアドレスへの移行、部署においてはすでに実施していたやテレワークの全社導入等を会社に提言し、実現させている。
「実は、私は社員の働き方に対してああしろ、こうしろとは特別言っていません。そもそも『いい会社の条件委員会』も社員が自ら立ち上げたもの。この委員会には社員の誰もが参画できますが、『自分達の会社は自分達でつくろう』と自主的に意見を言い合い、まとめて提案してくれています」と上岸氏は目を細める。

働きやすさの点では、平均残業時間は月6～7時間という少なさ。「業績に影響が出てでも構わないと一度徹底的に減らし、それでも収益に影響ない環境と仕組みつくり上げ、現在では安定的に推移している」と上岸氏。育児介護短時間勤務等も整い、女性の産休からの復帰率は100%だ。

待遇の面で特筆すべきは、プロフィットシェア制度。全社の年度利益目標を上回った場合、必要な余剰金分以外は全て社員に還元しており、過去最多で一人当たり20万円支給した実績がある。
それ以外にも、持株会制度、社員互助会、資格取得一時金、報奨金制度、退職金制度、福利厚生サービス等充実させている。

全社のコミュニケーション基盤としては、業務用の社内SNSや年1～2回、本社のある金沢に全社員が集まってのキックオフが挙げられる（コロナで中断）。経営方針の共有等のプログラムのほか、ゲーム大会や懇親会が設けられており、全社員がリアルに接触できる貴重な機会となっている。

そんな同社が求める人材像について、上岸氏は次のように話す。
「お客様のことをどれだけ真剣に考えられるかを最重視します。それと、チームワークや他者を思いやる気持ち、当事者意識もあると嬉しいですね。期待しています！」
顧客志向に徹し、成長を続ける同社。働きがいがある会社と言えるだろう。