株式会社コラット

映画やCM、ゲームにはじまり、VR・AR、デジタルサイネージ等のインタラクティブコンテンツに至るまで、プラットフォームを問わずハイクオリティな3DCG作品を手掛ける株式会社コラット。設立10年、わずか25名前後の組織でありながら数々のメジャータイトルを手掛けており、映画監督・脚本家・VFXスーパーバイザーとして著名なオダイッセイ氏が取締役を務めている。

同社では、制作内容としてはプレビズからコンポジットまで、制作工程はモデリングからコンポジットまで、ワンストップで手掛けている。難易度の高い案件を一社で完結できる理由は、3DCGに関わる全工程（モデリング、セットアップ、アニメーション、エフェクト、コンポジット）のセクションを有していることと、社内メンバーの多くを業界のプロフェッショナルが占めているということだ。外国籍のメンバーも在籍しており、専門性と多様性を兼ね備えた組織体制となっている。

華々しい世界に見えるが、同社の代表取締役の米山和利氏は自分達の存在を「黒子」と定義する。

「CGは裏方、縁の下の力持ちだと私は考えています。私達の技術は、作品や役者さんを引き立てるためのもの。技術そのものが主人公になるようなことはあってはならないと思います。なぜなら、エンドユーザーの求めているものは技術ではなく作品全体の面白さだからです。私達は、最終的にエンドユーザーに届くものを作っている以上、自分達や自分達の技術が黒子であるということを忘れてはいけないと思います」

“変化を恐れず、「良質」を追求する”を企業理念に、あくまで黒子に徹しながらハイパフォーマンスを発揮し続ける。それがコラットという会社の在り方だ。

しかし同社が設立されるまでの道のりは、長く険しいものだった。

米山氏はこう振り返る。
「元々SF映画が好きで3DCG制作の仕事を志したのですが、私の経歴はかなり特殊かもしれません。そもそも、3DCGについては全て独学で技術を身に付けました。地元に3DCGに関わる学校がなかったため、自分で学ぶしかなかったのです。当時はまだインターネット通信もISDNに入る前で、3DCGについての書籍もほとんどなく、おぼつかないネット回線で海外のサイトを見たりしながら勉強しました。最初の大きな転機は、新卒で入社した広告デザイン会社を退社した後のことです。とある企業の副社長を友人経由で紹介してもらい、第三セクターのインキュベーターに通い始めたのです。最新の機材やソフトが全て揃っていたため、必死で技術を習得しました。その間、専門学校の講師を務める機会も頂き、3DCGの概要やCG検定対策等の授業を担当。外部講師をはじめとした様々な人との出会いにも恵まれ、その仲間と一緒にWEB用の映像制作の仕事を数年一緒にやりました」

当時は、WEBデザインの世界でFlashが話題を呼んでいた頃だ。米山氏はFlash映像の制作に携わりながら、それでもやはり3DCG制作への想いは捨てきれず、技術を磨き続けることは忘れなかった。そして次の大きな転機が訪れる。

「コラットを設立する8年ほど前からフリーランスのチームで仕事をしていました。時代の流れと共にニーズが高まり、だいぶ大きな案件を請けられるようになった頃、ある日クライアントから『個人とは契約できない』と言われたんです」（米山氏）。

当時の米山氏は、2名の仲間と共に仕事をしていたという。クライアントからの厳しい声を受け、仲間と話し合った結果、起業することを決断。他に4名のメンバーを集め、2012年、ついにコラットが創立された。

以降、10年にわたり案件の規模やジャンルを問わず幅広い実績を積み重ねている同社だが、受注案件は紹介やリピートが大半を占めるという。圧倒的な技術力による確かな実績が次の実績を生み出す。そのサイクルによって、自ずと事業領域が拡大される。コラットはそうして成長を続けているのだ。

コラットではどんなメンバーが活躍しているのだろう。求める人物像と併せて米山氏に尋ねてみた。
「現メンバーは基本的にものすごく温和で思い遣りの深い人達ですよ。社風としては、ハキハキ・活発・ワイワイ！というよりは、落ち着いていて皆お互いを尊重しているようなイメージ。弊社ではパッケージを全て社内で完結させるため、チームワークを大事にできるというところは重要な共通項ですね。あとは、色んなジャンルに挑戦したい欲張りな人達の集まりです。なので、求める人物像としても同様ですね。加えて、リーダーシップのある方なら尚大歓迎です」

優秀な人材の集まるコラット。そこには、働きやすさやモチベーションアップへの様々な取り組みが行われている。

例えば、ワークスタイルは裁量労働制でリモートワークも相談可能。会社の合意を得ていれば個々の事情や適性に合わせて好きな時間に働ける。「キャンプに行きたいので、朝早くから仕事をして夕方には終業します！」といったメンバーもいるそうだ。産休・育休も取りやすく、男性の取得実績もあるという。

会社として仕事を請ける際、まずは現場に工数確認をして無理のないスケジュールを組むため、残業が発生しづらい仕組みであるのと同時に、そもそも会社として残業を推奨していない。エンターテインメントに関わる仕事をしている以上、エンドユーザー同様に「遊び」をしっかり享受することも大切だという米山氏の考えによるものだ。また、作業効率をアップさせるべく、自動化できる部分は自動化するように社内ツールの開発を積極的に進めている。

評価制度も明確化されており、どんなスキルや能力をどの程度まで身に付けば、どんなポジションに就けるかが分かる。

モチベーションアップのための投資も欠かさない。メンバーの希望を考慮した最新のマシンやソフトを随時導入するのはもちろんのこと、書籍購入やセミナー参加の費用も会社が負担する。中には10万円近いセミナーの参加も許可した実績があるそうだ。

「こうした取り組みの結果として社員が成長すれば、それは自ずと会社の成長へと結び付きます。皆で成長して、より幅広く高度なパフォーマンスを発揮できるようになれるなら、投資を惜しむ理由はありません」（米山氏）。

社食と社内託児所をつくるのが夢だと語る米山氏。社員への温かい想いが終始にじみ出るのを感じる取材だった。