株式会社ジェー・ピー・シー

株式会社ジェー・ピー・シー（以下、JPC社）は、“表現の頂点に立つ”というコミットメントの下、“デザインの領域を広げ、ワンストッププロモーションを提供する。”、“世の中に良い商品・サービスがあれば最速で広める。”という二つのミッションを掲げ、事業を行う広告業界のベンチャー企業だ。2022年10月現在、京都と東京に拠点を構え、合計約80名の社員で業務を行う。

設立は1994年10月。約20年間は、少数精鋭の方針を貫き、クライアントも少数のナショナルクライアントに絞った手堅い経営を続けていた。しかし2010年代半ば頃から方針を転換。メディア環境の変化や広告業界のトレンドに応じ業容を拡大し、事業規模も拡大してきた。現在はWebサイトや紙媒体、動画、CG等の制作に加え、スチール＆映像の撮影ができるスタジオ運営、モデルエージェンシー、Web/SNS広告の運用や広告媒体の販売を手掛ける広告代理業等、プロモーションにまつわる多種多様なサービスをワンストップで手掛ける。

業績も着実に伸ばしてきた。特に、コロナ禍に入ってからの成長が著しい。2019年度の8億円から2020年度は10億を突破、2021年度は11億3000万円。その勢いはさらに加速し、2022年度は13億5,000万円を見込む。しかも粗利益率は約70%、経常利益率は25%に達する超高収益企業として注目を集めている。

飛躍的な成長と高収益を生む最大の要因は、同社が「通販型広告」と呼ぶ、独自のマーケティング・オートメーション・システムだ。Web、グラフィック、映像、CG等のクリエイティブ制作を軸にしつつ、ニーズごとに細分化したサービスをECサイトのごとく、サービス内容と料金を明示し、「検索エンジンが新規開拓」を行っている。2020年度に新規取引が始まった数（問い合わせ数ではない）は123社に及び、翌年の2021年度はさらに増えて146社に達した。しかも、その多くが、ナショナルクライアントと呼ばれるような大手企業だ。また通販型を導入する一方で、飛び込み営業やテレアポ等、人力による新規営業は原則的に廃止したことで、利益率をさらに向上させている。

コロナ禍の下で特に伸びたのが、東京と京都に開設する撮影スタジオ『ONE STOP STUDIO』だ。同スタジオは、スチール写真の撮影機材だけではなく、クロマキーと防音設備を完備し、映像と音声を同時に収録できるスタジオだ。ここではスタジオと機材のレンタルサービスと、スチールや映像の撮影サービスを行っているが、非対面・非接触型のコミュニケーションが主流となる中で、紙媒体に代わる映像制作やライブ配信の依頼が殺到した。特に『ONE STOP STUDIO TOKYO』は都内一予約が取れないスタジオとして知られ、3カ月先まで予約が埋まっている状況が現在も続く。

また、Webマーケティングのワンストップサービス『AdMarket』も好調だ。Google広告やSNS広告等のデジタル広告を中心に、テレビCMを含め、あらゆる媒体の広告運用を受注している。あらゆるサービスがオンラインに移行し、Webプロモーションのニーズが増えたことに加え、サービスや料金体系の分かりやすさが成長の要因である。

2020年度以降、『ONE STOP STUDIO』や『AdMarket』等のサービスが好調のJPC社だが、その一方では他社同様、展示会ブースの制作や店頭ディスプレイ等、非オンラインで用いられるグラフィックデザイン関連の受注は減速した。だが、ワンストッププロモーションを目指し多様な広告サービスを揃えていることはリスク分散にもなる。既存客のアナログからデジタルへの移行ニーズに対応できただけではなく、撮影や広告等を入り口に取引が始まった顧客に対しても、Web制作や動画制作、CG制作等のサブアイテムの受注へと広がる仕組みがあったことが、事業全体の業績を向上させる要因にもなっている。

代表取締役・山本修司氏が語る。
「大衆がクラスター化している現在、従来のようなマス広告一辺倒では、影響力を持ちえません。そのため弊社は、クラスター単位でターゲティングを行えるよう、幅広いメディアを扱っています。また、不安定要素の多い世の中において、広告主のニーズコントロール等はできません。多様なニーズに合致するサービスの窓口を沢山設けておけば、多様なニーズを持ったお客様に入ってきていただけますし、そこから取引を横に広げることも可能です」

『AdMarket』のデジタル広告で取引が始まる顧客が顕著な例だ。デジタル広告の運用サービスでは、広告効果やその原因が明確に数値化される。ユーザーがランディングページで離脱している傾向が強ければ、ランディングページを改修しようというニーズが生まれる。当然、広告運用の委託先がWeb制作もできるなら、現行ページの問題点と改善ポイントを理解している分、わざわざ別の会社に制作を依頼する理由はない。このような仕組みがあるため、コンペに巻き込まれることもほとんどない。

ただし、各サービスのレベルが、競合他社よりもレベルが劣っていたり、案件によって品質に差があったりすれば、ワンストッププロモーションの実現は困難だ。そこで同社はWeb、グラフィック、動画、CG等全てのサービスでカテゴリートップになることを目標に掲げ、各サービスの品質向上に取り組んでいる。

「例えば『ONE STOP STUDIO』は“最高の画像ファクトリー”だからこそ選ばれています。他のサービスも、競合他社に劣っているとは考えていませんが、さらなるレベルアップを目指し、各職種のクリエイターがそれぞれの仕事に専念するために完全分業制を採りつつ、案件ごとにチーム制を組んでお互いに切磋琢磨できる環境を作っています」（山本氏）。

以上、独自のマーケティング・オートメーション・システムを武器に事業を拡張し続けるJPC社。同社が手掛けるデザイン領域は現在も拡大し続けており、『通販型広告』にラインアップされるサービスサイトも毎月コンスタントに増やしていく方針である。ただWebサイト構築やランディングページの制作案件が増え続ける現在、自社サービスの立ち上げに割ける人的リソースは不足しがちだ。そこで自社サービス、クライアントワークの構築・運営に携わるWebクリエイターの採用を強化中だ。

JPC社が広告制作会社として目指す姿は、“クリエイターが誇りを持って生きていける会社”だ。

「私自身、コピーライターとして広告業界のキャリアをスタートさせました。そのため、クリエイターの物づくりに対する気持ちやその苦労は理解しているつもりです。そのため、共に働くクリエイターの皆さんとJPCを表現の頂点に押し上げることで、クリエイターの社会的価値を高めていきたいと考えています。業界一広告効果を追求するという強い志を持ったプロ集団となり、社会に認められることで、他の職種に見劣りしない報酬を得られる。そんな“クリエイター天国”を実現したいと考えています」（山本氏）。

完全分業制を採用している背景には、この考え方がある。一つのスキルに特化した方が、効率良く技術を磨き伸ばしていけるからだ。ただデザイナーに関しては、グラフィックとWeb、動画等あらゆるメディアに対応できるマルチスキルを推奨し、教育してきた。広告メディアは、紙からWeb、映像へと主戦場を移動しつつ多様化している。その多様化したメディアに対応できるマルチスキルを身に付けたデザイナーを充実させることで、“デザイン領域を広げ、ワンストッププロモーションを提供する”というミッション達成を目指しているのである。

今後、Webセクションを強化するに当たり、特に採用に力を入れているのが、Webディレクターとコーダーだ。Webディレクターに求める役割は二つ。一つは自社サービス専属のディレクターとして、事業創造の旗振り役を担うことだ。もう一つは、受託案件専属のディレクターとして、Webデザイナー、コーダー、『AdMarket』のマーケッターを率いて指揮することである。

一方のコーダーは、まずは独自のマーケティング・オートメーション・システムに共感し、自社サービスを強化していくことに意欲的に取り組める人材を求める。

「コーディングのスペシャリストとなり、テクニカルディレクターとして会社の成長を支える存在になってほしい。フルスタックにならなければならないという強迫観念を持つ必要はありません。ご自身が得意とするコーダーという仕事に誇りを持ち、専念して伸ばしていただきたいと考えています」（山本氏）。

JPC社に在籍する約80名の社員のうち、約60名がクリエイターである。平均年齢は35歳。離職率は低く、設立時のメンバーはほとんど残っているが、8年前に拡大路線に舵を切ってから、新卒社員を含めた若手社員を積極的に採用してきた結果だ。

強靭な財務体質に加え、様々な専門スキルを有するクリエイター同士、刺激し合う環境が最大の魅力である。またバックオフィスのスタッフが中心となり、労務管理を徹底しているため、ライフワークバランスも取りやすい。一般社員の平均残業時間は月間20～25時間、年間休日休暇は125日以上と上場企業以上の実績だ。男女比は半々で、産休育休等の制度も整備され、女性の管理職も多い。

「クリエイティブな才能を持って生まれてきたのなら、その才能が正しく評価され、成長と共に収入も上がっていく。そういう会社で働いてほしいです。個人、または少人数で実現できることは限られています。それならチームで連携しながらやる方が充実した人生を送れます。会社の理念に共鳴してチームで成功を目指せる方をお待ちしています」（山本氏）。