株式会社ヴェス

ソフトウェア開発におけるテスト工程（第三者検証）のプロフェッショナル、株式会社ヴェス。2003年に設立した第三者検証の老舗だ。自動車システムや医療系ソフトウェア等幅広く手掛け、長きにわたり多くの大手企業と取引を続けてきた。そして20周年を迎えた2023年4月、株式会社Orchestra Holdingsのグループに参画し、新たな一歩を踏み出している。

Orchestra HoldingsグループはDX化支援、デジタルマーケティング、IT転職エージェント等、IT各分野のエキスパート企業が集結している大きな組織だ。

同社で現在取締役COOを務める信田人氏はこう語る。「第三者検証はどんなソフトウェア開発でも避けては通れないフェーズです。当社は20年の歴史の中で競合のテスト専門企業と競いながらも、着実にクライアントへ貢献し、着実に成長してきました」

2003年はインターネットやITの普及が広がり、数々の企業でシステム開発が盛んになっていた頃だ。社会に無数のシステムが生み落とされる中で重要になっていったのは、“正しい仕組みが提供されているか”という、システムの質だ。現代では数々のOSが生まれ、高い頻度でアップデートもされる。なお一層 “正しい仕組み”への需要は高まっているのだ。

元々Orchestra Holdingsグループの一員であった信田氏。ヴェスの参画についてこう語る。「現在Orchestra Holdingsグループには当社を含め、7企業が傘下におります。しかし今まで、品質にフォーカスした専門家ポジションが空席だったのです。インターネットやITの分野の企業が活躍の場を広げていく中で、当社の専門性の高さや、顧客基盤の頑丈さはかなりの強みと言えるでしょう。私もIT業界での経験は長いですが、当社の参画によって、グループ内での大きなシナジー効果を期待できると考えております」

もちろんグループへの参画は、同社側にも大きなメリットがある。2023年4月まで、140名前後という少人数体制で、名だたる大手企業との繋がりを保ってきた同社。しかし、やはり探り探りの部分も多かったという。

「今まで工夫をしながらサービス品質を維持してきましたが、環境整備や体制拡充、対応領域の拡張などグループと連携していくことで品質向上だけでなく、提供範囲の拡大も十分に可能だと考えています。20期の実績と経験をベースにグループ参画によってさらなる事業成長を狙えるフェーズになってきたいと捉えています」（信田氏）。

同社を説明する際、 “テスト（第三者検証）のエキスパート”と表すのが分かりやすいだろう。しかし実際に同社が担っている役割は、“システムの最終チェック”だけにとどまらないのだ。

同社では、新規契約したクライアントのうち約8割が継続して取引を続けている。この驚異的な数字を獲得している理由について信田氏に聞くと、こんな答えが返ってきた。「特にエンタープライズ（法人向け製品）は、高い品質を維持しながらコスト削減や業務効率化等、より高い生産性が求められる分野。それはソフトウェア検証の領域でも同様のことが求められており、その中で当社は、クライアントにきちんと寄り添って第三者検証を行ってきたという自信があります」

第三者検証において、「クライアントに寄り添う」とはどういうことなのだろうか？

システムや製品を開発する最終工程である検証。しかしそれは、製品作りそのものの集大成でもある。各クライアントはなぜその製品を作るのか？その製品を社会でどう役立てたいのか？そういった製品作りのコンセプトをしっかり把握することから、同社のプロジェクトはスタートする。つまり、そのコンセプトを全うした機能を実現するために、テストは必要なのだ。

「当社の営業やエンジニアは、打ち合わせでテスト領域の話だけを進めるわけではありません。クライアントの目指すものまでしっかり把握し、そのためにはどんな機能が必要かを見極めることが求められています。IT業界の中でも、『テストは下流工程』と言われがちですが、決してそんなことはありません。そもそもテストで見つかるバグというのは、開発プロセスのより上流工程から生まれているものなのです。つまり、モノづくりの上流工程と向き合うスタンスでいなければ、本質的な検証は実行できません」（信田氏）。

こうした製品開発全体と向き合うエキスパートが集まっているからこそ、同社は長い間、厚い支持を得てきたのだろう。

テスト工程の話だけでなく、各製品作りの話から入り、社内のナレッジを提供していく同社。商談でその姿勢を評価し、取引を決めるクライアントも多いのだとか。しかし同社は、クライアントからのこの評価を、“業界でのブランドイメージ”にもしたいと考えている。

「業界での同社の立ち位置は、まだまだ“ソフトウェアテストのエキスパート集団”。しかし私達は、“品質のエキスパート”と認められなければならないと考えています。クライアントだけでなく、マーケットでのブランドイメージをしっかりと届けられれば、当社が活躍できるステージも、貢献できるクライアントも増えていくでしょう」（信田氏）。

テストのエキスパートから、品質のエキスパートへ。同社の手掛ける仕事への姿勢は何も変わらない。あとはマーケットでのイメージを変えるよう、成長し続けるだけだ。

信田氏は、同社の社員についてこう話す。「グループ内でも、バイタリティ溢れるデジタルマーケティング企業や、職人気質を持つエンジニア企業等、組織によって風土は分かれている印象ですね。それらと比べると、当社には真っすぐで素直な人が目立つように感じます」社内のシニアマネージャーに話を伺ったところ、「朗らかな人が多い」という声も聞こえた。こうした真面目かつ冷静な人達が集まることによって、テストの本質を見極め、クライアントにじっくり寄り添った検証業務を行うことができるのだ。

同社のクライアントは、日本のみならず世界で活躍するエンタープライズの大企業が多数を占める。第三者検証がなければ、クライアントは安心・安全な品質の製品をリリースできない。こうしたクライアントのビジネスをどう支えていくかが、大きなカギを握るのだ。これが同社の一番のやりがいと言って良いだろう。

こうしたやりがいの根底にあるのは、やはり同社が“品質のエキスパート”であり続けること。このブランディングはもちろん、その点を社員が日々意識して業務に当たることで実現する。グループへの参画や、今後の人材採用を考えても、その方向性の共有はさらに重要になりそうだ。

「グループ傘下に入りましたがヴェスとして実行していくことはトップダウンだけの片方向コミュニケーションではなく、体制の整った縦横でのコミュニケーションと風通しの良い組織づくりと考えています。例えば、月例会を開催する等、メールや社内の掲示文にとどまらずに経営層が社員と意見交換する場を考えています。リモートワークに関しても、上手く活用しながら対面で交流する機会も大切にしていく予定です」（信田氏）。

また、同社の働きやすさにも注目したい。かねてから、育休後の時短勤務や元社員の再雇用等、子育てサポートを徹底してきた同社。結果として2023年現在、本社の営業部門7名のうち6名は女性だ。また、営業本部のGM、岩手県にある滝沢ソフトウェア検証センターのセンター長は女性である。男女の垣根を越えて働ける環境は既に整っている。グループ化してもその体制を崩すことなく、むしろ強化していくという。

少数精鋭の実力派集団だった同社が、ホールディングスの一員になることで、頑丈な基盤を一層強く固めた。「品質のエキスパート、ヴェス」――その実力の本質を、世間へ広く認識あれる日も近いだろう。