クロノス株式会社

勤怠管理ソリューションをトータルに提供している、クロノス株式会社。同社の主要製品は、次の通りだ。

●勤怠管理システム『クロノスPerformance』
同社の勤怠管理システムの歴史は、1987年にリリースした『たんぽぽ』にさかのぼる（2009年に後継製品の『就業管理クロノス』、2017年に同じく『クロノスPerformance』をリリース）。長期間にわたって多種多様な機能を開発、整備してきた。パッケージ製品は基本的にカスタマイズができないが、本製品は通常はオプションとなるカスタム性の高い機能も標準搭載し、あらゆるニーズにそれぞれの設定で対応することができる。このため、特に多様な職種の従業員を擁する企業は割安で使うことが可能だ。また、国内の勤怠管理システムで初めて、残業抑止のためのアラート機能や勤務間インターバル制度対応機能を搭載した先進性を誇る。ユーザー数は、『たんぽぽ』から総じて1万3,000社超・300万人以上。
SaaSの『クロノスPerformanceクラウド』もある。

●申請・承認クラウド『X 'sion』（クロッシオン）
打刻申請書類をペーパーレス化するグループウェア。スマートフォンのGPSを用いて、自宅や外出先でも打刻位置や労働時間を把握でき、ペーパーレスで勤務時間の申請・承認が可能。グループウェアとして、アンケートや回覧板、フォーラム等の機能で社内コミュニケーションの活性化にも繋げられる。会議室等の共有設備登録・予約機能も搭載。

●タイムレコーダー『テレタイム』シリーズ
豊富な打刻方法ニーズに合わせて運用できる製品をラインアップ。スマートフォン感覚で操作できる『テレタイムα』、シンプル操作で直感的に分かりやすい『テレタイムeZ』、デザイン性の高い丸いフォルムと打刻時の視認性が特長の『テレタイムC』、勤怠打刻と健康管理を併せて記録できる次世代型顔認証タイムレコーダーの『テレタイムFace』がある。
構内にスマートフォン持ち込み禁止の製造業や、セキュリティの点で外部のネットワークに接続できない医療機関等、タイムレコーダー専用機のニーズは根強い領域がある。実際、本製品のユーザーもこうした業界が多い。

以上の主要3製品を連携させることで、例えば朝の打刻時にランチタイムの弁当申請も行うといった使い方も可能。全従業員の勤怠管理業務の大幅な効率化・ペーパーレス化や、残業抑止等、社員の健康管理に繋げることができる“働き方改革”のコアツールだ。

同社の設立は、2011年5月。『たんぽぽ』や『就業管理クロノス』、『テレタイム』シリーズ等を展開していたエル・エス・アイ ジャパン株式会社の就業管理システム部門が、ピー・シー・エー株式会社に事業譲渡され、クロノス株式会社として設立された。「このM&Aで、それぞれの企業と当社はいずれも成長に繋げることができ、非常に良いM&Aであった」と代表取締役社長である大牧充氏は述懐する。

ピー・シー・エーは、人事管理や給与計算、財務会計、法定調書作成、固定資産管理、仕入管理といった独自の業務パッケージ／クラウド製品ベンダー。このM&Aで、そこになかった勤怠管理を加えた形だ。
「このため、当社の取扱製品ドメインは勤怠管理に特化してスタートしました。しかし、親会社のピー・シー・エーは基本的に当社の経営の独立性を尊重してくれるので、ピー・シー・エーが扱っていない領域の製品を今後、展開していくつもりです。そこで、新たに製品企画室を設置し、様々なプロダクトのPoC（概念検証）を始めています」と大牧氏は説明する。

現在、検討の俎上にあるのは、ブロックチェーンを活用した認証システム等。また、既存ユーザーに追加機能を提供するといったビジネスモデルだけでなく、リカーリング等の新たなモデルも検討している。
「このため、こういった新たなソリューション開発に関われる人材も求めていきたいと考えています」（大牧氏）。

同社のVisionは、同社設立時に社長を務めた現会長の濱田淨史氏が策定した「ソフトウェアとハードウェアの融合をベースに明るい労働環境の創出で社会に貢献」である。これについて、大牧氏は次のように話す。
「グローバルにおいて、日本のハードウェアメーカーの地位は相対的に下がってきている現状があります。そうした中で、ハードウェアメーカーの一員として今後もものづくりに力を注ぎ続け、少しでも復活に貢献していきたい思いは変わりません。ソフトウェアとの融合を図り、優れたソリューションとして提供するビジョンも不変です。一方で、クラウドの進展と共に新たな成長領域を追求していく必要性もあり、今後はクラウド領域を一つの基軸としてソリューション展開を図っていく方針です」

勤怠管理ソリューションは、人が働いている、あらゆる業種・業態の企業や組織で使われるもの。もちろん、同社においても全社員が自社プロダクトを日々、活用している。ここに同社の企業風土の大きな特徴がある。
「どんな製品でも、使っていて良し悪しを感じるものです。当社では、全員がユーザーとして毎日使い、試して『この機能はおかしい』とか『どうすればもっと使いやすくなるか』と考え、意見を出し合っています。営業担当者は、自信が持てない製品をお客様に売りたくないでしょう。カスタマーサポートも、良くない自社製品のクレームを聞くのはつらいと思います。その点、当社では全員が製品を良くすることに貢献でき、自信を持って世の中に出すことができます。そんなポジティブな風土をつくっていきます」（大牧氏）。

しかしながら、コロナ禍で同社もリモートワーク体制を取らざるを得なくなり、数年間はコミュニケーションが取りづらい環境に。そこで、“出社したくなるオフィス”づくりに着手する。
現在、東京の本社は秋葉原駅前のビルの1フロアの3分の2を賃借しているが、同じビルの別のフロアが空くことになり、同社が移ることを決定した。3分の1の増床分を加えて、営業と開発が入り混じるフリーアドレスに一新する。電話対応を行うカスタマーサポートは固定のスペースとなるが、その一角とフリーアドレスの間にコーヒー等を飲みながらコミュニケーションが取れるミックスゾーンを設ける。そこで、あらゆる職種のメンバーによる偶発的なコミュニケーションを促進するという狙いだ。
「営業担当者が提案に悩んでいたり、カスタマーサポートが問い合わせ内容を抱え込んでいたりといった時に、そんな悩みを他のメンバーに話して早い解決に繋げるといったアクションを生んでいきたいと思っています」と大牧氏は意気込む。

加えて、同好会活動にも力を入れる。現在、「e-スポーツ部」と「ゴルフ部」がある。「e-スポーツ部」は社員の半数に当たる約60名が参加。そのうち40名程度が参加してトーナメント大会を行った。
「e-スポーツのいいところは、リモート環境からでもネットで参加できること。会議室に20人くらい集まって大モニターで盛り上がると共に、オンライン参加のメンバーも含めて一体感を楽しみました。その後、シャイな開発担当者が営業や管理部門のメンバーを誘って飲みに行く等、社内融合の機会になっていますね」と大牧氏は目を細める。

一方、「ゴルフ部」は販売代理店等、社外の取引先との絶好なコミュニケーション機会に活用。「そこから新規事業のタネに繋がる等、早速効用が表れている」と大牧氏。

人材育成の観点では、製品の使い方の知見が最も蓄積しているカスタマーサポートでの営業職研修や、保守業務のしやすさを考えてソースコードをきれいに書くトレーニングといったプログラムを計画。実務力向上に繋げていく。
「自社製品にプライドを持ち、『もっとこうすべき』と意見を言う改善意欲や向上心、周囲と協力しつつ、一つの製品をつくり上げるマインドの持ち主に加わっていただきたいと願っています」と、大牧氏は求める人材に期待を寄せる。