クラフトバンク株式会社

クラフトバンク株式会社（以下同社）は、建設業のDXに挑んでいるスタートアップである。

住宅・商業ビル・道路・橋梁等、社会インフラを支えるものづくりを担う建設業は、安全で快適な暮らしを維持する基幹産業として日本の発展を支えてきた。その建設業は巨大な産業かつ歴史が長いが故に多くの課題を抱えている。

まずは工事現場の人材不足。これまで日本の建設を支えてきた職人の高齢化が要因となり、1997年には460万人だった職人が2020年には320万人に。若い職人が増えていないこともあって、全ての建設需要を支えるだけの人材の受け皿がないという。

職人が減り続けている中で人材不足の問題をカバーする唯一の手段は、職人一人ひとりの生産性をアップさせることだ。それにもかかわらず、今もなお多くの工事現場には知り合いベースでの受発注や、ペーパーやFAX中心のアナログな業務管理やコミュニケーションが根付いている。このやり方だと労働時間が長くなってしまい、人材が外部に流出する、若い人材が建設業界に入ってこないなど、今の人材不足の引き金になっている。

2021年4月に内装工事会社からスピンアウトして誕生した同社は、工事会社として建設業が抱える課題を肌で体感してきた経験を生かし、建設テックのスタートアップとして業界の未来に立ち向かおうとしている。ITと人の力で工事現場の生産性を底上げし、ものづくりを支える職人がイキイキと専門性を発揮できる世界、職業として安心して続けられる世界をつくる。そして、世界に誇れる日本の職人技術を未来に繋げ、建設業界の仕事を子供達が憧れるものにする。根底にあるのは工事会社のDNAを持つ会社ならではの建設業への想いだ。

実は同社、内装工事会社の時代から、主要事業の請負工事と並行して社内のデジタル化に取り組んできて、結果的に売上・利益を大幅にアップさせた実績がある。つまりこれから建設業に向けてやろうとしていることを業界内の工事会社として自ら先立って実現したのである。

同社が運営する建設工事のマッチングサービス『CraftBank（クラフトバンク）』は、「発注先を探す元請企業」と「案件を探す工事会社」を繋げる受発注プラットフォームだ。建設業界ではオンラインでPR・集客する商習慣が定着しておらず、中小企業に至っては自社HPすら持たないケースも多い。探す手段がないため、元請企業と工事会社の出会いの機会を損失しているのだ。そんな状況の中、同社は内装工事会社として培ってきた知見をフル活用し、全国2万7,000以上（日本全国の工事会社の約10%）の工事会社ごとに100項目以上のデータを蓄積しマッチング率の向上を目指してきた。

建設工事に関する豊富なデータベースを蓄積してきた同社が次に見据えているのは、工事会社向け業務支援SaaS事業の拡大だ。先にも触れたように、アナログな業務管理は職人の労働時間を圧迫している。同社調べによると、ある工事会社の職人は1日の35%近くが営業・調整・事務作業といった付帯業務に時間を奪われているという。同社はこの課題に真正面からアプローチし、生産性向上と収益構造の改善に寄与する業務支援SaaSの提供を強化する計画だ。

とはいっても、何十年も同じやり方を続けてきた工事会社にITを浸透させるのは容易なことではない。ブルーオーシャンな市場であると同時に、この上なく高難易度なミッションだともいえる。その点、工事会社からスタートしている同社は、工事現場への深い理解がある。例えばWebで受発注プラットフォームを運営しながら、元請・協力会社の出会いを橋渡しするオフラインイベント『職人酒場』を開催。そこで元請けと工事会社を繋ぎ、さらに建設業と同社の信頼関係も深める。これも職人の心を理解している同社ならではの芸当だといえる。

業務支援SaaS事業が立ち上げ期から本格的な拡大期を迎えている今、同社は共に事業を成長させる人材の採用を強化している。採用・人事担当の岩本光博氏は、期待する人物像について次のように述べる。

「レガシーで巨大な産業に変革を与えることに面白さや社会的な意義を感じてもらえるなら、業界経験はなくてもいいと思います。ただ当社はスピード感溢れるスタートアップなので、どんな職域であっても入社後は新しい学びの連続になるはず。自分の強みを生かしつつも、さらに今よりも成長したいと思われる方はぜひ話を聞きに来てほしいです！！」（岩本氏）。

個々の裁量が大きく、積極的な行動が求められる同社。向上意欲溢れる人にとって、圧倒的に成長できる環境がある。また役職をつくらずにPJリーダー制を敷く等、全社員がフラットな組織で事業を運営しているため、意見・アイデアの交換も活発だ。評価は年齢・社歴関係なく成果に応じて正当に評価。Qに1度評価の見直しを行っており、個々の成果に対してスピーディーに報酬反映しているとのこと。

「当社は年功序列・社歴偏重のカルチャーが一切ありません。入社1年目の社員であっても、“やってみたいならやってみる？”くらいの感覚で様々なことにチャレンジできます。例えば英語が話せ、グローバルに活躍したいと考えているメンバーに対し海外投資家にプレゼンをする機会を提供したり、地方を拠点にしているメンバーが地元の利を活かし、地方銀行との交渉に携わったりするケースもあります。とにかく本人のwill次第で新しいことにチャレンジできる会社です。」（岩本氏）。

さらには社内DXに取り組んできた結果、自由度が高い働き方も確立している。フルリモート&フルフレックス制を導入し、現在は多様な地域・家庭環境・働き方の人材が活躍する組織となった。男女問わず、全メンバーが育児休暇を取得し、全メンバーの半数が小学生未満の子育てをしながら仕事と両立しているという。

「月1回の事業共有会以外は、各々が業務効率を考え自由に好きな場所で働いています。今では宮崎、福岡、愛媛、愛知等、日本各地でメンバーが活躍しています。対面コミュニケーションが少ない分、取りたい情報を必要な時にいつでも誰でも取ることができる環境を作ることを意識しています。ここまで自由だと入社時ちょっと驚かれることもありますが、時間と場所にとらわれない働き方は続けたいと思っております」（岩本氏）。

同社のプロダクト事業には、建設・IT・コンサル出身など多彩な人材が参画している。優秀なエンジニア・UI/UXデザイナーも数多く在籍していることから、自分にない強みを持った人間から刺激と新しい気付きを得られる環境だ。

世界一、魅力的な業界にする。難易度は高いが社会的意義の大きい事業を加速させるフェーズに入った。あとは会社と成長を共にできる新しい仲間のジョインを待つのみだ。