株式会社グレッジ

株式会社グレッジは、「外国人雇用DXを通してウェルビーイング向上に貢献する」というVISIONを掲げ、プロダクトとして外国人材管理システム『dekisugi』を提供しているスタートアップだ。

『dekisugi』は、外国人技能実習制度および特定技能による外国人労働者の監理団体・登録支援機関向け管理ツール。外国人材の採用から入国準備、就労後の支援まで一連のプロセスにおける業務管理や書類作成等を一元管理し、業務効率化を図る外国人材管理システムの決定版である。
少子高齢化が進展し、労働力不足が深刻化する一方の日本経済にあって、外国人材の雇用が重要な対策と位置付けられ、外国人技能実習制度や特定技能といった国策が導入されている。こうした施策を運営する主体となっているのが、日本での就労を希望する外国人材と、外国人材の雇用を希望する国内企業を繋ぐ役割を担う、外国人労働者の監理団体や登録支援機関。ところが、外国人採用のために必要な書類は一人当たり約40枚にも及ぶことに加え、スケジュールや人材データ、日本語レベルの管理等、業務量は膨大に。これらをExcelで行っていることで、非効率かつミスの多発を招いている。さらに、支援機関は最重要の本来業務である外国人材の支援に十分な時間を割けないという問題があるのだ。

こうした状況に対し、データを一元管理できる『dekisugi』により書類作成時間を50～70%削減するDXを実現。これが評価され、2017年11月のリリース後、2023年3月時点で導入実績1,000団体を突破した。当該団体は国内に約1万2,000団体ある中、トップシェアを達成している。なお、『dekisugi』導入団体が関わる受入企業数は約2万5,000社、登録外国人数は約12万人に及ぶ。
「外販されている当該システムとしては、3プロダクトほどがリリースされていますが、外国人技能実習制度と特定技能を跨ぐことができ、必要な全書類をカバーしているのは『dekisugi』が唯一の存在です」と、代表取締役CEOの眞野篤師氏は胸を張る。

なお、『dekisugi』は“バーティカルSaaS”としてシリーズ化させ、2023年6月に外国人材向けに携帯SIMカードの販売やライフライン面のサポート等を行うアプリ『dekisugiLife』をリリース。外国人材が日本での新生活を快適に送ることを支援する。さらに、受入企業向けおよび送出機関向け人材管理・ファイル共有ツールをそれぞれ2024年3月までにリリースさせる予定だ。『dekisugi』シリーズを通して“バーティカルプラットフォーム“の構築を目指す。

同社創業の経緯は、次のとおり。

眞野氏は、通信キャリアの代理店ビジネスを手掛ける傍ら、国際支援NGOに参加しボランティア活動を行っていた。そのNGOではベトナムで日本語の指導を手掛けていたが、眞野氏はNGO代表の意向を受け、優秀なベトナム人を、人材不足に悩む日本企業に対して技能実習生として紹介するビジネスに踏み出す。
「しかしながら、当時の外国人技能実習制度には様々な問題点がありました。すると、2016年11月に外国人の技能実習の適正な実施や技能実習生の保護を図るための技能実習法が施行されたのですが、新法により支援機関では相当数の書類作成が必要となったのです。そこで、自らが直接人材紹介を手掛けるのではなく、書類作成業務を効率化するシステムをつくり、広く関係団体の支援を通じて、本来自分が実現させたかった外国人材が日本で輝く環境づくりに繋げようと思い立ちました」（眞野氏）。

当初は、自らが経営する通信キャリア代理店の新規事業として手掛け、2017年11月に技能実習生管理ツール『できすぎくん』をリリースする。2018年に「特定技能」が新設され、2019年4月から受入可能となるのに合わせ、特定技能管理ツール『できすぎくん』もリリース。これらが顧客に順調に受け入れられると、2020年3月に当該事業部門をスピンアウトさせ、同社を設立。その後、技能実習生管理と特定技能管理を合体して『dekisugi』にバージョンアップし、現在は“バーティカルプラットフォーム”として発展させる為にマルチプロダクト化をはかっている段階にある。

そして、同社は2026年3月まで毎年136%の成長を続け、2026年度の売上高40億円を達成するとともにIPOを行い、その資金を活用してグローバル展開を図る計画を進めている。
「外国人材はダイバーシティ（D）の一要素であり、差別のないインクルージョン（I）の実現による採用企業への定着が問われることになります。そこで、企業に向けてAIを用いてD&I状況を数値化するプロダクトを開発・提供し、真のD&I環境づくりに貢献するサービスをもって、グローバル展開を図ることを目論んでいます」と眞野氏は力を込める。

同社が掲げるVISION、MISSIONは次のとおりだ。
●VISION：魅力ある国ニッポンで輝く笑顔をつくる
●MISSION：外国人雇用DXを通してウェルビーイング向上に貢献する

同社の事業計画は、このVISION・MISSIONを忠実に追求していると言えるだろう。

2023年6月現在、同社の社員数は35名、平均年齢34歳、男女比7：3という組織だ。
そのマネジメントポリシーは、“自己実現の輝く笑顔を作り、縁ある人の物心両面の幸福の追求を行う”とのMISSIONを実現させるべく、“リードマネジメント”の手法を基軸に行われている。
“リードマネジメント”とは、「全ての行動は自らの選択である」と考える心理学の「選択理論」に基づき、職場での支援的人間関係を核に、従業員がその内発的動機に従って組織づくりや事業運営に取り組むアプローチを指す。人事考課において、毎年社員の誰もが参加できる「人事考課委員会」を設け、その方法を決めているのが象徴的と言えるだろう。
「自分がどう評価されたいのかを自ら決められる制度で、毎年全社員にアンケートを取って意見を集め、委員会で決めています」（眞野氏）。

なお、現状の人事考課制度は、次のとおりだ。
①成長達成ポイント+②プロセスポイント+③クレドポイント+④プロジェクト加点
上記4項目による評価を年2回行う。
メンバーの目標は、月1回の部署長との1to1を通じて設定し、①目標達成率、②目標達成までのプロセス、③自他評価によるクレド達成率、④社内プロジェクトへの参加による加点で総合評価する。
なお、クレドは「素直」「情熱」「責任」「達成」「協力」「至誠」「利他」「成長」「スピード」「プロフェッショナル」の10項目で、社員が誰でも参加できる「クレド委員会」が360度評価的な他者評価を行っている。

組織づくりにおいては、目的に向けて効果的に行動するために、組織としての意識と能力を継続的に高め、伸ばし続ける「学習する組織〜The Fifth Discipline〜」を理想とし、「徳と才を兼ね備えた自律型価値創造人材」を理想的人物像に掲げている。
こうした人材を目指すべく、「マインドセット」「ナレッジセット」「スキルセット」を身に付けステップアップするためのリードマネジメント研修やフレームワーク研修（e-ラーニング、体験型外部研修）、プロジェクト参加等の研修制度を設けている。

働く環境づくりにおいても、メンバーの声を反映。現在では、年間休日130日やキャリアアップ支援制度や資格取得支援制度等の各種手当、創業祭や感謝祭等の社内イベントを運営している。
「こうした人材育成や環境づくりのベースにも、“自己実現の輝く笑顔を作り、縁ある人の物心両面の幸福の追求を行う”とのMISSIONがあるのは言うまでもありません」と眞野氏は強調する。

そんな同社が求める人材像について、眞野氏は次のように話す。
「クレドの1番目にある“素直”であること。これが全てのベースとなる資質であると思います」
外国人材の活用を通じて日本経済に貢献するだけでなく、グローバルなダイバーシティ・インクルージョンの推進による貢献を目指す同社の業務は、大きなやりがいを得られるに違いないだろう。