株式会社キャッチアップ

福岡市にある株式会社キャッチアップは、ユニークなビジネスモデルで顧客に価値提供をしているシステム開発会社。“一緒に「できる」を創り出す”という企業理念の下、クライアントのニーズに沿った開発を提供している。

新規システム開発から既存システムの改修まで、都度、見積書を作成して開発するスタイルだけでなく、同社がクライアントのシステム部門の役割を担う「パートナー型システム開発」や、新規事業の開発等、要件定義が決まらず開発委託契約が難しい場合に、 準委任契約としてエンジニアやディレクターのノウハウと時間を提供する「ラボ型システム開発」と、クライアントのニーズに柔軟な対応を行っている。

CakePHPやLaravel、Flutter/Dart、Sassや タスクランナー等のフレームワークやパッケージを積極的に活用するほか、Adaloや Bubbleといったプログラミング不要のツールを使ったノーコード開発で開発工数を格段に抑えたWebシステムの構築も手掛けている。

「キャッチアップは、全ての人に公平なチャンスをもたらす“インターネット”を通じて、何かを成し得たいという熱量を持つ人に、チームで一緒に考えて“できる”という体験を提供する会社です。予算が乏しい企業でもオープンソースのアーキテクチャを活用するなど、効率的な開発で可能な限り“できる”を提供したいと考えています」（代表取締役・江頭竜二氏）。

そして、同社ではCMSを活用したWebサイト開発を手掛けている。WordPress、MovableType、SHIRASAGI、baserCMS等、数あるCMSの中から最適なCMSを選定し、導入支援やメンテナンスを提供している。

実は、baserCMSというオープンソースのCMSは、同社代表の江頭氏が中心となって開発したものなのだ。

「フリーランスのエンジニアをしている時にbaserCMSを独自に開発し、それをオープンソースとしてリリースしました。2009年から開発が始まり、有志が集まって開発が進み、現在までに35万ダウンロードの実績がある純国産のCMSに育ちました。日本人が日本人のために、みんなで作っているオープンソース・ソフトウェアです」（江頭氏）。

baserCMSは、オープンソース・フレームワーク「CakePHP」をベースとしており、カスタマイズ性、メンテナンス性が高いのが特徴。直感的な操作と高いメンテナンス性を実現し、Webサイトを自由にカスタマイズできる。キャッチアップのビジネスがユニークなのは、CMSを販売するのではなく、導入支援やメンテナンスでマネタイズしている点だ。

「baserCMSのベースは私が開発したものですが、オープンソースとして皆で育てたものです。キャッチアップは、baserCMSを使ったWebサイト構築を得意とするシステム会社として活動しています。baserCMSの開発元としてのノウハウを生かした受託開発を基本としており、baserCMSの開発では収益を得ていません」（江頭氏）。

自らベースを開発したCMS「baserCMS」を活用したWebサイト構築をはじめ、得意のバックエンド開発などでクライアントに価値提供をしている同社。現在、自社開発のサービスを新たに展開中。社内の情報共有ツール『onemind』だ。

登録したマニュアルや申請書を素早く探せるツールで、PC、スマホ、タブレットからいつでもどこでもアクセス可能だから、誰でも簡単に情報を更新でき、社内に向けてオープンな情報発信が実現する。

「社内情報の共有は、フロー型とストック型に分類できます。チャットなどのツールといった社内コミュニケーションツールを使った共有は、フロー型。一方、社内規定やマニュアル、就業規則といった情報を共有するのがストック型。当社が開発したonemeindはストック型の社内情報共通ツールです」（江頭氏）。

情報が更新されるとメールやLINEなどで全社員にリアルタイムで通知。既読人数を把握できるので情報がしっかりと伝わっているかを確認できる。サンクスポイント機能で感謝のメッセージを送り合うことで、閲覧が促進され、社員エンゲージメントが向上する。

「情報共有することで、コミュニケーションが促進され、社員の離職を防ぎ、効率的な情報共有で生産性が向上します。元々、自社で情報共有ツールを必要とする背景があって開発したツールです。当社クライアントからのニーズがあって、中小企業向けに低価格で提供しています」（江頭氏）。

社員数に関わらず費用は月額固定。経費を抑えつつ、効率的な情報共有が実現できるので、コストパフォーマンスに優れている。

「『onemind』はオープンソースではありませんが、価格を抑えることで予算に限りがある中小企業でも活用できるようにしています。資金のある・なしに関係なく、当社のビジョンでもある“できる”を提供したいと考えており、コストを抑えてツールを導入できるようにしています。オープンソースの活用も同じですが、全ての企業や人が、 “お金がない”を理由にチャンスが奪われない社会にしたいという想いが、私の根底に流れています」（江頭氏）。

次なる展開として、baserCMSのSaaS版も考えている同社。末永く“できる”を提供する企業になるため、安定した収益基盤も構築していく。

「“お金がない”を理由にチャンスが奪われない社会にしたいという想いがあっても、社員の生活を守るためにしっかりと収益を稼げる企業運営も、経営者としての役割です。baserCMSのSaaS版で提供することで、『onemind』と同じくストック型のビジネスモデルとして収益を積み重ねる会社にしていく計画です」（江頭氏）。

2007年に創業し、2012年に法人化した同社。代表の江頭氏を中心に企業理念に共感したメンバーが集まる少数精鋭の集団が形成された。社員数は25名（2023年12月時点）。次なるステージへ向かうにあたって、エンジニアの増員を積極的に進めている。

「社員の自主性を重んじる会社です。のびのびと働いてほしいという想いから、社員にはあまり物事を強制しません。自分であれこれ考えて、時には失敗しながら成長していけるような組織。長年かけて醸成した企業カルチャーのおかげで自走するメンバーが集まる会社になりました。今後もこのカルチャーは守り続けたいと考えています」（江頭氏）。

ボトムアップ型の組織を作るために「木曜会」と呼ぶ会議を法人設立以来、10年以上続けている。社員が自分たちの働く会社を皆で作っていくために、それぞれの意見や考え方をアウトプットする機会としている。

「福利厚生に関してもスピーディーに制度化する会社です。参加は強制しませんが、いつでも誰でも参加できる木曜会で、自分の意見やアイデアを会社、並びに他のメンバーに提案できる機会を設けています。新しく入社する人にも、積極的にアイデアを出してほしいと願っています」（江頭氏）。

働き方は、裁量労働制を採用し、リモートワークもOK。柔軟な働き方には定評のある企業で、経済産業省が認定する「健康経営優良法人 2023」を取得し、全国健康保険協会福岡支部が認定する「健康づくり優良事業所 ゴールド 2023-2024」にも認定されている。

「柔軟な働き方を実践するために裁量労働制を導入しています。家庭の事情で就業時間中に抜けなければいけない人もいますが、裁量労働制にすることで各自働き方を自由にデザインできます。リモートワークはコロナ禍前から導入しており、リモートでの社員コミュニケーションもノウハウがあるのでスムーズです」（江頭氏）。

オープンソースの開発元だけあり、経営に関する情報もオープン。フリーアドレス、カフェワークなど多様な働き方を実践し、働きやすさと働き甲斐を追求する。それがキャッチアップという会社だ。

「働きやすさと働き甲斐を追求するために、福利厚生の充実、企業理念の再構築、人事評価制度の再設計等、ボトムアップで会社を作り上げてきました。会社の次のステップを作るために新しい人材を求めています。今後もさらなる情報のオープン化と自走組織化を推進します。一緒に働きやすさと働き甲斐を追求していきましょう！」（江頭氏）。