株式会社インフィニットループ

株式会社インフィニットループのメイン事業は、売上の8割ほどを占めているゲーム開発だ。特に、PHPとMySQLを使ったサーバサイドの開発を得意としており、高負荷大量アクセスに耐え得るシステムの構築力に定評がある。
「日本のゲーム業界においては、サーバサイドにしっかりと取り組んでいる会社がかなり少ないように思います。そのためなのか、当社はサーバサイドのシステム構築に豊富な実績があることで、お客様から声をかけていただくケースが多いですね」（代表取締役会長・松井健太郎氏）。

同社は設立後、しばらくは業務系Webシステムのサーバサイドの開発をメイン事業としており、ゲーム開発には全く関わっていなかった。ゲーム領域へ進出するきっかけとなったのは、PHPによる開発に長けた会社を探していたゲーム開発会社から声がかかったことだった。「ゲームは好きだし、一度くらいゲームをつくってもいいかな」と気軽に引き受けたタイトルが、『ブラウザ三国志』で、累計登録者数が数百万人規模というヒット作に。それ以降、ゲーム開発の依頼が数多く来るようになった。その中にはスクウェア・エニックスをはじめ大手も含まれていて、現在ではメインクライアントとなっている。
「スクウェア・エニックスさんとのお付き合いは、もう13～14年になりますかね。認知度が非常に高い会社の新作開発に携わる分、ユーザーの期待値の高さ等、プレッシャーに感じる部分はあります。でも、その分ユーザーからの反応が早く、大量に頂けるという面白味も。業務系システム開発をしていた頃は、自分達がつくったものに対する評価や意見、要望を耳にする機会があまりなかったため、反応を確かめられることがやりがいになっています。ユーザーが『アップデート、キター』なんて、X（旧Twitter）でつぶやいているのを目にするのは、嬉しいものです」（松井氏）。

ゲーム開発のニーズは底堅く、市場も安定している。10数年にわたって実績を積み重ねてきた同社は引き合いも多く、「1年先、2年先まで開発ラインが埋まっている状況」と松井氏。そして、この強固な事業基盤で得た利益を新規事業へ投資するのが、同社の成長戦略だ。

誰でも簡単にバーチャルキャラクターになれるVRライブ・コミュニケーションサービス『バーチャルキャスト』は、同社から生まれたものだ。VRゴーグルが世に出始める少し前、開発用のプロトタイプの存在を知った社員が会社で購入してくれないかと頼んできたのがはじまりだった。数十万円という高価なものだったが購入し、興味を持った社員数名が部活動の一環としていじっていたそうだ。そんなある日、「面白いものができた」と持ってきたのが、『バーチャルキャスト』の原型だった。

「これはサービス化できそうだと思ったのでその社員を通常業務から外して、新規開発に集中してもらい、1年ほどでできたのが『バーチャルキャスト』です。ただ、当社は開発会社であって、マーケティングやサービス展開等は得意ではありません。そこで、ドワンゴさんに話を持って行ったところ、創業者の川上（量生）さんから一緒にやろう、と。それで、合弁で株式会社バーチャルキャストを設立、現在も開発に携わっています」（松井氏）。

同社の社是は、「最先端の最後尾を独走する」だ。そこには、「常に新しい技術と向き合い、探究を続け、技術力を向上していくこと」で「インパクトのある製品やサービスを世の中に送り出す」という強い思いが込められている。
「最先端の最先端を走るのは、Google等GAFAMに代表される巨大企業やMIT（マサチューセッツ工科大学）等から誕生する気鋭のベンチャーなのでしょう。しかし、地方の小さな企業であっても最先端の技術を扱うことはできます。先端技術を探究し、我々ならではのアイデアやエッセンスを加えることで、最先端の最先端を走る人達にも思い付かないユニークな最先端を実現できるんです。『バーチャルキャスト』も、そんな風土から生まれたものだと思います」（松井氏）。

この社是が根付いている同社では、新しい技術に取り組む姿勢が強く、新規プロダクトが複数誕生している。例えば、『AutoVR』もその一つだ。これは、最先端のVR技術とデータ活用を融合して、車の購入を検討している人がVR空間上で自動車の内装・外装、ボディーカラー、オプションの装着イメージを、目の前に実車があるかのように体験できる。その他、2024年中のリリースに向けて、生成AI技術を活用したプロダクト等、複数の開発プロジェクトが進行中だ。

「モノづくりが好きなメンバーが集まっているだけでなく、『バーチャルキャスト』という前例があるためか、暇な時間にこっそりつくる文化があります。会社としても、新しいことへ挑戦する雰囲気は大切にしているので、技術が好きで、新しいプロダクトを生み出したいと思う人には、楽しめる環境だと思いますよ」（松井氏）。

同社は札幌と仙台に拠点を置く、社員百数十名の会社だ。創業者である松井氏はフリーランスのエンジニアとして地元・札幌で活動を始め、2007年に法人化し、同社を設立した。その後、順調に社員数は増えていき、ゲーム事業に進出してからは事業規模も大きくなっている。ここまで東京へ本格的に進出することなく、地方に拠点を置いたまま現在に至っているのだが、そこには地元に対する強い思いがあるという。

「地元が好きで地元に残って働きたいと思っている人は結構います。でも、いい働き口がなく、仕方なく東京へ出ていくケースが少なくありません。そういう人達のために、当社を地元でもしっかり働けると思える会社にしていきたい。地元の人材が地元で活躍することで地域に貢献したいと思っています。そのため、地域のイベントに参加したり、イベントを主催したりすることもあります」（松井氏）。

同社は、事業基盤が安定していて地域にしっかりと貢献している企業であり、「東京に負けない給与水準」等、福利厚生面にも力を入れていることから、地元の大学を卒業した優秀な人材が集まっている。このような背景からも、「地元が好きな人、地元で働きたい人にぜひ来てほしい」と松井氏は語る。
「結婚・出産を経て、地元の北海道で子供を育てたい等、事情は何でも構いません。Uターンだけでなく、北海道や仙台が好きであれば、Iターンも歓迎です。ITは場所に関係なく技術を探究することができますので、技術が好きな仲間達と一緒にやりがいのある仕事をしましょう」

『バーチャルキャスト』のところでも触れたが、同社では部活動が盛んに行われている。同じ趣味嗜好の仲間同士であれば、会話も弾むし、楽しい時間を共有することができる。そういったメンバー同士の距離の近さが、仕事をする時も生かされている。分からないことがあれば、すぐに相談できるし、ちょっとした雑談で気分転換ができたり、思いもよらなかったアイデアが浮かんだりすることもある。様々な勉強会が盛んに行われているのも、社員同士の距離が近いことのいいところだろう。

「社員同士で情報を共有したり、教え合ったりする文化があるので、ゲーム開発の経験がなくても心配する必要はありません。当社自体が、業務系システム開発をベースにゲーム開発に進出したという経緯があるので、どう学んでいけばいいかを理解しています。それに、業務系で培った技術やスキルはゲーム開発でも生きてきます。例えば、金融系システム開発経験があれば、課金システム開発で力を発揮してほしい。だから、地元が好きで、技術が好きで、ゲーム開発、新規プロダクト開発に関心があるなら、一度話をしましょう」（松井氏）。