株式会社ソースメイカー

株式会社ソースメイカーは「テクノロジーを料理する」をミッションに掲げ、ITでビジネス課題を解決する会社だ。ビジネス戦略や事業計画の構築からサービスの開発・運用までを一気通貫で手掛ける。代表取締役・CEOを務める横澤佑輔氏は「採用の説明の際には、アクセンチュアみたいな会社と言っています」と少々照れ気味に言うが、実際その通り。開発後、KPI検証を経て結果を出すところまで併走し、その後、サービス拡大やフェーズの進行に伴うブラッシュアップまで担うケースも少なくない。

ここまでやる・できるのは、横澤氏の経歴や起業時の課題感に寄るところが大きい。横澤氏は、企業のSI部門でのクライアント企業向けシステムコンサルティング業務、転職した別の企業のウェブサービス部門の開発マネージャーを経て、不動産テックスタートアップでCTOを務めた経歴を持つ。企業でのウェブサービス開発時は半ば社内受託のように、部門から上がってくる様々なtoCのサービスを次々と形にした。スタートアップ企業では自社サービスにじっくり向き合い、toBもtoCも手掛けた。「受託も自社サービスも、IT業界における全パターンを経験して、どこに行ってもITのものづくりは難しいと感じました」と横澤氏。

せっかくつくったサービスが様々な理由で思い描いていた価値を発揮できない。様々なパターンでそのような課題が繰り返し発生しており、開発段階だけではなく計画段階、そして運用段階まで関わらなければ解決できないと感じたのだ。だから、ソースメイカーがやっていることは、広義には「受託開発」かもしれないが、仕様通りにつくるような仕事とはまったくの別物だ。事業立上げに近いだろう。アクセンチュアと自称する所以だ。コンサルティングもUXデザインもKPI検証もやる。

案件の業界は多種多様だ。上場企業のPoC的な案件や変化の激しいスタートアップ企業の案件に携わることが多い。フットワーク軽く、スピーディーに計画、開発、実証、改善と一気通貫に対応できる企業はそう多くない。それこそ大手コンサルティング会社に頼むと予算は億単位になってしまう。ソースメイカーへの相談や依頼が絶えないわけだ。

この戦略、計画から運用、改善までの一連のサービスを、ソースメイカーは「Source Make Service」と名付けている。特徴は、デザイン志向の方法論に基づき、ユーザーニーズの探索を繰り返しながら真に求められるソリューションを提供すること。同社が誇る優秀なプロジェクトマネージャー（PdM）がプロジェクトを率い、ヒアリングやときには実際に事業そのものを体験することで、クライアントの事業、課題を深掘りした上で、クライアントのパートナーとして一連の工程を推進していく。

事例の一つを紹介する。ホテルや商業施設など大型施設の清掃管理をデジタル化するSaaS＆モバイルアプリだ。スタートアップのとある企業が展開するサービスで、エンドユーザーは清掃会社と施設管理者となる。両者が共有して、現場の担当者の業務を可視化、合理化、効率化するツールだ。開発にあたり、ソースメイカーのメンバーは、実際にホテルの清掃業務を経験した。

「我々は、ホテルに泊まったことはあるし、清掃の方を見たこともありますが、業務フローを知っている人はいません。複雑で、クライアント様から渡された資料ではわかりません。そこでユーザーリサーチとして、実際にホテルでシーツを替えたりして、業務設計をしました。それをやることで、盛大な思い違いを防ぐことができます」と横澤氏。このようにして課題やポイントを抽出した上で事業を計画し、最適なUXデザイン、必要な要件などを形にしていく。同社の仕事は、このようなスタイルで進めていく。まさに「ものづくり」だ。

営業担当者はいない。創業以来、一貫して案件は全て紹介による。実績が実績を呼ぶ形で広まるとともに、不動産テックスタートアップのCTO時代から続く、ベンチャー各社のCTOたちとの交流の中で相談を受けるケースが多い。このように方々から頼りにされ、売上、事業は拡大の一途だ。

また、数々の開発を行う中で、副産物的にバックエンドの開発を効率化するためのフレームワーク『broth』を独自に開発した。現在、これをOSSとして世界中に提供している。開発実績を重ねるごとに洗練され、また、世界中の利用者からのフィードバックも取り入れることでブラッシュアップしているところだ。いずれは自社のSaaS商品として展開する計画だ。

「『broth』は当初から、海外展開を視野に入れています。組織としては、受託開発事業を伸ばしながら、自社製品として展開する『broth』との両輪で成長を目指していきます」と横澤氏。
そのために新たな力が必要だ。今いるメンバーは、エンジニアとしての力量が高いのはもちろん、ビジネスに貢献すること、つまり数字に表れることの価値を理解し、追求するマインドを持っている。
「もちろん質、スピードが高い必要はありますが、ビジネス貢献こそ大事だと考えています。ときにはハズすこともありますが、需要者の求めることを理解し、プランB、プランCを示すことにやりがいを感じる人。そのような人たちが結果的に残っています」（横澤氏）。

これから入る人も、そこに魅力を感じてくれる人がよいだろう。また、同社の魅力のもう一つは、様々な業界の課題解決に関われること。
横澤氏は言う。「自分もそうですが、エンジニアは飽きっぽい。一つのサービスを10年抱えるのは厳しいなと感じる人も多いでしょう。そこにやりがいを感じる人もいますが、みんながみんなそうではありません」
だから、意欲あるエンジニアほど会社から会社へと渡り歩く。だがソースメイカーなら、一社にいながらいろいろな業界に関わり、サービスを立ち上げて軌道に乗せ、ゼロイチから十、百、場合によってはその先のスケールまで関わる。それを何度も経験できる。これほど面白いことはない。

横澤氏が個人としても、会社としても大事にしていること。それはビジョンに掲げる「世界から炎上を無くす」だ。
「炎上とは、せっかく苦労してつくったサービスに、クライアント様が満足せず、使われないこと。期待値のズレです。それを我々は炎上と呼びます」（横澤氏）。
だからこそビジネス設計、UX設計が大事であり、そこからしっかり関われるプロジェクトでないと手掛けない。「全プロジェクトを炎上させない。最終需要者とつくり手のギャップが広がらないようにする」と横澤氏。エンジニアとしての譲れない矜持でもある。

メンバーの5分の1は外国人。多様なメンバーがいて、共通するのはこのビジョンへの共感だ。日本語を話さないメンバーもいるので、自然と社内は英語も飛び交う。
「元々、エンジニアと英語は切り離せません。OSSの『broth』には、外国の方からもコメントが届きますし、プロジェクトによってはミーティングが英語設定になることもあります」（横澤氏）。
この英語環境に身を置きたくて、仲間になったメンバーもいる。

働き方は個人にお任せだ。お客様とのミーティングがあるため、必然的にデイタイムに働くことになるが、出退勤時間などの決まりはなく、コアタイム的なものもない。プロフェッショナルとして、お客様と丁寧なコミュニケーションを重ね、結果を出すのみだ。ちなみにオフィスの片隅には麻雀卓がある。仕事の合間に麻雀やゲームを楽しむゆるやかな交流も心地よい職場だ。