東京ガスiネット株式会社

東京ガスiネットは東京ガスの100％子会社。東京ガスグループのIT戦略全般を担い、コンサルティングから開発・運用に至るまで、東京ガスグループ内のシステム化を一手に引き受けている。

1987（昭和62）年7月に、東京ガスのIT部門が独立してできたSIerであり、1990年代は東京ガスグループ外のクライアントからの仕事も手掛けていた。東京ガスグループのIT化が加速するなか、グループ内部の仕事に集中することになり、現在はグループ内の仕事に特化している。

「約250の業務システムが東京ガスのLNGバリューチェーンを支えています。基幹システムの開発をはじめ、グループ内部の会社で使うシステムの開発、インフラの構築、あるいはメールシステム、チャット、オンライン会議システムといったOA環境やコミュニケーション環境の整備を手掛けています。近年はIoT、AI、データドリブンなどDX（デジタルトランスフォーメーション）の推進を担い、東京ガスと一緒になって、新しいIT環境を模索しています」（代表取締役社長執行役員・鴫谷あゆみ氏）

同社では東京ガスグループのシステムだけでなく、東京ガスのガス・電気の利用者向けのウェブ会員サービス「myTOKYOGAS」の制作・運用も手掛けている。myTOKYOGASは、ガスや電気の使用量や料金を確認したり、お役立ち情報やお得なキャンペーンを発信したり、ポイントをためそれを使って買い物や寄付ができたりする、東京ガスとユーザーをつなげるポータルサイトの役割を持っている。

「東京ガスが提供しているサービスをユーザーがどう思っているのか東京ガスの立場でマーケティングをする必要があります。東京ガスは電気の供給も開始するなど、総合エネルギー企業を目指し、エコシステムについて常に考えています。当社としては、データの観点から東京ガスの成長や目指す先に関する提案をしていきたいと考えています」（鴫谷氏）

東京ガスは、経営ビジョン「Compass2030」で、デジタル技術を積極的に活用した、新たなビジネスや付加価値の創出を目指すと掲げている。東京ガスiネットは、DI＆ITの視点で東京ガスグループ内のイノベーションに貢献していく。

「2017年に創立30周年を迎えた際、10年後の自分たちのありたい姿をビジョンとして制定するため、若手から中堅社員を中心としたワーキンググループをつくりました。そこで決まったのが、『はじめて』をカタチにする会社。という当社のビジョンです。東京ガスのサスティナブルな成長を支えるだけでなく、柔軟性とスピード感ある進化の実現、生産性向上による経営コストのスリム化の達成に向け、デジタルを活用した業務プロセス改革やシステムのモダナイズを徹底し、DXを通して東京ガスグループのさらなる発展に貢献していくという宣言です」（鴫谷氏）

東京ガスiネットは、前身である東京ガス情報システム部門の時代を含め、60年以上にも亘り東京ガスグループのシステムを支えてきた存在。技術への理解とチャレンジに定評がある。

例えば、東京ガスiネットのコア技術である地理情報システム「TUMSY」。1977年に、日本の民間企業初の地理情報システムとして誕生した東京ガスのシステムで、ホスト集中型のシステムとしてスタートし、テクノロジーの進化に合わせてクライアント・サーバ型、WEBサービス型へと変遷しながら、現在も東京ガスのインフラを支え続けている。

地震情報配信サービス「jishin.net」もIoTの先駆けといえる、東京ガスiネットの技術力がつくり上げたサービス。約4,000基の地震計（SIセンサー）から自動収集した地震データと全国の気象庁の震度データを組み合わせ、超高密度×広範囲のセンサーネットワークを構築し、自治体などの公共向けに地震データを情報配信する。

「ガス導管網を守るために東京ガスが設置した地震計からデータを収集し、それを地震情報としてメディアや自治体に提供しています。東京ガス供給エリアにおけるSIセンサーの設置は、1km四方で1基以上となっており、世界でも類を見ない密度の高さでのデータ収集を可能としています。高密度な情報を高速で配信できることが特徴のひとつであり、jishin.netの利用者は、気象庁が市町村単位での震度データを発表するよりも速く情報を受信することができます」（鴫谷氏）

『はじめて』をカタチにする会社。というビジョンが定まってから、更に技術へチャレンジする気風が高まった。各部で、新技術に取り組み、スマホ・地図・AI・VR・データ分析などの技術を組み合わせ、様々な挑戦が行われている。これらは、東京ガスのデジタル化に向けた取り組みとして、採用され実現したものも少なくない。

また東京ガスiネットでは、東京ガスのデジタル化施策に対して素早いITサービスを提供するために、アジャイル開発にも取り組んでいる。「問題を発見」し、それを「技術で解決」、そして「ユーザーに受け入れられるものをつくる」。エンジニアはこの3つのスキルを必要とされる。これらのスキルはスクラムやリーン開発などのアジャイル開発において要求されるスキルであり、逆にアジャイル開発経験から習得できる。

「デジタル技術は、ここ5年ぐらいで大きく変わりました。昔はしっかりとシステムをつくり上げて、それを10年以上使っていましたが、今はシステムやサービスの寿命が短くなり、スピーディな開発が不可欠。アジャイル開発も取り入れて、柔軟性とスピード感ある開発を進めています」（鴫谷氏）

東京ガスiネットは「社員が働きやすい」を大切にしている会社。従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する「健康経営」の取組が優良であると認められ、 経済産業省および日本健康会議が主催する「健康経営優良法人2022（大規模法人部門）」の一社に認定された。

「ビジョン『はじめて』をカタチにする会社。を全うするためには、社員が心身ともに健康で働ける環境をつくることが重要だと考えます。社員の働く活力を高め、健康で楽しく働き、一人ひとりが最大限のパフォーマンスを発揮できる職場づくりに向けて、これからも取り組んでいきます」（鴫谷氏）

福利厚生は、東証一部上場企業の東京ガスと同水準。ワークライフバランスの充実化に関しては、全社員が利用可能な在宅勤務制度（どこでもワーク）の利用、フレックスタイム制度の適用、法定よりも手厚い育児支援制度など、家庭やプライベートと仕事を両立できる環境をサポートする取り組みに力を入れている。

また、社内コミュニケーションの活性化にも積極的だ。定期的に開催している社内発表会では、新しく取り組んだ内容の紹介や海外研修の成果などを全社に共有している。他にもボウリング大会の開催、全社コミュニケーションタイムを設置してコーヒー無料提供の実施など、社員同士がイベントを通じて交流し、親睦を深める場も提供している。

「社内のコミュニケーション活性化を推進する『TALK it！活動（トーク・イット）』は、当社の伝統です。有志が集まってリアル脱出ゲームやバーベキュー大会といった、全社参加型のイベントを毎年開催しています。最近はリモートワークも増えたことから、オンラインで社員が自分の発表したいことについて5分間スピーチを行い、社員がそれに対してコメントを寄せる『LT大会（LightningTalks）』の開催や、社内SNSで技術コミュニティ『あつまれスペシャリストの森』(通称：あス森)が立ち上がるなど、新しいコミュニケーションも生まれました」（鴫谷氏）

ここ数年は新卒を中心に採用してきた東京ガスiネットだが、DXを含めてIT化を加速させるのに外の風も社内に取り入れたいと考えている。チャレンジングな空気を持ち込んでくれれば、既存の社員も更に積極的に新しいことに取り組むことができ、相乗効果で会社を成長させられると考えている。

「会社から過度な制約を受けることもなく、経験に基づいたスキルを存分に発揮できるフィールドがあります。既存メンバーは、責任感が強くて真面目で前向き、一緒に働く仲間としては最高です。会社の雰囲気はピカイチだと自負しています。ピカイチの仲間と新しいことにチャレンジできる場を、一緒につくっていきましょう！」（鴫谷氏）