ベリテワークス株式会社

アメリカ発祥のオープンソースのECプラットフォーム、『Magento』。日本では『EC-CUBE』が広く普及しているが、世界に目を転じれば、『Magento』はECプラットフォームでトップ3の一角を占めるメジャーな存在だ。2018年6月にはAdobe社の傘下に入ったMagento社、Adobeの組織・技術・資金を得て、更に加速することが予想されます。これを日本でもっと普及させるべく、日本語コミュニティの運営など、2007年から地道に活動しているのが西宏和氏。その西氏が、代表取締役を務める浅賀桃子氏と共に立ち上げた会社がベリテワークス株式会社だ。西氏はCTOを務める。

『EC-CUBE』が、日本製でわかりやすいこともあって広く普及しているのに対して、『Magento』は、日本ではまだまだ普及の途上にある。元々世界を標準に作っているため、使用言語は英語であり、技術的にも難しいことから、導入のハードルが少々高いのだ。だが、そもそもの作りが多言語・多通貨、越境ECなどに標準対応しており、拡張性も高い『Magento』は、特にグローバル企業にとって、機能面では『EC-CUBE』をはるかに凌ぐものだろう。個人商店レベルから導入でき、取扱い点数が数万点レベルまではカスタムなしで、最高は1000万点という事例もあるほどの汎用性の高さも『Magento』の特徴だ。

西氏は2007年にまだβ版だった『Magento』を知り、「直感的に、これはすごいと思った」と言う。コミュニティ運営のほか、日本語化や各種カンファレンス等での情報発信、技術サポート、トレーニングの実施など様々なことを手がけてきた。『Magento』＝西氏というブランディングもでき、現在は、問い合わせも次々と来る状態だ。

同社はこれまでシャープや老舗真珠加工会社の大月真珠など、グローバル展開する著名企業も含む数々のECサイトを構築、運営してきた。そのほかにも、『Magento』の普及と裾野の拡大に努めるという矜持から、「他のベンダーに依頼していたが頓挫してしまった」、「受託したが手に負えなくなってしまった」といった駆け込み寺的な要請にも対応してきた。技術情報も積極的に発信する。それらの活動がすべて、めぐりめぐって『Magento』の普及と自社の発展につながると考えるからだ。実際に、お客様のある仕事と奉仕的な活動を両輪で展開し、それらがきっかけで人脈が広がり、得られる情報や仕事も広がっていくという好循環を生み出している。

2015年秋から「Meet Magento」という世界的なイベントの日本大会も同社が主催する。普及度合いはまだまだだが、関心は確実に高まっている。『Magento』のプラグインも同社で開発し、どんどん市場に出していく計画だ。案件も当然のように世界中から獲得していく。クロスボーダーな『Magento』をめぐるビジネスは様々な可能性に満ちている。

地道な活動の甲斐あって、世の中の『Magento』への関心は確実に高まり、新規の問い合わせも増えている。加えて既存のECサイトの運用、保守の業務もある。今後を考えると、社員を増やし、ナレッジを蓄積していくステージにある。徐々に増やしながら、20人程度の体制に拡充したい考えだ。

エンジニアにとって『Magento』を手がけるメリットは、スペシャリストがまだまだ少ないこの領域で、先行者としてのアドバンテージを得られることに加えて、「自然と英文の文献を読み、情報のアンテナが海外に向くようになること」だと西氏は言う。この姿勢が、『Magento』だけでなく、常に世界の先端の情報を仕入れることにつながる。また、メジャーなオープンソースは、言わばエンジニアの世界の共通言語のようなもの。精通し、自らもその発展に寄与する活動をしていると、それが一目瞭然のスキルと経験の証明になる。「面接でくどくどと実績の説明をする必要もなく、『どこの誰』ではなく『誰』でわかる人になれるのです」と西氏。

実際、西氏は『Magento』の有名人だ。だからこそ相談が舞い込み、人脈が広がり、自然と他の領域のプロフェッショナルとの情報交換や交流にも発展する。これからベリテワークスに入る人にも、そんなバイネームでITの世界を渡っていける人になってほしい。西氏の願いだ。

ただし、同社は未来永劫、『Magento』だけをやっていくつもりはない。EC領域といえばCRM（顧客管理）、在庫管理、マーケティング、データ分析など派生するニーズはいくらでもある。「会社でやっていく事業は、市場のニーズに合わせて変わるべき。『Magento』にとらわれてチャンスを逃すようなことはしたくない」と、西氏は冷静にマーケットをとらえる。実際、既にオープンソースのCRMソフト、『OroCRM』も取り扱い、より多彩なサービス展開をスタートしている。

新しい技術は続々と出てくる。オープンソース関連のカンファレンスには積極的に出向き、世界中でオープンソースに取り組む人たちと交流し、情報交換をする。常に世界にアンテナを張り、チャレンジを止めることはない。

ちなみにベリテワークスは、代表の浅賀氏が受け持つカウンセリングや人事サービスと、CTOの西氏が受け持つシステム開発の二本柱のサービスを提供する会社だ。浅賀氏は、ITコンサルティング会社で人事を経験した後に独立。他産業と比べてIT業界では心を病む人が多いことを、とりわけ課題に感じていた。西氏はシステム開発会社、個人事業主などを経て、一貫して『Magento』に携わってきた。元同僚だった浅賀氏と西氏が機を同じくして独立することになり、人事領域とシステム開発という一見珍しい取り合わせが強みになるのではないかと考え、協業することに。こうして2014年5月にベリテワークスがスタートした。

人事・カウンセリング領域×ITということで、eラーニングサービスの開発と展開を視野に入れている。今後は、対面と紙の書類が中心のアナログなカウンセリングの領域でも、ITを絡ませることで新たな価値を発揮し、両サービスのシナジーを追求していく考えだ。メンタルヘルスの重要性を認識する機運が間違いなく強まっている今、人事・カウンセリング×ITでできることはたくさんあるだろう。それらを追及していくことも、もう一つのベリテワークスの目指す姿だ。

そんな同社が求めるのは、即戦力の技術ある人材だ。提案力や客先でのコミュニケーション力を求める会社も多いが、今のステージのベリテワークスは技術重視。自分が得意とする技術に対して説明ができ、例えば海外のデベロッパーなどにも問い合わせができるなど、その領域でコミュニケーションが取れるなら、営業トークは重視しないという考え方だ。大事なのはトークよりも技術や世界への視点―。

海外のカンファレンスへの参加も推奨し、同社は常に世界の最先端を見ている。日本・海外という区別もなく、グローバルというよりは、クロスボーダーな考え方に立つ。そのようなマインドを持ち、英語に抵抗がない人であればなおいいだろう。英語は、今はペラペラでなくとも日々、海外の情報に接するなかで磨かれるに違いない。

同時に、「心が折れる人が多いというITの業界のイメージを払しょくしたい」（浅賀氏）という強い思いも持つベリテワークス。それを実現すべく、まず自社から、納期に追われるような働き方を排除し、自らハンドリングしながらプライドを持って働ける環境を目指す。そんな会社を、これから共に創っていこうというメンバーを求めている。