シスココンサルティング株式会社

シスココンサルティング株式会社（SCC）は、株式会社システムプランニングアンドエンジニアリング（現SPEC）のERP事業部門が母体となり、2001年4月に設立された。以来、ERPコンサルティングサービスを主力事業とし、着々と実績を積み重ねている。

社員数50名の少数精鋭の同社が、大手ベンダーとチームを組んで、大手企業の基幹システムとなるERPの導入・運用プロジェクトに参画できている理由は、コンサルティングをはじめとした専門性の高さにある。ERPシステムを導入する際、稼働までこぎつけても実際の運用に適合しないケースが少なくない。稼働後もバージョンアップや機能拡張などでサポートが必要となる。これらの課題を解消し、企業ごとに異なるシステム要件へ対応するため、同社では財務会計や販売管理、購買管理の専門コンサルタント、インフラ周りのBASISコンサルタントが導入効果を高めるソリューションを提供している。

「新規導入やバージョンアップのほか、運用展開におけるコンサルティング、アドオン開発、導入後のメンテナンス・運用まで、ユーザーのシステムの進化に対応して支援しています。また、1993年よりERP統合プロジェクトを手掛けてきた実績をベースに、グローバル経営やグローバル人材開発、グローバルマニュファクチャリング、サプライチェーンマネジメントなど、相次いで発生するグローバル・ロールアウト / ERP統合プロジェクトの展開も支援しています」。（代表取締役・大井広行氏）

このように安定した事業基盤を築いている同社が、2016年から新たな事業に乗り出している。1つが、ビジネスソリューションサービス（BSS）であり、もう１つが、デジタル・マーケティングだ。

前者は、顧客が抱える課題解決にAIやIoT、ビッグデータ解析など、最新のIT技術を活用してサポートするサービス。たとえば、カスタマイズが困難なERPパッケージの導入だけでは解消できない企業特有の課題を外出しして、経験豊富なITソリューションエンジニアがシステムを開発、運用するなど、顧客の事情に適したソリューションを提供する事業だ。

後者は、Webデザインやデジタル・マーケティング領域全体のソリューション事業である。企業の採用HPにおける応募者との接点構築やECサイト運用などにおいて、コミュニケーションデザインを意識したデジタルソリューションを構築・提供している。

大手企業のERP導入プロジェクトとなると、従業員50名規模の会社が1社で引き受けるのは難しい。実際、同社も大手ベンダーを取引先として、プロジェクトチームの一員となって取り組むケースが多い。しかし、同社の場合は、その専門性の高さからユーザーと直接会話を重ねながらソリューションの在り様を考えるポジションに立つプロジェクトも少なくないのだ。

また、BSS事業では、事業が本格稼働してから１年も経たないうちに、大手住設メーカーと直接契約を結び、プロジェクトを遂行した実績も生まれている。このような状況は、デジタル・マーケティング事業も同様だ。同社が取り組んでいる全案件のうち、35％ほどがユーザーとの直接案件だという。

「ユーザーと直接プロジェクトを進めることで業務知識や業界・業種特有のニーズといった知見が蓄積され、当社の強みになっています。また、プロジェクトを通じて信頼関係を構築することで、ユーザーのネットワークが広がり、さらなる展開へと結びつくこともあります」。（大井氏）

実は、デジタル・マーケティング事業をERPビジネスとは切り離して展開しているのも、多様な業界にわたるネットワークをつくる狙いもあるという。

「これからAIやIoTなど、新しい技術を取り入れたビジネスが数多く誕生してくることと思います。その流れに遅れないためにも、幅広いネットワークをつくるとともに、BSS事業を通じて先進技術を活用したソリューション開発のノウハウを蓄積していきたいと考えています。また、ERPビジネスをグローバルで展開するため、ベトナムやタイ、中国で現地パートナーを探しているところでもあり、国内にとどまらないグローバル・ネットワークも、今後の事業展開に活かしていく予定です」。（大井氏）

ERPビジネスという主たる柱をさらに成長させつつ、“その次”を見据えて2本目、3本目のビジネスの柱をつくる。そして、「5年以内に社員数120名（パートナー含む）、売上10億円」を目指しているという。

新たな事業展開など、外へ向けて翼を広げようとしている同社だが、その眼はしっかりと社内にも向けられている。大井氏が代表取締役に就任したとき、行動指針と社員への約束からなるクレド（経営理念）を設定し、同社が大切にしている価値観を明文化した。

「同じ会社の社員とはいえ、一人ひとりには個性があり、考え方も十人十色です。しかし、当社としてお客様と接するときや、業務において何かの判断・決断をくだすときなどには、その基準となるべき会社としての考え方を明確にしておく必要があります。そうすることで、個性あふれる社員が集まるチームであっても、大きくぶれることのない対応を選択することが可能です」。（大井氏）

さらに、クレドの設定だけにとどまらず、社員への浸透施策にも力を入れている。若手を対象とした合宿においてテーマの一つとして取り上げたり、週に1回、クレドに即した行動を社員全員に向けて報告する『クレド・メール』という取り組みを実施したりしているのだ。この表彰制度では、月間MVPを獲得した社員の中から半期MVPを選出し、有名ホテルの食事券を贈呈している。

こういった人材育成施策はほかにもある。前述の合宿ではファシリテーションスキルを磨けるメニューが組まれている。技術的なノウハウの向上については、事業部ごとに開かれている勉強会が役立っている。また、社員のモチベーション向上につなげるべく、年間MVPを選び表彰している。

「社内の人間関係もフラットで意見をいいやすく、和気あいあいとした雰囲気があります。お客様からも『シスココンサルティングの社員は、良い人が多いよね』とよく言われるんです。おそらく、周りの人を気遣えるところを評価いただいているのだと思います」

それは「人間性を重視して採用しているからだ」と大井氏は続ける。

「当社の事業は"サービス業"です。お客様に喜んでもらうため自分に何ができるのかを深く考え、実行することがとても大切です。お客様のためになるなら、ときには厳しいことだって直言します。だからこそ、信頼されるのです。自分だけを見て仕事をするようでは当社の社員は務まりません。そこを理解して、仲間の一人として会社と一緒に成長していきたいという人と、じっくりお話ししたいと思っています」