アルファコンピューターシステム株式会社

アルファコンピューターシステム株式会社は、制御系・組込系ソフトウェアの開発力で独自の存在感を確立したソフトハウスである。同社の最大の特徴はハードに強いこと、すなわちハードウェアから最大のパフォーマンスを引き出す熟練のシステム開発力だ。

1970年代の電子レンジに始まり、80年代の各種産業機器、90年代の携帯電話、そして2000年代のカーナビゲーションシステム…。同社の40年におよぶ開発実績を概観するだけで、わが国のエレクトロニクス産業の進化をシステム開発の側面から支えてきた同社のポジショニングが見えてくる。

現在の事業内容は主力の制御系・組込系ソフトウェアの開発を中心に、IT全般のコンサルティング、OEM主体のパッケージソフト開発・販売、業務系・オープン系の基幹システム開発と、幅広い領域のITソリューションに広がっている。
また2015年11月には、業容拡大と新たなナレッジの蓄積を視野に、ウェブ事業部を新設。各種WEBサイト構築・制作を軸に、WEBマーケティングやツール開発を含めた総合的なWEBコンサルティングの提供を始めている。

同社の創業は1979年。オフコン向けソフトウェア開発やメンテナンスを手がけていた創業者・吉田数郎氏が、大手家電メーカーの研究開発部門へのエンジニア派遣事業を始めたことに端を発している。
「創業当初はオフコン開発保守を中心に業務をしていました。時代の進化と共に4ビット、8ビットマイコン応用システム開発へとシフトしていき、その多大なるノウハウが現事業の原形ですね。まだITという言葉もなく、パソコンが100万円近くもした時代の話です。」と、創業者から経営を引き継いだ現在の代表取締役社長、吉田義章氏は語る。

以来、大手家電メーカーを中心に徐々に取引先が広がり、開発対象も各種家電製品、産業用・家庭用機器といったエレクトロニクス製品全般へと着実に拡大、今日に至っている。
「現在、家電製品を含むほぼすべてのデジタル機器にソフトウェアが搭載されており、メーカー各社もシステムを通じた機能拡張やユーザーインターフェースのブラッシュアップに力を注ぎ、しのぎを削っています。当社は2018年中に創業40周年を迎えますが、ありがたいことに、40年にわたって確かな開発実績を残してきた当社には、さまざまなエレクトロニクス機器の開発・改良に際して、“あのエンジニアにお願いしたい”と名指しでオファーが寄せられます」と吉田代表は胸を張る。
レガシーという言葉は、IT業界においてはともすればネガティブな文脈で用いられるケースが散見されるが、同社の場合はまさにレガシー、つまり歴代のエンジニアたちが築き上げた良質の技術蓄積こそが、競争優位性の源泉になっていることがわかる。

同社が追求する理念は「想像を構想に変える開発力」だという。吉田氏の解説を聞こう。
「当社が手がけているのは、お客様の“できたらいいな”という想像を、実現可能な構想に変換するソフトウェア開発です。そのために、製品の企画段階から参画することもあれば、仕様書に独自のアイデアを加味する職人的な仕事で信頼に応えるケースもあります。幅広いオファーに柔軟に対応できるのは、UI／UXを司るアプリ層からミドルウェア層、ドライバー層まで、あらゆる開発レイヤーに対応できる優秀なエンジニアを揃えているからにほかなりません」

吉田氏の言うアプリ層の開発事例は、たとえばBluetoothを用いたカーナビのサーチ機能。食品メーカーや化学メーカーの生産ラインで活躍するph測定装置のディスプレイ表示システムや、ボス穴座標軸検査に用いる画像処理システムなどもその一例だ。
いっぽう、オフィスに欠かせない複合機のシステムや、印刷物を画像照合によって検証する印刷検証システムなど、アプリ層からドライバー層まで包摂した開発事例も多い。
そのほか、プラズマディスプレイ全盛時代の生産ラインに必要不可欠だったガラス平面度計測プログラム、各種FA機器制御システム、シーケンサー制御システムなど、開発実績は枚挙に暇がないほど。ハードに強いという同社の独自性が伝わるだろう。

大阪市西区のオフィスを訪れると、数人のエンジニアがスキャナーや検査機器を駆使しながら議論を交わしていた。半田ゴテや工具こそ見当たらないが、そこにはプロダクトの試作を通じて仮説と検証を重ねる、大学の研究室の空気感があった。

「彼らは、メーカーからダイレクトに受注した受託開発案件に取り組むエンジニアです。システム開発を“ものづくり”の一環と捉える当社では、仕様書通りの開発で終わることなく、必ずプラスアルファの肉づけを心がけるのが流儀。納品時に“追加で頼もうと思っていた機能までつけてくれている。ありがたい”とお客様に感謝されることもありますよ」と吉田氏。取引先から受注案件とは関係ない件で技術的な相談や質問の電話が入ることも珍しくないという。同社の技術力に寄せられる信頼の高さがうかがえる。

受託案件以外はすべて常駐による開発。1人１社体制を基本に客先に常駐し、開発プロジェクトの一員としてミッションを担うワークスタイルだ。
「常駐とは何かといえば、腕に覚えのあるエンジニアが客先であるメーカーの開発室に乗り込み、自由裁量で能力を発揮する働き方。当社では優秀なエンジニアに最もふさわしいワークスタイルと捉えています」と吉田氏は胸を張る。

エンジニアをリスペクトする姿勢は、次のような経営理念にも色濃く反映されている。

「当社は、“ヒト”を“財産”と考える人財企業です」
「生涯にわたって技術力を追求できる場を提供し続けます」

たとえばアプリ層の開発経験を積んだエンジニアの「次はドライバー層の開発ノウハウを磨きたい」といった要望に柔軟に応え、個々のスキルアップにつなげている。
いっぽう同社では、社員全員参加の集合研修や社内懇親イベントの類は一切ない。それどころか、常駐エンジニアは原則として出社の義務さえない。

「そのかわり、私が毎月派遣先に出向き、個々のエンジニアと面談しています。仕事の状況はもちろん、現状への不満、客先への要望、今後の展望、体調のことや家族、趣味など個人的な話題まで、ざっくばらんに話します。もちろん要望は必ず客先に伝え、改善を働きかけます」と吉田氏。主力が常駐開発であっても、月1回の定例ミーティングを開くなど、チームワーク醸成に腐心する企業が多い中で、同社の個性はひときわ目立つ。

「緊密なチームワークの中で力を発揮する人もいるでしょうが、制約を極力排除した自由な環境でこそ実力を遺憾なく発揮できるタイプのエンジニアも、実は少なくないのではないでしょうか。少なくとも当社のエンジニアはそうです」と確信を込めて語る吉田氏。開発案件が終わり、次の案件が入るまでの期間に休暇を取るエンジニアも多い。南の海でスキューバダイビングに没頭したり、食べ歩き三昧を楽しむなど、休暇の過ごし方は人それぞれだ。

求める人物像は、独立独歩のエンジニアだ。
「経験年数より、成長意欲の有無を重視しています。学生時代にロボコンに参加した人など、ぴったりだと思います。長年フリーのSE・PGとして活躍し、さらなる成長機会を求めて当社に加わったエンジニアもいます。フリーランスの立場では、メーカーの開発プロジェクトに参画するチャンスはまずありませんからね」と吉田氏。

カンファレンスや勉強会への参加を希望する社員は、会社が費用を負担して送り出している。社員から“全員参加の勉強会を開きたい”といった提案があれば、一も二もなく実現に動くと吉田氏は強調する。

今後は制御系・組込系ソフトウェア開発に加えて生保・損保・官公庁向けの業務系システムの開発にも力を入れ、数年以内にエンジニア20名体制の確立を目指す。その先には東京進出の構想も…と、堅実な将来構想を語る吉田氏の表情に、確かな自信が浮かぶ。自信のモトは言うまでもなく、頼れるエンジニアたちの存在だ。

余計なしがらみに縛られることなく、1人のエンジニアとして自由に生きる。そんな稀有なチャンスが、ここにある。