リス株式会社

リス株式会社は1980年創業の総合人材サービス企業だ。人材派遣・人材紹介を展開し、総合求人求職サイト『しごとナビ』を運営し、41年にわたって多くの雇用を生み出してきた。2000年11月にサービスを開始した『しごとナビ』は、求職者100万人、求人件数1.6万件、掲載企業数6000社を超えるサービスに成長し、同社のビジネスの基幹を成している。

『しごとナビ』の最大の特色は、働く人の変化に柔軟に対応できるサイトとして、雇用のフレキシビリティを重視している点だ。「正社員」「契約社員」「パートアルバイト」「SOHO・自営」「FC・代理店」「人材派遣」と、あらゆる雇用形態を求職者の希望に応じて複合登録できる。

「全方位型の求人求職サイトである『しごとナビ』は、あらゆる雇用形態を一元的に取り扱い、求職者が最適な仕事と出会える場を目指しています。例えば、正社員を第1条件にしている求職者でも、自らのスキルを利用できるなら、派遣と契約社員も選択肢に入れたい、といった働く人の希望をできるかぎり受け入れられるようにしています」（代表取締役・木村亮郎）

『しごとナビ』の求人はすべて成果報酬型で、採用となってはじめて費用が発生する仕組み。加えて、従来のエージェントサービスに、『しごとナビ』の求人広告を組み合わせた新スタイルの採用支援サービス『エージェントNEO』も提供している。

エージェントNEOでの採用活動は、設定した条件にマッチする人材情報を届けるメルマガ『LIS ジャーナルW』に掲載されている人材を自由に指名してオファーを出す。その際に「オファー理由」「提示できるポジション・待遇」「質問事項」も併せて知らせ、エージェントがその情報を元に、候補者とコンタクトを取り、面接を代行。候補者と企業の希望・不安を考慮したうえ、双方の懸念が払拭された時点で、直接面談を設定し、採否を支援する仕組みだ。

「求職者の本音にとことん付き合うヒアリングを通じ、最終面接をもはや顔合わせ同然にして、双方にとって理想の就業に近づけます。従来の人材紹介でも、希望通りの人材を採用することはできますが、採用時に発生する費用は『年収の35％以上』となるケースも。その点、エージェントNEOは、成果報酬額が想定年収の20％。『希望通りの人材採用』というサービスの本質を保ちつつ、採用コスト削減にも貢献します」（木村氏）

1980年に愛媛県松山市でスタートした当初、リス株式会社は人材派遣業を営む会社であった。東京・大阪・名古屋といった主要都市での人材派遣にビジネスを拡大。インターネットが一般に普及し始めた2000年、求職者の集客を目的にインターネット求人サイトとして『しごとナビ』を立ち上げた。これが最初の転機となったという。

「人材派遣会社としてはかなり早い段階でインターネットに着目し、求職者を集めるために活用しました。おかげ様で『しごとナビ』は、派遣の仕事を求める人材の集客に成功しました。そして、派遣希望の求職者と一緒に正社員希望の求職者も多く集まりました。そこで、人材紹介ビジネスにも乗り出しました」（木村氏）

『しごとナビ』が全方位型の求人求職サイトであるように、同社のビジネスの特長は、人材派遣と人材紹介をミックスしている点にある。一般に人材派遣と人材紹介はビジネスモデルが異なるため違う業界とされているが、同社では両方を手掛けている。これが第2の転機だった。

「派遣法が改正されて、一定期間、派遣社員として働き、企業と派遣社員の互いの希望が一致した場合、正社員あるいは契約社員として正式雇用される『紹介予定派遣』がはじまり、人材派遣会社は人材紹介事業に乗り出しました。しかし、ビジネスモデルが異なるため、苦戦する会社が少なくありませんでした。そんな中、当社は『しごとナビ』を通じて、すでに正規雇用希望者を集めることに成功していたため、人材派遣と人材紹介の両輪でビジネスを拡大させることができました」（木村氏）

人材派遣業に比べ、人材紹介業は利益率が高い。そのため、同社の売上げ構成は人材派遣業の割合が大きいにも関わらず、利益ベースではほぼ半々にまで人材紹介事業が占める割合は大きくなっているという。

「当社のサービス『しごとナビ』も『エージェントNEO』も、人材紹介業が軌道に乗ったことでメインビジネスに育ちました。今後は、これまでに築き上げた資産を有効活用して、これまでにない人材派遣・人材紹介のプラットフォーム創りにチャレンジしていく計画です」（木村氏）

インターネットの積極活用や、人材派遣と人材紹介のミックスなど、常に新しいことにチャレンジしてきた歴史を持つ同社。同社が次に見据えるのは『しごとナビ』を活用してネットワークを構築し、人材派遣・人材紹介の新たなプラットフォームを作り上げることだ。

「働き方が多様化している現代、働く人を取り巻く環境は大きく変わろうとしています。人手不足はますます深刻になる一方で、非雇用者数も100万人規模という数字もあるなど、人と企業をうまくつなぎ合わせられる仕組み作りが求められています。企業にとって、そして求職者にとっての選択肢を網羅できるようにブラッシュアップを重ね、『しごとナビ』を人手不足の解消につながるようなサイトにしていきたいと考えています」（木村氏）

同社が人材派遣・人材紹介の新たなプラットフォームを作り上げるためのキーワードが2つある。「FC展開」と「AI導入」だ

「全国にある中小の人材会社とFC契約を結び、『しごとナビ』の求人情報と企業情報を共有しはじめました。『しごとナビ』をプラットフォーム化することで、大手人材会社に対抗し、彼らが対応していない“地方”に人材を供給することで、地方活性化にも効果が期待できます」（木村氏）

『しごとナビ』には全国の求職者が集まるが、同社ですべてをカバーするのは難しい。FCで全国に「しごとナビグループ」の事業者を増やせば、対応できるようになるという戦略だ。

「地方活性化と人手不足解消は、日本の大きな社会問題であり、『しごとナビ』のFC展開はビジネス戦略であると共に、社会問題の解決につながります。『しごとナビ』を通して、企業と人材のマッチングを最適化することで、日本の未来を作り上げていきたいと考えています」（木村氏）

FC展開と共に、今後の同社が注力していくのが、人材ビジネスの効率化。そのためにAIの導入を進めている。

「年齢や地域など従来の項目検索だけでは限界があります。AIで人材の性格や過去の経歴など、よりパーソナルな部分を仕事探しのデータとして活用することで、より人と企業がつながりやすくなります。現在、京都大学と共同で、AIの人材派遣・人材紹介分野でのAI活用の可能性を探っています。エージェントの代わりにAIが企業と求職者のマッチングをすることができれば、その精度を上げられるだけでなく、今までにない出会いを創出することも可能になります」（木村氏）

AIの導入や『しごとナビ』のプラットフォーム化を進めるため、同社は組織再編にも着手し、エンジニアやWeb系人材の採用を積極的に進めている。HRテック領域の最先端で自らが中心となって働きたい人にとって、リス株式会社はピッタリの会社なのではないだろうか。