クラリスアート株式会社

盛岡のエンジニア事情を底上げするために、成長を続けているシステム開発会社がある。2016年に設立されたクラリスアート株式会社だ。

同社の事業は、受託開発・エンジニア派遣・SES。一般的なシステム開発会社と変わるところはない。特徴は、盛岡で“東京の案件”を手掛けている点にある。

「盛岡にもシステム開発の案件はありますが、“東京の案件”とは単価が違います。コロナ禍になって、テレワークが全国的に普及し、東京で働くエンジニアもフルリモートになりました。技術力があれば、地方のエンジニアも東京の案件に参画できる時代となり、当社でも“東京の案件”を中心にした経営にシフトしています」（代表取締役・藤村昌也氏）。

地方のシステム開発会社が、“東京の案件”を手掛けるメリットは、金銭面以外にもある。技術力をアップできる。同社でも近年、医療機器メーカー工程支援及び周辺システム構築やECモール一元管理システム構築、気象情報WEBサイト画面構築に参加し、GIS（地理情報システム）を使った開発のスキルをアップさせた。

「 “東京の案件”は新しい技術を活用した開発が多く、エンジニアとしてワクワクするものです。会社やそこに所属するエンジニアの技術力が高くなれば、さらに高単価の“東京の案件”を手掛けることもできます。こうして地方に住みながら“東京の案件”に携ることで、豊かなエンジニアライフを歩むことが可能となります」（藤村氏）。

単価の高い“東京の案件”に参加するには、技術力が必要。そのため、同社ではエンジニアの育成に力を入れている。

「“東京の案件”はAWSが多いから、AWSに力を入れています。社員が勉強できるように、全員がAWSの有料版を使えるようにしています。今後も新しい技術を学ぶ環境は、積極的に整えていきたいと考えています。技術力がないと“東京の案件”に参画できません。近年は、新卒を中心に若いエンジニアが増えたため、エンジニアの育成に力を入れています」（藤村氏）。

2016年にクラリスアート株式会社を設立した藤村氏は、エンジニア出身の経営者。新卒で岩手を代表する大手システムインテグレーターに入社。その後、大手ITコンサル会社のグループ企業でエンジニアとして活躍した。

藤村氏の前職にあたる会社は、東京に本社があり、全国に支店を持っていた。盛岡にも支店があり、藤村氏はそこに在籍しながら、全国の案件に携ってスキルを磨き、人脈を築いていった。

「社会人なってから、一貫して独立することを考えてキャリアを築いてきました。盛岡で“東京の案件”に携ることができれば会社は儲かるし、エンジニアの収入もアップすると考えていました。そんな折、前職の会社が盛岡支店を閉鎖するという話になり、上層部と掛け合って有志の10名と一緒にクラリスアートを立ち上げました」（藤村氏）。

クラリスアートは、岩手の案件を手掛けながら、前述したように少しずつ“東京の案件”を広げていった。

「地方を元気にするには、そこで働く人の収入アップが重要です。イメージは『外貨獲得』。地方だけで経済圏を作っても発展性がありません。東京の会社から仕事を受けて、東京から地方へお金が循環する環境を作ることが大切だと考えています。東京の単価で働けば、地方なら豊かな生活を営めます」（藤村氏）。

岩手のエンジニア事情を改善するため、“東京の案件”を積極的に獲得するのに加え、岩手県内のSIerにも単価アップを働きかけるなど、岩手在住のエンジニアの給与水準を上げていきたいと考えている。

「盛岡の他のシステム開発会社とも歩調を合わせて、岩手のエンジニア事情をアップデートしたいです。岩手県内で活躍するエンジニアにも参加してほしいと願っています。岩手のエンジニアが技術力を高めれば、“東京の案件”は岩手のエンジニアを求めてきます」（藤村氏）。

テレワークがエンジニアのスタンダードな働き方となりつつある今、地方のシステム開発会社には「人材育成」という重要な使命があると藤村氏は語る。

「東京の会社が地方のエンジニアを直接雇用する時代になってきました。それでは、地方のエンジニアが育ちません。クラリスアートのような地方のシステム開発会社がハブとなって、東京の案件を受けることで若手エンジニアの育成もできます」（藤村氏）。

クラリスアートが“東京の案件”に積極的に参加するのは、単価の高い仕事を盛岡に持ち込むため。そして、その理由は「エンジニア事情のアップデート」。具体的にいえば、エンジニアにとって快適な就労環境を整え、収入をアップさせることだ。

「起業して最初に着手したのは、エンジニアが自由に働ける環境の整備。主に、テレワークの体制を強化しました。私はサーフィンが趣味で、毎日サーフィンができる環境で働きたかった。会社員時代から『エンジニアの仕事は出社の必要なし』と考えていました。よって、当社はフルリモートが基本。中途入社のエンジニアのオンボーディング期間、新卒社員の研修期間中は、盛岡駅前のオフィスに出社してもらいますが、その後は自宅作業でOKです」（藤村氏）。

クラリスアートでは、エンジニアがフルリモートで働く環境に予算を割いている。ハイスペックPCや大画面モニター等を会社負担で購入し、エンジニアが自宅の作業環境を自由にカスタマイズしている。

「エンジニアならわかる感覚だと思いますが、ハイスペックPCがあるとテンション上がりますよね？エンジニアが集中して作業できる環境を整えることで、開発効率が上がるなら、安い買い物です。エンジニアには、何でも相談してほしいと伝えています。会社でできることがあれば全力で努力します」（藤村氏）。

エンジニアの気持ちがわかる「エンジニア社長」である藤村氏は、非常にフランクな人柄。社員との距離も近い。

「クラリスアートは、不必要な上下関係がない会社です。もともと仲間だったエンジニアと立ち上げた会社ですし、私が堅苦しい関係を好まない性格でもあるので、若手のエンジニアともフランクに接しています。おしゃべりが好きなので、よく社員と雑談しています」（藤村氏）。

フルリモートに加え、フレックス制度も導入。クライアントと会う以外、作業中は私服でOK。エンジニアに豊かな生活を送ってほしいと考えているため、副業も推奨している。

「私は、会社員時代からアパート経営を副業で営んでいます。今の時代、収入は自分で作るもの。当社のエンジニアにも自ら収入を生み出す努力をしてほしいと願っています。スポットで他の案件をしているエンジニアもいます。エンジニアが収入をアップさせて自由に働ける環境を整えるのが、クラリスアートの使命だと考えています」

岩手在住のエンジニアで、自由に働ける環境や年収アップを考えている人材はもちろん、Uターン・Iターンも大歓迎。東京の給与水準をもって岩手で暮らせば、豊かな生活ができる。マンションを買う資金で、一軒家の購入も可能。自然も豊かで、子育てするには最高の環境がある。

「前身会社のメンバーが中心なので、平均年齢が高い会社です。新卒などで若い世代も入ってきている状況で、今後は若い人たちのための会社にしていきたいと考えています。経験の浅いエンジニアを引っ張ってくれるミドル層のエンジニアが入社してくれると心強いです。盛岡は食べ物も美味しくて、自然が豊かで住みやすい町です。岩手に移住したいエンジニアも大歓迎です！」（藤村氏）。