株式会社NBE

情報システムやソフトウェアの開発・構築を行う株式会社NBE。日本のIT企業としては長い歴史を持ち、2021年で設立40周年を迎えた。

同社が設立された1981年は、IT業界の黎明期。日本の“インターネット元年” と言われる1995年の14年も前だ。初代社長は、大手家電メーカーを経験した野上邦茂氏。戦争経験者として、「日本を背負って立つ人を育成したい」という強い想いを持って、定年退職後に設立したという。

設立当初は企業の汎用機の基本ソフトウェアを手がけた。そこからOS、DB・DCシステム、通信管理システムなども担うように。こうした事業で培った技術は、のちに応用ソフトウェア開発やクラウドシステムの開発技術として存分に生きることになる。1990年代の各企業のサーバーシステム活用、2000年代のインターネットシステム拡大、2010年代のクラウドシステムの普及など、時代のニーズに対応したシステムを世に送り出してきた。

メインの取引先は、野上氏の出身でもある大手家電メーカーのグループだが、同社はあくまで独立系IT企業。とくにこのグループから出資を受けているわけではない。現在は金融、社会・公共インフラ、産業・流通分野などの数々の企業と取引し、売上30億規模にまで到達している。設立以来一度も赤字を出したことがない点からも、盤石な経営基盤がうかがえる。

現在の代表取締役社⻑・野上祐⼀郎氏はこう話す。「社会全体のDX化という要請に応え、IT業界サービスはクラウド化・サービス化へと大きく変化しました。これからも次々とニーズは移り変わっていくでしょう。しかし私たちは、設立当初から変わりなく心がけていることがあります。それは、“人”を一番に大切にしながら、社会に求められるエンジニア集団として進化し続けることです」

そして2023年4月、同社は大きな決断に出る。もともと「株式会社日本ビジネスエンジニアリング」として組織を進めてきたが、「株式会社NBE」へと社名変更したのだ。IT社会が大きな変化を迎えている今を“第二創業期”と位置づけ、企業イメージを刷新する狙いだ。また社名変更だけでなく、拠点もだんだんと拡大している。もともとは神奈川県横浜市が本拠地だが、2019年に東京都へ、2020年に福岡県へオフィスを展開してきた。このことからも、今後のさらなる成長に向けた勢いが感じられる。

同社は事業として、6つのソリューション開発を手がける。メガバンクや国内為替などに関わる金融システム事業、電力などのエネルギー、航空機・ICカードといった交通網を扱う社会・公共システム事業、社会保険や年金などに関わるインフラ設計構築事業、自動車・家電といったビジネスシステムを整備する産業・流通システム事業。また、IT社会に欠かせない情報セキュリティ事業も手がける。そして、こうした自社開発の技術を活かし、各企業のパッケージ製品やミドルウェアも手がけている。

このように幅広い事業を手がけるが、設立以来一貫しているものがあるという。それが、「技術力」「品質力」、そして「人間力」という3本柱の姿勢だ。

まず1つめの「技術力」について。“社員とともに成長していくソフトウェアハウス”として始まった同社は現在、社員の半数以上が、経済産業省認定情報処理資格（計311資格）とベンダー資格（計470資格）を保有。なんと、社員一人あたり3.68件の資格を持っているという計算になる。有言実行。時代の変遷に適応しながら、会社・社員ともに成長を遂げてきたのだ。

次に2つめの「品質力」。積み重ねた技術力を駆使し、システムや商品という形にして、社会の役に立てる力だ。ITサービスマネジメントの成功事例をまとめたITIL、プロジェクトマネジメントの世界基準であるPMBOK、そして組織内プロジェクトマネジメントの指標であるCMMI……。一般的に、システム開発を手がけるにあたり、これらを活用している企業は多い。しかし同社の場合、この3つに加えて、独自のシステム開発標準規格「N-Standard」を掲げている。客観性も独自性もぬかりなく発揮し、高い質とオリジナリティを実現しているのだ。

そして、「人間力」。「『人間力』については、当社が最もこだわり続ける力といっても過言ではないでしょう。当社の経営方針は、やはり『人の育成』なしには語れません。目先の利益ばかり追わず、社員の成長のための社内投資を惜しみなく行っています」。（野上氏）

まず研修や資格取得支援の制度を充実させ、個々のスキルやモチベーションを上げていく。そして、ITスキル標準（ITSS）といった目標設定や、四半期報告などの業績共有を徹底し、組織全体で結果を作り出しているのだ。

こうした3つの力を一切妥協しないビジネスモデルで、同社は次々と信頼を勝ち取っている。近年では、株式会社日立ソリューションズの「プライムエクセルパートナー企業」や、株式会社日立ソリューションズ西日本の「ＷＷパートナー（Win-Winパートナー）」に認定されている。大手企業の重点パートナーとして、その実力を大々的に認められている同社。将来性も高いと言えるだろう。

ここまで、同社のたゆまぬ企業努力について紹介してきた。やはり、気になるのは「技術力」「品質力」「人間力」をどのように蓄積していくのか、という点ではないだろうか。

変化が激しくても、先を見通せない時代であっても、世の中にある“道理”は変わらない――。同社は、この考えを強く持っている。では、その“道理”とは何なのだろうか。

それは、「すべては人である」ということだ。

「今後もIT業界はどんどん進化します。ですが、どれだけシステムやサービスが先進的でも、それを利用するのはエンドユーザーである“人”。そして、その仕組みを作り出している我々も “人”。『人が考え、人が作り、人が使う』という本質が変わることはありません。このことを忘れずに、当社は“人＝社員”の成長と活躍を終わりなく追及していくでしょう」。（野上氏）

「技術力」「品質力」「人間力」を高めながら、社会に必要とされる人材になる。それの環境を整えるのが同社の役目でもあるというのだ。

そのために、まず取り組んでいるのがスキルアップ支援だ。とくに特徴的なのは、社内独自のITスキル専門技術者教育「NBEカレッジ」（Nカレ）だ。こちらをはじめとした人材育成制度を整えており、2011年には、独立行政法人情報処理推進機構（IPA）の「中小ITベンダー人材育成優秀賞」を受賞している。

また、福利厚生の整備にも積極的だ。オンライン産業医面談などの健康促進制度を取り入れるほか、横浜市内中小企業向けの福利厚生制度「ハマふれんど」にも加入している。きめ細やかな健康サポートからプライベートのレジャー支援、結婚・出産祝い金など、日々頑張る社員の背中を押せるような制度が目白押しだ。

こうした理想的な環境の背景には、同社の「社内制度を考える会」の存在がある。こちらは、経営陣と社員がともに社内制度を作っていく取り組みだ。会社のトップだけでなく、現場社員の目線を取り入れて社内環境を整えるからこそ、本当の働きやすさが実現しているのだろう。

そして同社は、ビジネスモデルやIT人材育成だけでなく、こういった“働く環境作り”でも社会から認められている。1つめは全国規模。女性活躍推進の取り組みを行う企業「えるぼし」に認定されている。またローカルでも、「よこはまグッドバランス賞」に認定。なんと、同賞が発足した2017年度から継続認定を記録しているのだとか。

「すべては、人である」――。その本質をしっかりと見つめ、人から組織へ、組織から社会へ。そんな正のサイクルを作り出す同社では、社員一人ひとりが全力で活躍できそうだ。