株式会社RUTILEA

株式会社RUTILEA（ルティリア）は、「AIを簡単に。」というミッションを掲げ、“ゼロコードAI”により様々な産業を支援している京都発スタートアップである。
同社が提供しているプロダクトとしては、次のものがある。但し、これらは同社のサービスの一部に過ぎず、個別企業に対する多種多様なAIの受託開発を手掛けているのが強みだ。

●マルチモーダルAI REO (Multimodal AI Rutilea Efficient Operations)
製造業向けのAIによるリアルタイム作業認識システム。セットアップはエンジニア不要のゼロコードで簡単に行うことができ、カメラを設置するだけで即日導入が可能で、作業分析、工程保証、安全保証といった多岐にわたる機能を提供する。作業分析では、作業スピードと作業回数を自動的に計測して作業の効率性を評価し、改善のための洞察を提供。工程保証では、作業手順の誤りを検出し品質管理を強化。安全保証では、危険作業を検出し作業場の安全性を向上させる。


●Zero-shotピッキングシステム
トレーニングなしに、モデルが未知の物体に対しても一般化して認知する「zero-shot学習」という概念を活用。複雑な物体検出アルゴリズムを用いなくても、事前にトレーニングされたモデルや転移学習の技術を利用して、リアルタイムで物体の特性を推論し、アイテムを瞬時に識別することが可能。

●ImagePro
プログラミングを一切することなく、画像処理プログラムを開発することができるゼロコードAI画像処理ソフト。良品学習の異常検知や教師なしセグメンテーションをはじめ、不良品学習の教師なしセグメンテーションやインスタンス・セグメンテーション、画像分類、画像検索、文字探索、文字読み取り、コード読み取り、物体検出等、多彩なAIを搭載している。

以上のように、同社の大きな特長は、エンジニア不要の“ゼロコードAI”にある。かつ、製品説明は実際に製品の開発や納入を手掛けるエンジニアが行うことで、持ち帰りの検討を削減し実現可能性評価を早めている。これによって開発期間を短縮し、導入効果を高めるとともにコスト削減を実現。どんな企業でも簡単に導入できることで、ユーザーの裾野を広げている。一方、トヨタ自動車、パナソニック、コマツといった大手企業にも導入され、2023年5月時点で取引実績は261件を数える。

同社は、2018年8月、代表取締役社長の矢野貴文氏が起業した。矢野氏は京都大学工学部を経て大学院修士課程に在学中の2014年に、学生仲間と共に得意なデータ統合技術を使った事業をやろうと起業し、中古ブランド品の買い取りプロセス効率化のためのソフトウェアを開発する。この会社を2016年に売却し、次に何をしようかと海外を見て回っていた矢野氏は、世界中で日本企業の看板を見かけ、「これらの企業は世界に必要とされている」と実感。「自分も次は世界に必要とされる会社、何かの分野で世界TOPになる会社をやりたい」と思い、同社を創業する。
「“RUTILEA”とは宝石の原材料となる鉱石の名称で、自らの技術で宝石のような存在を世の中に送り出したいとの思いから社名に」

2019年8月に、異常検知AIに基づく外観検査ソフトウェア『SDTest』をオープンソースのソフトウェアとして公開。工業製品に関わるオープンソースのソフトウェアは珍しく、注目を集めて半年間で500社超の企業によるダウンロードを記録する。これを機に多くのユーザー企業や販売代理店となる商社等と繋がり、2020年にはトヨタ自動車やパナソニックをはじめとする大手国内メーカーへの検査自動化ソリューションの提供をスタート。平行して製造現場の課題について理解を深め、製品開発に反映していった。


2022年にはディープテックへの投資・育成を手掛けるAbies Vebtures、及びサウジアラビア王国の政府系ファンドであるRiyadh Valley CompanyからシリーズBラウンドの資金調達を実施。6.75億円の資本金を確保した。


同社が掲げるMission、Vision、Valuesは次のとおりだ。

●Mission：AIを簡単に。AIの導入プロセスを簡単にし、すべての業務プロセスにAIが組み込まれた社会を実現します。
●Vision：ゼロコードAIにより製造業における単純作業をAI化し、労働者不足を解決
●Values：
・創造性とテクノロジーでビジネスを革新する
・世界で最短のリードタイムで、最高の投資対効果を顧客に提供する
・自分の関わるプロジェクトにオーナーシップを持ち、新たな価値提供に挑戦し続ける
・社内業務プロセスを標準化し、顧客提供価値の向上を図る

同社によって産業界の隅々までAIが行き渡り、生産性を向上させる意義や価値は極めて大きいと言えるだろう。

同社の役員及び社員数は30名ほどで、それ以外に京大工学部の学生アルバイトが常時30名ほど働いている。20代のメンバーが50％以上を占める若さと、外国人が20％以上を占めるだけでなく開発に海外のエンジニアも多数参画している多様性のある組織だ。

組織としては、自社プロダクトを手掛けるソリューション事業と、受託開発などを手掛けるR&Dに大別される。いずれの事業部長も20代だ。その一人である取締役の柴田恭佑氏は、Forbes Asia“30 Under 30 Asia 2023: The Innovators In Industry, Manufacturing And Farming”に選出されている人物である。
「両名とも普段は短パンにゴム草履といったラフなスタイルで出社しています。学生が多いので、よく大学の研究室のような雰囲気があると言われますね」（人事スタッフ）。

組織風土の特徴としてはそのようにフランクで、上下関係においては社長のことも「矢野さん」と呼ぶフラットさがある。そして、誰であってもおかしいと思うことは率直に発言し、議論して変えるべきことはすぐに変え、気づいたことはチームとして共有する。かつ、可能性があると思えば即座に調べて動く行動力と、トライ&エラーを繰り返すカルチャーがある。
「AIやITの世界は変化が極めて速いので、当社としてキャッチアップするスピードも相当速いと思います。技術もすぐに陳腐化するので、今何が得意かということよりも、次何にチャレンジするかということを重視している感じです。週末も趣味として技術論文をチェックしているというメンバーが少なくありません」（人事スタッフ）。

働き方は、コアタイムが11～14時のフレックスタイムで自由度が高く、リモートワークも随時可能な柔軟さがある。「但し、新しいことにどんどんチャレンジする都合上、フルリモートは基本的に認めていない」したがって、本社のある京都地域に在住している人が採用対象だ。

なお、同社は京大発ベンチャーで京大生も数多くアルバイトとして働いていることから、高学歴集団と思われるだろう。
「実際は高卒のメンバーもいて、必ずしも高学歴の人材ばかり集めているわけではありません。また、アカデミックなことを追求するのではなく、あくまでもビジネスとしての現実的なソリューションやプロダクトを追求しています。そういった観点から、学ぶ意欲さえ強ければ学歴は関係ありません。ハイスピードで変化する連続を楽しめる方だとフィットすると思っています」（人事スタッフ）