株式会社free mova

20代の若手層に特化した人材紹介・派遣事業を展開するfree mova。設立からわずか5期目で正社員メンバー500名越えを果たした、急成長中のベンチャー企業だ。

同社を紹介するにあたって、まずは創業者二人のドラマチックな起業エピソードから始めたい。

立ち上げたのは、代表取締役社長の廣瀬暁己氏と、取締役副社長の米山大貴氏だ。高校の同級生だった二人は社会に出て、偶然にも同じ人材業界へと足を踏み入れた。広瀬氏は製造領域に、米山氏は販売領域に特化した企業で活躍。ジャンルは違うものの、二人とも短い年数で人材業界を熟知する。そして、既存の人材ビジネスの限界にも気づきはじめたという。

「私たち二人が仕事で目指していたのは、求職者一人ひとりが最大限活躍できるような企業とのマッチング。つまり、“求職者目線”を持った人材派遣の形です。しかし、会社の方向性もあってなかなかうまくいきませんでした。求職者のパーソナリティに関わらず、あらかじめ決められた企業へ紹介しなければならないことも。未来有望な求職者を、決められたルートへ導くことしかできない歯がゆさを感じていました」（米山氏）

それならば、自分の会社を作ったら…？“求職者目線”を持ったビジネスが叶うだろうか…？ 広瀬氏、米山氏がそれぞれにそう考えていたとき、偶然二人は再会を果たす。意気投合し、ともに起業を目指して動き出した。

枠にとらわれない仕事を、枠にとらわれない人生を―。そんな思いを込めて二人で名付けた社名が、「free mova」だ。

しかし、設立直後の道は困難を極めた。もともと二人は業界でも名の知れた企業にいたのだが、そこと比べてしまえば起業したばかりのfree movaには知名度も実績もない。そこに追い打ちをかけてきたのが、設立わずか半年後に始まったコロナ禍だ。いわゆる“派遣切り”は加速し、業界によっては正社員もレイオフされてしまう事態だった。自分たちの給料も確保できないような厳しい状況の中、二人は副業をこなしながら会社経営を続けた。

当時について、米山氏はこう振り返る。「当社を設立するとき、私は他社の社長100名ほどとお会いしました。その9割方から言われたのが、『今から人材事業を立ち上げてもうまくいかない』という言葉。絶対に見返したいと思いましたね。だからコロナ禍でも私たちには、“諦める”という選択肢はありませんでした」

――それから3年経った2023年現在、たった二人から始まった同社のメンバーは、いまや400名に達しようとしている。小さな雑居ビルの1室だったオフィスは、いまや渋谷の一等地の新築ビルに本社を構えている。二人の熱い思いと、“独自の戦略”が結果を出したのだ。

苦しい状況の中でfree movaを成功に導いたのは“求職者目線を持った人材ビジネス”だった。

メイン事業である人材派遣では、実際の現場で活躍していたのはfree movaが正社員として雇用したメンバー達。コロナ禍で、アパレルなどの接客・販売人材は窮地に陥っており、なかでも販売領域の人材は引く手あまた。販売の仕事に復帰したい人たちの救世主になったとも言えるだろう。

「全国的に有名な中古車販売会社Iでは、派遣社員がたくさん活躍していて、そのうち多くの採用を任せていただいているのが当社です。今回も年間採用予定900名のうち、250名を当社にご依頼いただきました。大手の人材派遣会社よりもずっと多い人数です。やはり20代の若手に特化した人材紹介は、大きなアドバンテージになりました」（米山氏）

そんな20代をターゲットに絞るfree movaだが、採用の方法も先進的だ。なんとSNS上での求人情報発信で約半分の採用できているという。さらには求職者一人にかける時間も思いも並大抵ではない。

「一般的な人材系企業だと、人材コーディネーター1人あたりの担当する求職者は80～100人ほどだといわれています。しかし当社のコーディネーターは、1人あたり月間で最多25人までと決めています。1人ひとりとしっかり向き合い、今後のキャリアステップを一緒に考えていくためにはこれくらいの規模が適切だと考えています」（米山氏）

こうしたビジネスが結果を結び、2021年に売上2億円、2022年に6億円、2023年には18億円に。年3倍という驚異のスピードで成長を遂げている。

今後について、米山氏はこう語る。「10年後には、20代の認知度No.1の会社になることを目指しています。それは人材系ビジネスに限った話ではありません。みんなの暮らしを彩り、一緒に未来を切り開けるようなビジネスなら何でもチャレンジしたいですね。そのためには、新事業やグループ化など、どんどん展開していくつもりです」

いまやfree movaは、“人材ビジネス”という枠にもとらわれておらず、新たなビジネスにも積極的にチャレンジをしている。

「設立から4年で、当社は400名近い組織になりました。今後は“2025年1000名計画”を考えています。その1000名もあくまで通過点。2000名、5000名とどんどん拡大させていく予定です。設立当初は300名ですら夢物語だと言われましたが、それも今となってはすでに超えていますので、必ずできると信じています」と米山氏は胸を張って話す。

会社を大きくするにあたり、やはり第一線で組織を引っ張っていくメンバーが不可欠だ。その分、入社後からのキャリアアップスピードも尋常ではない。東京本社で採用を取りまとめる鈴木賢志朗氏はこう話す。

「現在、大阪支店長を務めているメンバーは、入社からたった1年半で大阪支店の立ち上げをリードしました。彼は今後、近々オープン予定の福岡支店長に就任する予定です。また他に、人材派遣事業部をまとめている部長は、入社から1年も経たないうちに今のポジションに就きましたね」

コーディネーターや営業として結果を残す他、一般メンバーによる新規事業立ち上げも積極的に行われている。例えば事務スタッフ派遣は、大手企業で事務系コーディネーターを務めていたメンバーが考案したもの。また、2023年にスタートした介護スタッフ派遣も、介護業界を経験したメンバーの発案で実現した。

「会社を大きく発展させるために、そして自分も成長するために何ができるか―。それを考え、自分の経験やアイデアを活かしてアクションを起こせるメンバーたちが活躍しています。そういったメンバーはリーダーとしての素質も高い人ばかり。今後の採用でも、このような“自走心”を重視します」（鈴木氏）

自分が強みにできるジャンルと、リーダーシップ、そして何より行動力。この3拍子が備わっていれば、今からでも充分に組織を牽引する人材になれそうだ。

「今後は“週4社員”や“週3社員”といった勤務形態の自由度もアップさせようと考えています。私たちが重要視しているのは、生産性と実績。それぞれの社員が一番高いパフォーマンスを発揮できるような環境を整えていくつもりです」（米山氏）

また、年に3回ほどのワーケーションイベントも実施。短時間集中して業務にあたり、午後はバーベキューやスポーツに打ち込むのだとか。“働く”と“遊ぶ”のメリハリをしっかりつけて楽しむ――free movaならではの新たな働き方だ。

「私たちには、学生の部活動の延長のようなムードがありますね。だからこそチームの仲間を大切にしながら、限界を決めずにチャレンジし、その過程も楽しむことができるのではないでしょうか。仕事でどんなことを叶えたいか？そういった“自分の夢”や“仲間の声”もどんどん取り入れ、実現させていく組織です」（米山氏）

高い志を持てば、同社でチャレンジできるステージは無限大――。そう感じずにはいられない。