株式会社pipon

生成AIの受託開発を手掛けている、株式会社pipon。同社では、幹部候補となる生成AIエンジニアを求めている。

日本でも生成AIが注目され始めた2023年3月、いち早く「ChatGPT」を用い、親和性のあるAzure環境で生成AIを開発し、企業へのセキュアな導入を支援するサービスをスタートさせた。そんな同社の強みについて、代表取締役の北爪聖也氏は次のように話す。
「生成AIに関するスキルや知見もありますが、より強みとしているのは、お客様の課題解決のために業界固有の業務内容を理解し、的確なソリューションに繋げる力にあると自負しています。また、主要な競合先である大手コンサルティングファームよりもはるかに低価格で提供できるメリットもあります」

これまでの導入事例は、主に次の3ケースが挙げられる。
●監査法人：社内問い合わせ対応チャットボット
それまで、毎月約6,000件もの問い合わせが約20名からなるサポートスタッフに寄せられていた。その内容は社内マニュアルを見ればわかるものが大半であったが、「聞いた方が早い」とばかりに問い合わせが押し寄せていた。そこで、ボットを開発しTeams上に設置、ボットに尋ねてもらうと、GPTが社内文書を検索し回答を生成する仕組みを構築。これにより、サポートスタッフの工数を大幅に削減することができた。

●医療機関：電子カルテの自動作成
2024年度より医師の残業時間の上限規制が適用されるが、日々多くの患者に対応する医師のカルテ記載が大きな負担になっていた。そこで、医師と患者との会話（音声）内容をAIがデータ化し、電子カルテの書式に変換し下書きを作成するシステムを構築。1日あたり2時間分ものカルテ作成時間削減に成功している。

●メディア：情報収集・翻訳・要約・記事投稿までを自動化
AIに関するニュースメディア。ソースとなるニュースが非常に多く、キャッチアップが難しい状況にあった。そこで、ニュースリリースを取得し「ChatGPT」のAPIを活用して翻訳と要約を実行。加えて、RPAにより翻訳・要約したテキストをCMSに自動で書き込むことで、人は最終チェックを行うのみで記事が作成できる仕組みを構築。月15本のニュースがわずか30分の確認・投稿作業だけで公開できるようになった。

同社では、個別の顧客に対する受託開発と並行し、作成した生成AIをパッケージ化して業界各社に横展開していく成長戦略を描く。

受託開発だけでなく、生成AIに関する情報発信にも力を入れている。毎週、誰でも無料で参加できる「LLM Tokyo」というオンライン勉強会を開催、さらにそのレポートをメディアで公表しているほか、技術ブログも公開している。
「リクルーティングやマーケティングの狙いもありますが、それ以上にここで知識を得て、一人でも多くの人が生成AIを業務効率化に役立ててほしいという思いで行っています」と北爪氏は話す。

同社の設立は、2019年10月。北爪氏の業務効率化への問題意識が契機となった。
北爪氏は新卒で大手広告代理店に入社し、テレビCMの運用業務に従事。日々、ターゲットとなる視聴者に広告をリーチさせるための広告枠の最適化を手掛けていた。その作業は紙や口頭というアナログな手段であったため、一つの枠を変えるのに4営業日も要していたという。「そのため、月の残業時間は120時間を超えてフラフラになった」と北爪氏。
一方、インターネット広告の場合、広告枠の最適化は機械学習のアルゴリズムが需給の状況から自動的に割り出す。その所要時間はわずか0.1秒だった。
「テクノロジーの活用で、これほどまで生産性を向上させることができるのかと驚愕しました。この体験から、“テクノロジーで世の中を効率化する”というミッションを追求しようと思ったのです」（北爪氏）。
そして、インターネット広告の最適化に用いられていた機械学習のスキルを身に付けようとデータ分析受託会社に転職。1年半ほどPythonを用いたデータ解析などの経験を積んで、2019年10月に同社を創業する。
掲げたミッション、ビジョンは次のとおり。
MISSION：テクノロジーで世の中を効率化する
VISION：テクノロジーの力で作業を効率化し、一人ひとりのポテンシャルを最大限発揮できる世界を創る
まずは、前職同様のデータ解析業務の受託からスタート。その中で、ディープラーニングに触れる機会もあった。そのディープラーニングが進展し、「Transformer」と呼ばれる大規模言語学習モデル（LLM）から生成AIの「ChatGPT」が公開される。2022年11月のことであった。
「すごい進化をしていると感じ、この技術にスポットを当てて深掘りしていこうと決め、受託開発サービスをスタートさせました。それと同時に情報の収集と提供も始めたのです」（北爪氏）。
生成AIの受託開発へのシフトを始めてから半年ほど経った2023年8月頃から受注が急増。2024年2月の段階では、70～80％を占めるまでになった。
「従来のデータ解析もお客様の要望があればお請けしますが、基本的には生成AIに特化した専業として成長させていく方針です」と北爪氏は話す。そのためにも、生成AIに明るいエンジニアの増強は待ったなしだ。

2024年2月現在、同社のメンバーは役員である北爪氏のほか、社員のエンジニア3名、業務委託エンジニアが5名という体制。それ以外にも、「LLM Tokyo」参加者の半数を占めるエンジニアをリスト化し、受託案件に協力スタッフとしてアサインしている。

社員に対しては、次の12項目の行動基準を設けて仕事への取組姿勢を促すとともに、カルチャーづくりの基軸にしている。

1．どれだけ主体性を持てたか。その幅で、仕事の質が変わる。
2．健康を保った上で、できる限り頑張る均衡点までやり切ったか。
3．受け持った仕事に対して、あと一つ深く考えられたか。
4．どこまで自己否定できるか。その後、自己肯定できたか。
5．相手の立場に立った提案ができたか。提案力が仕事力である。
6．仕事の中で楽しさを感じることができたか。楽しむ者は最強である。
7．新しい情報をしっかり取りに行って、使っているか。情報が最重要。
8．新しい技術を人に説明できるくらい理解できたか。
9．人に上手く頼れたか。自分の能力を客観的に見ることも重要。
10．無理をしすぎていないか。無理をしすぎていたら、事前に吐き出せているか。
11．人のモノマネはすごく大事。人からどこまで吸収できたか。
12．得たものを転用することができたか。

この行動基準は、毎週の全体ミーティングでメンバーが一人ずつどこまでできたか、できなかったかを発表、共有し、今後の改善に生かしている。「今後、人事考課の評価項目にすることも検討する」と北爪氏。
また、このミーティングでは会社の状況や今後の予定、方針などについても共有している。
さらに、より大きなテーマでの議論や研修を、数か月に1回のペースでリアルに顔を合わせて行い、同時に親睦を図る機会も設けている。

なお、進化が非常に激しい生成AIについての情報収集は、主にSNSで行っている。特に、OpenAI社のエンジニアなど源流からの情報発信をキャッチし、自分たちで実際に試して「LLM Tokyo」の題材にもして知見を深めている。

働き方は、フルリモートワーク。社内でのコミュニケーションは、主にSlackを活用。技術情報を共有するチャンネルを別途設けて共有の徹底を図っている。

そんな同社が求めるエンジニア像について、北爪氏は次のように話す。
「変化が激しい世界にいるので、新しいものを積極的に試す好奇心や、変わることに柔軟に対応できる方に来ていただきたいと思っています。また、仕事は基本的にプロジェクトチームを組んで行うので、チームワークができる方であってほしいです」
時代を変える最先端の生成AIに思う存分取り組める同社。関心のある人には見逃せない募集だろう。