計測ネットサービス株式会社

建設・土木工事において、位置・距離・面積等を算出する“計測”や“測量”。かつては職人技であったこの業務のシステム化に大きく貢献したのが、計測ネットサービス株式会社だ。

建設業界は、様々な産業の中でも効率化が遅れていると言われてきた。なぜなら大規模であり、同じ形状もほとんどなく、量産できるモノづくりではないからだ。そのため、測量機を使いつつ手作業で測って記録する等、人の手で丁寧に作り上げることが重視されてきた。

2023年から代表取締役を務める荻野裕昭氏は、同社の創業についてこう語る。

「当社の創業者は測量機メーカー出身です。そこで目にしたのは、安全性が危ぶまれた建築現場でした。人が足場等の高いところまで測量機を運び、狭い空間で測量してメモを取る……。機材を落とすくらいであればまだ何とかなりますが、測量者の体や命に関わる大きな事故にも繋がりかねません」

人の手による測量は素晴らしい技術だが、その分危険性もはらんでいるのだ。

また長い間、建築業界では人材不足も大きな課題に。小まめに、あるいは広範囲を測らなければならない計測・測量は、時間と手間もかかる。「工事には欠かせないこと」とされつつも、現場が悩んできた業務だったのだ。

計測・測量という領域で自動化が進めば、“安全性の確保”と“省力化”が両方叶うのではないか――。そうして1998年に立ち上がったのが、同社だ。

かつて、建設資材レンタル企業の営業として活躍していた荻野氏。同社は建築業界でも有名だったという。もちろん、いち早く計測を自動化させたことでも一目置かれる存在だった。しかしそれだけでなく、道路や鉄道、橋梁、ダム等、同社のサービスはあらゆる工事現場で役立っている。ライバルでありながら、荻野氏は常に注目していたと話す。

そして、やはり安全性にも秀でていたという。「もちろん建築業界はどこも安全第一です。ですが、入札や納期を考えると、使用する機械やシステムの選定や導入も急がなければなりません。『製品のリリース情報だけは急いでほしい』と依頼されることも多いのが現状です。しかし当社は、まず工事の全容をヒアリングし、リスクヘッジを限りなく100%行ってからリリースします。その点で信頼度も高かったのではないでしょうか」（荻野氏）。

創業当時の思いから、“どこよりも安全第一”を貫いてきた同社。その誠実な姿勢が支持され続け、2023年で25周年を迎える成長企業となった。

同社を語る上で、徹底した“現場主義”を貫いている点は無視できない。

「組織としては中小企業ですが、この規模としては驚かれるぐらい大手のゼネコンと多数取引しています。計測システムの老舗という面はもちろん、やはり幅広いジャンルの製品を扱う点も評価いただけているのではないでしょうか」（荻野氏）。

建築関連システムの競合他社は増えているが、道路や橋梁等、専門分野に特化した企業が多い。しかし、大手ゼネコンはあらゆる領域の工事を手掛けている。例えば橋梁工事で同社の製品を使っていたところに、ダム建設の案件が舞い込んでくれば、ダム関連のシステムも扱う同社に頼めばスムーズだろう。こうして他のプロジェクトにも派生して依頼できるところは、同社の大きな強みだ。

ここまで広い範囲を網羅しつつ、スピーディーなシステム開発も評価を受けている。それでいて安全性や利便性（質）も確保されているのだから、クライアント側も安心して「計測ネットサービスに相談しよう」と考えるだろう。

しかし、ここまでの領域・スピード・質をどうやって実現しているのだろうか。その答えが、同社の“現場主義”にある。

「当社では、営業だけでなく開発エンジニアも現場に赴きます。実際に工事が行われる現場を見て、システムをどんな状況で使うか、どんな人が使うかをしっかり把握します。こうすることで当社は、多岐にわたる分野の工事のノウハウを積み上げてきました。また一方で、一つひとつのプロジェクトでも状況は違います。だからこそしっかり現場をチェックし、それぞれのニーズに合ったシステムを作るんです」（荻野氏）。

その結果、3次元変位自動計測クラウド管理システム『DAMSYS』、鉄骨建方管理システム『アーキポイントクラウド』、杭打設管理システム『パイルナビクラウド-Ｖ』をはじめ、多様な製品が活躍している。

上記の製品名からも分かる通り、近年はシステムのクラウド化にも力を入れている。中でも近年、注目を集めているのが『K-Cloud』だ。各システムから取得した情報を一元管理し、気象情報や騒音振動等のモニタリングも可能。そしてこうしたデータを、遠隔地でも管理できる優れものだ。

『K-Cloud』の開発を率いるのは、開発部部長の木村雅哉氏。

「現場で必要なデータは一つではありません。現場の傾斜や歪み、地域の気象情報等、様々な条件が絡み合って初めて工事は進むんです。社会でクラウド化が進む中で、『建築業界でも一つのプラットフォームで管理できる仕組みを作ろう』と、当社は乗り出しました」（木村氏）。

その結果『K-Cloud』は、大手ゼネコンでもかなり重宝されている。また忙しい現場スタッフが、スマホ感覚で簡単に操作できるUIも高評価だ。このように支持されるサービスの開発を生み出せたのも、同社の“現場目線”があったからだろう。

今後はVRやAI等、最新技術を取り入れたシステムの開発も視野に入れている。しかし、創業当時からの根本思想は揺るがない。

「どんなに最先端でもどんなに便利でも、人の体や命が関わる以上、安全性に代えられるものはありません。これからも安全を何よりも優先した上で、技術革新をしていきます」（荻野氏）。

建築業界における現場目線のモノづくりを全うしてきた同社。どうやら社員のやりがいも、この“現場主義”にあるようだ。

開発部をマネジメントする木村氏はこう話す。「自社開発をしていることや、実際に使われる現場を目の当たりにできることは、社員の大きな使命感に繋がっているようです。一つは大きな道路や鉄道のプロジェクトに携わり、人々の生活に役立っていること。そしてやはりもう一つは、システムを通じて工事現場で働く方々の命を守っていること。この二つの使命感は、みんな強く持っていますね」

普段の生活を支える街の道路の保全工事、広大なスケールで行われる線路やトンネルの開発――。同じシステムを作るにも、パソコン画面を目の前にした業務だけでは、そのイメージを持ちにくいかもしれない。だからこそ、現場に足を運ぶ。仕事の質が上がるだけでなく、自らの働く喜びにも繋がっているのだ。

こうした社会的影響力の大きな仕事をする分、大切にしていることもある。

「当社ではいくつかの行動指針を挙げていますが、中でも私が特に重視しているのは、“チャレンジ精神”と“スピード感”です」と、木村氏は話す。

技術がどんどん進歩していく中で同社は、より高い安全性と効率性を追い求めた開発を目指している。クライアントの悩みや要望を現場でキャッチし、最適なシステム開発や機能追加にチャレンジできることは、同社のミッションでもあり、面白さでもある。

また同社が支持される一つの理由は、競合を凌ぐほどのスピーディーな開発だ。これが叶うのは、現場を見られることや、営業とエンジニアがしっかり連携を取れることが大きい。

各エンジニアチームでは常に複数の案件が走っているが、こうした協力体制の下、質の高いシステムをテンポよく世に送り出せている。その結果、社員のワークライフバランスも充実している。

当社はこういった行動指針を複数設けている。しかしその上で、荻野氏はこう答えた。「やはり何より、現場を大切にする人と一緒に働きたいですね。現場を直接見て、そこで働く方々と直接話して。そうすることで、私達が社会の様々なインフラを縁の下で支えていることを実感できると思います」

現場に足を運ぶことが、クライアントへの貢献にも繋がり、自身の働く喜びにもなるのだ。

日本全国で活躍している、道路や鉄道、橋やダム……。そこには、同社のノウハウや思いが息づいている。「世の中に大きく貢献できる仕事がしたい」と考えるあなたに、ぜひ飛び込んでほしい。