M-TECを立ち上げるまでのキャリアは?
私のキャリアのスタートはIT業界ではありません。ホテルのバックヤード業務を委託で管理する会社で、業界では最大手の会社でした。その会社で13年間、多くの有名なホテルがクライアントで、私は最終的に東日本を統括するポジションまで上がりました。仕事はとても楽しかったのですが、ホテル業界は24時間365日休むことがありません。直接ホテル業務に関わっているわけではないとはいえ、年齢を重ねても不眠不休の業界で働き続けるのは体力的に難しいと考え、転職を志しました。 転職するなら勢いのある業界が良いと思い、選んだのがIT業界でした。ホテル業界で経営レイヤーに近いところで仕事をしていたこともあって、いつか独立して会社経営をしたいと考えていました。IT業界でいろいろ学んで、チャンスがあれば独立・起業を考え、SES会社に入社しました。PMOの業務を担当したのですが、周囲のエンジニアが自社の不満ばかり口にするのを聞いて、エンジニアが愚痴をこぼさずに働ける会社を作れば喜ばれると感じ、IT業界に入って半年で当社を立ち上げました。
M-TECを創業した背景は?
SESのビジネスは、分かりやすい利益構造です。お客様から受け取る売上からエンジニアの給与を差し引くと、会社の利益になります。実際はもう少し複雑ですが、大まかに表現すれば、そんな利益構造です。エンジニアの不満である「給与」の問題を解決するには、売上を上げるか、会社の利益を削るか。当社ではエンジニアのスキルアップを全面的にバックアップして「エンジニア単価」の引き上げ、つまり売上の最大化をする一方で、会社に利益をプールせずにエンジニアに還元する経営を実践してきました。 エンジニアの不満を解消するSES会社を作りたい、と周囲のエンジニアに相談したところ、思いのほか賛同してくれる人がいて、彼らと一緒に当社は船出しました。エンジニアの不満の第一は「給与」面でした。エンジニアが頑張っても会社が儲かるだけで、エンジニアに還元されない。ならば、エンジニアの努力に合わせて還元できる会社を作ろうと考えたのが始まりです。7人で始めた会社は、少しずつ仲間が増えて、20人を超えるまでになりました。
M-TECはどんな会社ですか?
当社がエンジニアに高還元する根底にあるのは「みんなで楽しく働きたい」というシンプルな思いです。エンジニアは結構「個」で戦っていると感じています。フリーランスのエンジニアが顕著な例ですが、SESで働くエンジニアも結局は個人のスキル。個ができることには限りがあり、仲間が集まってリソースやアセットを共有することで、豊かな人生を歩むことができると信じています。IT業界では経験を積んだエンジニアがフリーランスになって稼ぐという話もよく耳にしますが、フリーランスになると営業や経理も自分でやらねばならず、エンジニアワークに集中できないと聞きます。当社に所属するエンジニアは、フリーランスのような働き方をしながらバックオフィス業務は会社に任せられます。 会社はエンジニアが快適に働くための「箱」だと思っています。どうせなら、みんなが楽しめる「おもちゃ箱」のような会社にしたいという欲張りな希望があります。私の前職の会社は上場企業で、制度等が整っている一方できっちりしたルールが定められており、社員はその中で働いているイメージでした。当社はもう少し自由な組織にしたいと思って12年間、組織運営をしてきました。今後、若手エンジニアの採用を増やし、彼らが先輩エンジニアのようなスキルを持つに至った暁には、会社を譲りたいと思っています。
M-TECの今後の展開は?
今の会社の仕組みを維持するには、経験豊富な“強いエンジニア”が必要です。強いエンジニアが集まってできた会社ですから、安定した収益を稼ぐことができ、それを経営の土台に据えることで高還元を実現していました。今後はSES事業の幅を広げ、ロースキルのエンジニアでもキャリアアップが目指せる仕組みを作りたいです。「下流工程」に携わりながら「上流工程」を学んで“強いエンジニア”になる。それを仕組み化できれば、一人でも多くのエンジニアを幸せにできると思っています。
仕事をする上で大切にしていることは?
チームワークですね。ホテル業界でのキャリアが長かったこともあって「ホスピタリティ」は私の内面に根付いています。おもてなしは、一人ではできません。ホテル運営に関わる全ての人の協力があって、宿泊客に最高の体験を提供できます。その意味でいえば、エンドユーザーのことを考えるのも大切にしています。当社にとってクライアントになるのはベンダーです。けれども、その先にはシステム開発を発注しているエンドユーザーがいます。当社のエンジニアはエンドユーザーともやり取りのあるポジションで働くエンジニアが多く、常にエンドユーザーを意識した動きを重視しています。 当社は第二創業期に入ったと思います。エンジニアがやりたいことをやれる会社にするのが、次の目標です。言葉は悪いですが、若いエンジニアには当社を上手く活用して、自分のやりたいことを実現してほしいと願っています。社員ともよく話題にしますが、IT関連のことではなくても構わないと思っています。カフェがやりたいと思っているエンジニアがいれば、会社で可能な限りのバックアップをします。