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インタビュー画像代表取締役 CEO 大江 洋治郎氏

TRUSTARTを創業するまでのキャリアは?

銀行員だった母の影響で、お金や資産という人にとって大切な人生の要素に関わる銀行で働いてみたいという思いは、幼い頃からずっと抱いていました。新卒入社する企業として銀行を選んだのは、私にとって自然な流れでした。銀行の中でも「信託銀行」を選んだのは、年金や株式、不動産等の知識も付き、ビジネスパーソンとしてスキルアップが望めると考えたからです。中でも業界をリードする信託銀行を第一志望として就職活動を行い、希望が叶って就職できました。 最初はリテール部門で富裕層の顧客を中心に遺言書の作成や遺産の整理、不動産売買の仲介等に携わりました。その後社内公募で法人営業に異動し、大企業向け融資の営業を経験しました。私はソリューション提案営業をしたかったのですが、金融商品のセールスがメインの業務でイメージしていた仕事と異なり、自分の成長曲線が鈍化する懸念を感じ、東京にある大学のビジネススクールに通い始めました。

独立・起業を意識し始めたのは、いつ頃ですか?

起業を意識してビジネススクールに通い始めたわけではありませんが、私が学んだゼミは「アントレゼミナール」と呼ばれており、同世代の起業家・経営者の卵と机を並べて勉強することで大きな刺激を受けました。私は、起業家の落合陽一さんやSHOWROOMの前田裕二さん等と同世代。彼らがビジネスの世界で活躍する姿にも刺激を受け、いつか自分の手でビジネスを創造したいという思いが湧き上がりました。 銀行での仕事が嫌いだったわけではありません。だからまずは銀行の中でチャレンジしてみようと、社内公募で新規事業開発の部署に異動しました。そこではローン商品の企画や、社内ビジネスコンテストの企画運営に取り組みました。自らの手でビジネスを作るという希望に少し近付くことはできましたが、同時に大企業特有のガバナンスや銀行法による様々な制約に直面し、銀行ではスピーディーな新規事業開発が難しいことも実感しました。

TRUSTART株式会社を立ち上げた経緯は?

「スピード感を持って事業開発がしたい」という思いと、「銀行に貢献したい」という思いを同時に実現する方法として編み出したのが「出向起業」というスキームです。「出向起業」という制度は、銀行からの出向という形をとって社外で起業し、状況を見ながら銀行が買い戻して自行の事業に組み入れるか、そのままスピンアウト(独立)するかを決めるという二つのオプションを持った仕組みです。大企業のバックアップを受けながら、銀行のガバナンスに縛られず自由かつスピーディーに事業開発を進められます。2年かけて自ら出向起業の制度を作り、その第1号として2020年に創業したのが当社です。 創業から2年後の2022年、当社を信託銀行の100%子会社にするかスピンアウト(独立)するかという話し合いを行いました。ビジネスモデルの性質やデータを扱うという側面から、銀行法をはじめ多くの制約がある銀行子会社よりも、外に出した方がスケールできるのではないかということになり、最終的に当社はスピンアウト(独立)、私も完全に転籍という決定がなされました。銀行内での新たな文化の醸成や人材育成の枠組み作りといった観点から、成果や財務的なリターンは度外視した形で実行されたと聞いており、大いなる決断に大変感謝しています。

事業ドメインに不動産業界を選んだ理由は?

銀行でお客様の不動産売買や有効活用の提案に関わる中で、不動産営業担当者の多忙さを知りました。その原因の一つが「不動産調査」だと感じました。取引する不動産に関する情報を集めて精査する作業なのですが、アナログな業務が非常に多く大変です。しかも、そんな大変な不動産調査をそれぞれの不動産会社が独自に行っています。下手をすると同じ会社でも担当者が違うと調査を重複して行っているケースもあるんですよ。実態を知って、不動産業界にある“大きな無駄”の解決がビジネスになると直感しました。 最初は不動産調査の代行に近い形でビジネスを組み上げ、不動産調査の結果をデータベースとして蓄積しました。並行して自社でデータベースの拡充を推進してきました。データベースの構築には、当時は外部エンジニアに依頼しましたね。出向起業という形で起業したため、銀行が買い戻して100%子会社になる可能性が残っている間は正社員の採用ができず、役員以外は業務委託と派遣、そしてインターン学生のみでサービスを運営せざるを得なかったんです。スピンアウト(独立)が正式に決まったタイミングでエンジニア採用を始め、現在は内製化できるようにエンジニアチームの採用を加速させています。

創業からこれまでを振り返り、印象に残っている出来事は?

当社の転機となったのは、2023年にリリースしたSaaS『R.E.DATA Plus(リデータプラス)』。それまで不動産データベースから抽出したデータをExcel形式でお客様に納品していましたが、SaaSプロダクトにすることでお客様が自由に検索できるようになりました。不動産データベースの構築だけでなく、作り上げたデータベースを中心にSaaSを開発し、お客様に価値提供できる仕組み作りができたことで、不動産業界のDXに本格的に参入することができました。 エンジニアの採用に関しては、ベンチャーキャピタルの協力もいただきました。資金だけでなく、事業をスケールさせるためのノウハウを提供してくれるのもベンチャーキャピタルを利用するメリット。IT業界の知識が不足していた私にとって、ベンチャーキャピタルのサポートはこの上なくありがたいものです。 一方で、不動産情報の収集やデータベース化は、テクノロジーの力だけでは解決できない問題だと考えています。アナログなデータを収集してデジタル化するには「人」の力が必要です。「TRUSTART」の社名の通り、何事も「信頼から始める」を念頭に置いて、「人」と「テクロノジー」の力で不動産業界に止まらず、あらゆるビジネスのDX化にチャレンジする企業であり続けたいと願っています。

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