株式会社ALGO ARTIS

株式会社ALGO ARTISは独自のAI（アルゴリズム）により、社会基盤を支える複雑な運用計画の最適化ソリューションを開発・提供するスタートアップだ。元々はDeNAの中でAIを活用した新規事業としてスタートし、より事業を加速させるために2021年7月にスピンオフして設立された。設立3期目ながら、前年比100%を超える売上成長率を達成し、順調に事業を拡大している。フルオーダーで実装する現行のソリューションに加え、今後はスピードとコストパフォーマンスを重視した生産計画最適化SaaSとの両輪体制を構築し、さらなる事業成長を目指す。ビジョンである「社会基盤の最適化」の実現に向けて、IPOを視野に入れ組織体制の強化に努める。

代表取締役社長の永田健太郎氏は宇宙物理学で博士号を取得後、社会を支える産業の役に立ちたいと、製造業を中心としたIT・業務コンサルティング企業に入社したというユニークな経歴を持つ。背景にはどのようなきっかけと考えがあったのか、永田氏が自身の言葉で語ったインタビューページの一読をぜひとも勧めたい。
そうして社会に出たものの、入社1年目にしてリーマンショックに見舞われ、会社は民事再生を行うという予想だにしない状況を経験する。そして、「中にいる人達が面白く、エネルギーを感じた」というDeNAに転じ、12年間にわたり在籍。最後の4年間で、AIを活用した新規事業の創出を任される。

事業の「タネ」を探し、100社を超える企業へのヒアリングの中で出会ったのが、同社創業のきっかけとなるプロジェクトだった。そのプロジェクトとは、発電所の燃料運用計画を作成する業務である。しかし、この計画は非常に複雑で、人間の頭脳だけでは解決し切れないレベルの難易度を持っていた。それでも熟練した担当者が何とか対応し、必ずしも最適とは言えない計画を作り上げることで運用を続けていたのだ。
当時は一人の熟練者しか計画作成を担当できず、他の人に引き継ぐこともできていない状態。永田氏はその状況に不思議な感覚を覚えた。なぜならば、そうした実務的な計画は、理論上はロジカルに解決できる問題であるはずだからだ。
技術的には非常に難しい挑戦だが解決可能であり、大きな未解決の問題として取り残されている分野だった。まさにイノベーションのチャンスを見出した瞬間だ。

永田氏はDeNAの中で組成されていた強力なAIエンジニアチームと共に、技術的な困難を乗り越えるために試行錯誤を繰り返していく。
一方でインフラを中心とした社会課題の解決にフォーカスする事業と、当時のDeNAとのシナジーは薄く、それ以上の人材と資金を投入してもらうのは難しかった。互いにとってより良い形で事業を成長させていくために、スピンオフして設立したのがALGO ARTISなのだ。

提供するサービス『Optium（オプティウム）』は、資源運搬の配船や燃料運用等、極めて複雑で変化の激しい計画の最適化に特化したソリューションだ。各企業の要件に応じ、運用上のあらゆる条件を取り込んだ上で、高度なアルゴリズムによって人間では策定不可能なレベルの高収益・低リスクの計画を自動で出力する。導入企業からは「計画策定時間を90%削減することに成功した」「出力された計画を活用しコストを年間数億円削減できた」といった声が寄せられている。

導入のプロセスにおいて、問い合わせ段階では顧客自身もゴールイメージが明らかでない場合が多い。各企業の悩みや課題も異なるため、アセスメントのフェーズからアルゴリズムエンジニアが同席し、技術的なフィジビリティや難易度と要件を紐付けてコンサルタントと共に高度な提案を行う。最初からエンジニアが参加し、ビジネスメンバーと二人三脚で進めることが同社プロジェクトの特徴だ。その後、スモールプロジェクトとして顧客と同社のチームが協力し、週次で進捗を確認しながら1年程度でアジャイル的に導入を進める。

老舗スケジューラーメーカーや大手SIerと比較される場合もあるが、現状で同じレベルで解決策を提供できる企業は他にない。強みはスピード感と質の高さ、細かなカスタマイズが可能であること。そして何より、立ちはだかる高い壁を必ず乗り越えるという強固な意志を各メンバーが例外なく持っている点だ。永田氏は「言われたことをただこなすマインドはなく、社会のために心底役に立ちたいと願っている。個の強い意志こそが、圧倒的な競合優位性です」と話す。

同社が3期目にして順調な成長を遂げている要因は、社会にとって真に価値ある事業を展開しているからに他ならない。世にある多くのソリューションは、賢く「実行」することにフォーカスしている。しかし、その「計画」は人が立てている。この現状はアンバランスだと、永田氏は指摘する。

「計画はあらゆるビジネスの根本であり、社会全般に大きなインパクトを与えます。計画の立案は職人的な技能に依存していますが、当社のソリューションは個人の経験則や勘に基づくノウハウといった暗黙知を形式知化し、標準化にも役立ちます。若手や新人でも理解、納得できるレベルで複雑な運用ルールが整理され、属人化を排除することも叶います。膨大なパターンが存在する計画の領域で、人間が最適な計画を抽出するのは不可能であり、AIを活用した計画の方が圧倒的に優れている。私達は本質的に価値あるものを提供しており、事業の成長は必然です」

同社には、高いレベルでキャリアを重ねた優秀な人材が集う。特に技術力の根幹を成すアルゴリズムエンジニアのチームには、競技プログラミング大会の上位入賞者を含む世界のトップレベルが集結している。
「優秀な人と働く環境と、難しくもやりがいのあるプロジェクトを惜しみなく提供します。この構造を崩さず、常に高いレベルを追求し続けて最強の組織を作ります」と永田氏は力を込める。

同社では、リモートワークと出社を組み合わせたハイブリッドなワークスタイルを採用している。日常のコミュニケーションは主にチャットツールを通じて行われ、効率的な情報共有が可能だ。しかしながら、顔を合わせた対話でこそ伝わる雰囲気や理解があると、対面での交流も重視する。そのため可能であれば出社することが推奨されるが、強制やルールはなく個々の判断に任されている。経験豊かなメンバーが多いため、各々が最もパフォーマンスを発揮できる働き方を選択している。
全員が集まるのは、月次の定例会議だ。今後組織が大きくなった時には、合宿等を通じてチームの団結を図ることも検討されている。

企業風土は「顧客にとってベストな選択か」を問い続ける誠実な姿勢が特徴的である。顧客への価値提供にこだわり、その一部を利益として受け取るという理念が徹底されている。この理念に共感を抱くメンバーが集まっており、常に根本原則を重視して提案の質を向上させるよう努めている。
メンバーの能力開発とスキルアップに関しては、学びへの貪欲さを持ち続け、自ら成長することが基本とされている。仕事そのものが人を育てると考え、座学はあくまで補助的な役割を果たす。メンバーは創意工夫を凝らし、壁にぶつかりながら問題を解決することで、本物の能力を磨いている。

求める人物像は、仕事が好きで、事業への熱意を持つ人。ワークライフバランスを保つための転職ではなく、事業を通して社会に貢献できる場を探している人材である。同社はやり方が固定されていないスタートアップであり、自ら道を切り開く積極性が必要とされる。また成長意欲が高く、自己反省できる素直さも大事にしている要素だ。これはエンジニアだけでなく、コーポレート部門にも共通して求められる姿勢である。一般的にコーポレート部門は専門性が強く、スペシャリストになりがち。しかし永田氏は「会社の目的である『提供価値の最大化』に向けて、自らの領域にとらわれず主体的に行動できる人材を求めたい。コーポレート部門も同様で、事業部門の悩みを一緒にクリエイティブに考える姿勢が大切です」と話す。

日常生活で享受する利便性や安定した供給は、社会基盤を支える企業の努力によるものであり、これらの企業の計画の精度が社会全体に大きな影響を与えている。同社はこの計画を最適化し強化することで、社会に貢献しようとしている。
事業やビジョン、カルチャー等、興味を抱いたポイントがあったならば、まずは話を聞いてはどうだろうか。