ご略歴と、御社を創業した経緯をお教えください。
1993年の大学卒業後に都市銀行に入行し、支店に配属されて主に中小企業向けの融資業務を手掛けました。経営者を相手に財務や企業経営についてやり取りし、自分が成長できている実感を味わうことができたのです。その仕事で活躍できたので、東京本部の為替ディーリング部門という花形部署に栄転しました。しかしながら、為替市場を相手にするディーリングは、“勝ち”か“負け”しかない世界です。組織のしがらみもある。経営者を相手に、その企業の発展を考える仕事と全く異なり、自分には不向きと感じました。 けれども、花形なので「負けたくない」と連日の深夜残業で無理をしていたわけです。それがたたって倒れてしまいました。急を聞きつけた母親が上京して病院に駆けつけてくれたのですが、これ以上心配をかけたくないと1998年に退職。そして、とにかく日本を飛び出そうとオーストラリアに1年ほど留学し、銀行とは対極的な会社をつくろうと考えたのです。 それでも、銀行の経験と1年程度の留学では材料不足だと思い、何かの機会を探していた時に、PC周辺機器の会社が主催するPC組立の講座に着目しました。受講し自分でPCが組み立てられることに感激し、周囲に話すと「作ってほしい」と何人もから頼まれたのです。これは商売になると、個人事業でPC組立販売業を始めました。知人を介して仕事のパートナーも得ることができました。 その後、IP電話の代理店を始めたのですが、トラブルが続いてつらい時期を過ごしました。そんな時期を陰で支えてくれた母親を心筋梗塞で亡くし、自分がその予兆を知っていてもケアしなかったことも重なってどん底の状態に落ち込みました。 そこから再起した時に、ネットワークからエンジニアを採用することができました。現在の取締役である丸山宣弘さんです。このことを機に、2005年12月、当社を設立することにしました。人を集めて組織化し、本格的に事業を行っていくためには信頼性のある株式会社にする必要があるとの判断です。 丸山さんは早速ポータルサイトや『Siteビルダー』という自社サービス/プロダクトを開発してくれ、これが売れ始めたのです。これを基盤に、徐々にサービスを広げてきました。
御社をどういう会社にしていこうと考えてきましたか?
銀行を反面教師としたにもかかわらず、自分の中に銀行の組織風土の体質が染み込んでいたのでしょう。集めたメンバーが会議に遅刻したり、ネクタイの1本も持っていなかったりといったことに対して怒ってばかりいました。すると、メンバーはがっかりして離れてしまったのです。猛省しました。それが原点となって、メンバーがイキイキと仕事を楽しみながら取り組めるような、今の当社の自由な風土ができてきたと思います。
社員に対して期待することや、社員が御社でどんな人生を過ごしてほしいかの思いをお聞かせください。
私がそうでしたが、人生には楽しいこともつらいこともあります。仕事はいいことばかりではなく、騙されたり裏切られたり、クレームを受けたりと厳しいことも沢山あります。 けれども、そうした経験をすることで、人として一回りも二回りも大きくなれるような気がします。仕事でお客様の課題を解決するとともに、自らの心の解決もできるようになります。 社員は、そういった経験をしながら成長し、家庭を持ち、家族のことに苦労や喜びを感じ、人間的な成長をしていってほしいと願っています。 そして、ぜひ経営者になってほしい。当社がホールディングス化し、グループ体制にしようと考えているのは、その受け皿づくりという側面もあります。 もちろん、エンジニアやデザイナー等、スペシャリストとして全うしたいと考えている人も私はリスペクトしています。一方、当社の多角的な事業構成や風土の特色を考えると、ゼネラルな思考の人の方が経営には向いていると言えるでしょう。 求職者の方に対しては、ぜひ当社で自分のやりたいことを自由に表現し、夢や希望を叶えて幸せを手に入れていただきたいと願っています。
加藤さんの仕事観をお聞かせください。
10年ほど前、仕事で初めてフィリピンに行った時、当時ビジネス街と川を隔てた向こう側にバラックが並ぶスラムがありました。足を運んでみたのですが、子供達は拾ったゴミを売ってお金を稼いでいました。その子たちに「仕事とは?」と尋ねれば、「生きるためにすること」と答えるでしょう。 一方、日本人の私は「自己実現のため」と答えるように思います。マズローの欲求5段階説は、一番下に「生存の欲求」があり、上に「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」と重なり、一番上は「自己実現欲求」となっています。さらに、その上には「社会貢献欲求」があるのだろうと思います。 このように、仕事の意味は環境や場所、時代で異なるものですが、下の階層の上に成り立っていることを知り、上を目指して努力すべきことだろうと思います。さしずめ、今の私はいかに社会に貢献すべきかを考える必要があります。
オフタイムは、どういった過ごし方をしているのでしょうか?
釣りが好きで、川や海に経営者仲間と行くことが多いですね。キャンプも好きですが、自然に親しむことが好きです。 社員とも楽しみたいので、先日、潮干狩りにでも行こうかと思いました。ところが、社長がそう言い出すと忖度して参加するメンバーがいるかもしれないと考え直したのです。そんな風土ではもちろんないと信じていますが、そんな気を使わなくてもいいようになりたいですね。