株式会社セルシス

イラストやマンガ、アニメなどのクリエイターの創作活動をデジタルで支援する、株式会社セルシス。イラスト・マンガ・アニメーション制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT」、世界中のクリエイターの創作活動をサポートするためのコミュニティサービス「CLIP STUDIO」の提供や、電子書籍ソリューション「CLIP STUDIO READER」等の、コンテンツ制作・流通・閲覧にまつわるソリューションを提供している。

自社主力製品の「CLIP STUDIO PAINT」。2012年の発売以来、4,500万人以上が利用するグラフィックアプリだ。Windows／macOS／iPad／iPhone版に加え、2020年にはGalaxy／Android／ Chromebook版もリリース。日本語版に加え、英語/韓国語/中国語(繫体字/簡体字)/フランス語/スペイン語/ドイツ語/ポルトガル語/タイ語/インドネシア語の11言語をそろえ、世界中のクリエイターにも利用されている。
「当社は1991年の設立からこの分野で事業を手掛けており、20年以上にわたる歴史と規模において日本随一の製品であると自負しています」と代表取締役社長の成島 啓 氏は胸を張る。

「CLIP STUDIO PAINT」の特長は、イラストやマンガ、アニメーションの制作に最適化すべく、線を引いて色を塗る“ドローイング”に特化しているところ。
「この技術において、かゆいところに手が届くような細かい機能を充実させ、作業を効率化させるとともにスキルの低いユーザーでも作品づくりを楽しめる工夫を盛り込んでいます」（成島氏）

例えば、ペンタブレットで線を引いた後に、色で塗りつぶす場合。線を引く時にどうしてもすき間ができ、その部分から色が塗り溢れてしまう場合がよくある。本製品は、こうした場合に隙間を認識し、ユーザーが思った範囲を塗れるように設定できる機能が盛り込まれている。また、ペイントアプリでありながら、3Dデータも扱う機能も実装。キャラクターの難しいポーズを描く際に、モデルを自在にポージングさせるとともに360度の自由な角度からトレースできる機能を搭載した。他にも数々の便利な機能が実装されているが、ユーザーの声に密に応え続けてきた集大成といえる。

クリエイターの創作活動をサポートするサービスは、大きく2つのサービスがある。1つは、主に900万人以上のクリエイターが登録している「CLIP STUDIO START」の運営。例えば、マンガやアニメの背景などの素材を、誰でも提供できるマーケットプレイスがある。また、「CLIP STUDIO PAINT」の使い方講座や、同製品に対する要望や不具合に関するQ&Aが見られるページもある。また、メールでのサポートも同社のメンバーがすべて応対している。「""神対応""をキーワードにしています」と成島氏。

もう1つは、電子書籍ソリューション「CLIP STUDIO READER」の提供だ。これは、2003年にスタートした、世界初の“携帯でマンガが読めるプラットフォーム”をベースとしたソリューション。1,200以上のサービスで採用実績があり、マンガや写真集、アニメ、小説などあらゆるタイプの電子書籍をカバーし、現在、スマートフォンを中心に幅広く利用されている。

同社は、将来に向けての成長戦略にも手を打っている。

まずは、クリエイターの様々な創作活動を支援するWEBサービスを、日本だけではなく、世界中のクリエイターに提供する活動に力を入れている。「時間や距離をこえて、世界中のクリエイターが創作活動に没頭できるWEBサービスを提供していきたいと考えています」（渡邊氏）

もう一つは、創作活動における表現様式の革新へのアプローチだ。
「当社では、マンガやアニメなどのコンテンツは、“ストーリーを、ビジュアルを使って誰かに伝えること”と定義づけています。これまでは、技術やコストの制約条件のもと、紙に印刷したマンガや、セル画を撮影したアニメという表現様式がつくられ、その上でコンテンツが提供されてきました。

そして今は、スマホやタブレットが普及しています。しかし、そういったデバイスで提供されているコンテンツは、既存のものをそのままアップしているに過ぎないレベルが大半。最近、縦スクロールコミックというスマホに最適化した表現様式が登場しましたが、こうした動きは今後活性化すると思います。当社では、クリエイターにこうした新しいデバイスにふさわしい新たな表現様式を創出してもらうべく、ヒントになるようなツールを提供していきたいと考えています」（成島氏）

同社はこれまで、デジタルアニメ制作ソフト『CLIP STUDIO ACTION』や3Dデータセットアップソフト『CLIP STUDIO MODELER』からなるCLIP STUDIOシリーズの周辺製品もリリースしている。今後も、こうしたラインナップを拡充し、クリエイターの創作意欲を触発する様々なツールやサービスを提供していく考えだ。

同社の企業風土について、成島氏は「フラットで風通しが良く、前向きなところ」と言う。それを象徴するエピソードがある。
「当社では、グループチャットツールを導入して、マネージャーやエンジニア、デザイナーなどあらゆる職種の人が分け隔てなくディスカッションできる環境をつくっています。私ももちろん加わっていますが、アルバイトスタッフからも私宛に直接提案や要望が入ってきますよ」と成島氏。社員数200人以上の組織では、そうそうあることではないだろう。「ちなみに”出る杭は伸ばす”方針で、独自のアイデアや技術力を持つ人材が、より輝けるように全力でサポートします」と横塚氏は言う。

人事評価制度にも特徴がある。「ITの業界は変化が速いので、1年というスパンでは長すぎる」（成島氏）と、四半期ごとに自ら目標設定し、3カ月後にその達成度合いを上司と評価し、次の目標を決めるというサイクルを回している。
「給料も3カ月ごとに増減します。すぐに成果を反映することでモチベーションのアップにも繋がります」（成島氏）

開発体制の最大の特徴は、何といってもユーザーとの距離の近さだろう。
同社では、開発からユーザーサポートまで、すべての業務を自社のメンバーが遂行している。このため、エンドユーザーの問い合わせや要望が、開発現場までダイレクトに伝わる。
「プロダクトが高評価のときは素直に喜び、厳しいご指摘には真摯に対応していきます。まだまだ実現できていないご要望もたくさんありますが、少しでも多くの機能をユーザーに提供していきたいですね」（横塚氏）
もちろん、時代の進化に応じて、エンジニアやデザイナーの側から改善することが基本にある。
「ユーザーも気づいていない面がありますから、『この機能を盛り込んだら喜ばれるに違いない』と提案型で開発できることが理想です」（横塚氏）このため、社員の自己啓発支援は惜しまない。「『勉強を兼ねて海外の展示会に行きたい』といった希望にも応えている」と成島氏。

現在『CLIP STUDIO PAINT』は4,500万ライセンスを突破。うち半数を海外のユーザーが占めるという、グローバル製品に育っている。
「世界中のクリエイターの作風や価値観にも触れられる、刺激的な職場です。新しい技術への感度が高く、放っておいても仕事抜きで自分から学ぶような方にぜひ来ていただきたいですね」と成島氏は結んだ。

数々のイノベーションでデジタルコンテンツ分野のフロンティアを切り拓いてきた、株式会社セルシス。東京証券取引所上場企業としての社会的信頼も得た今、新たな事業の柱を立ち上げた。
それが2022年12月にセルシスの子会社である「株式会社＆DC3」を通じてローンチした、コンテンツ流通基盤ソリューション「DC3」だ。

DC3は、あらゆるデジタルコンテンツを唯一無二の「モノ」として扱うことができるようにする、コンテンツ流通基盤ソリューションであり、
DC3で流通するコンテンツは、デジタルでありながら、現実世界でリアルな「モノ」を所有しているかのように扱うことができるという。
そして、デジタルコンテンツの大量消費や投機的な扱いではない、コンテンツを愛してくれる人たちが、もっともっと幸せになれる世界の実現に向け、デジタルコンテンツのマーケットや文化の創出に取り組んでいる。

ローンチ以降、すでにデジタルコンテンツサービスを運営するサービス事業者や、プレイヤー提供者、クリエイターやIPホルダーといった様々なコンテンツ提供者にDC3のサービスが使われ始めており、今後も更なる展望が期待できる新事業だ。