株式会社グッドサイクルシステム

株式会社グッドサイクルシステムは、薬局やドラッグストア向けの業務支援システムをはじめ、医薬品業界や薬剤師、患者を支援する数々のシステムやサービスを手がける会社だ。主力プロダクトは電子薬歴。PC版の『Tomorrow Pharmacy21』からスタートし、2012年にはiPadで使う『GooCo（グーコ）』をリリース。大手薬局チェーンなどに採用されて広まっている。現在、PC用とiPad用の両サービスを合わせ、全国に調剤薬局が約6万店あるなかで約5,000店、率にして8％の店舗に採用されているという。

多くの電子薬歴がレセコン（レセプトコンピューター。医療機関の診療報酬明細を発行するシステム）のオプションのような位置づけにあるなかで、同社の電子薬歴は薬歴作成に特化し、使いやすさと患者とのコミュニケーションに役立つ様々な機能を持つことが特徴だ。そのため進取の気性に富み、薬局の役割や価値を真摯に追及する、言わば真面目な薬局に受け入れられ広まって来た。医薬分業の考えの下、現在は薬剤師の専門性が高まり、医療従事者としての役割が増していることは同社にとっても大きな追い風になっている。薬の領域から日本の医療、ひいては国民の生活の質の向上の一助を担うという気概を持って、これまでもこれからも事業に邁進し続ける会社だ。

このユニークな会社を立ち上げたのは、代表取締役の遠藤朝朗氏だ。大学卒業後、BtoBの営業や係数管理業務に携わった後、1997年、社会的使命の大きさや成長性、有望性に魅力を感じ、医薬の業界に飛び込んだ。最初は電子カルテの開発会社、次に、当時世の中に出始めたばかりの電子薬歴システムを手がける会社だ。当時社長一人だけだったその会社に社員1号として入り、5年余りで40名の会社へ成長。

会社が規模拡大していく中で、薬剤師業務の効率化が主眼となり患者目線が欠けていると考え始めたときに、ユーザーの薬剤師から新しいシステムのヒントになる相談を受ける。「薬剤師さんが、もっと患者さんの役に立ちたいという思いから相談して来てくれました。それは、今まで自分が手がけてきたものとは違うもので、これなら会社を作って挑戦する意味があると思いました」と、遠藤氏は振り返る。その相談とは、処方箋受付時に患者にヒアリングを行い、薬学的診断を行う「先確認・先指導」を実現したいという至極真っ当なもの。その要望に応えるツールを提供すべく、独立して立ち上げたのがグッドサイクルシステムだ。2004年12月のことだ。

「先確認・先指導」をコンセプトに生まれたシステムが、電子薬歴の『薬局フロントシステムKY2』だ。構想に賛同した大手薬局チェーンからも協力を得ることができ、共同で開発にあたった。リリース後は、その大手薬局チェーンが導入したことが何よりもの宣伝になり、事業は順調に拡大。そして2012年、満を持して登場したのがiPad版の『GooCo』だ。受付、調剤、服薬指導と何役もこなす薬剤師。忙しく動きまわる彼らにとってPCは使い勝手が悪いことに加え、かねてから「先確認・先指導」は、患者に画面を見せながら実施できればより便利だという思いがあった。2010年に、手軽に持ち歩けるiPadが登場したとき、遠藤氏は「これだ」と思ったという。

2012年のリリース後は、その利便性が支持されて急速に普及。一躍、グッドサイクルシステムの主力製品になった。『GooCo』は、業界の先陣を切って導入されたタブレット版のシステムだ。総じて慎重で保守的な医薬業界にあって、常に「より患者さんのためになるにはどうしたらいいか」と考える問題意識の高い薬剤師のニーズを形にした。『GooCo』の好調を目にして、少しずつ追随する競合商品も出てきているが、依然としてトップランナーとして存在感を示し続けている。

「『GooCo』が受け入れられた理由は二つ」と遠藤氏は言う。一つはもちろん、圧倒的な利便性だ。いつでも、どこでも見て、書けて、患者への説明ができる。薬剤師の声を丹念に拾い、現場から「便利だから入れてほしい」という声が起こるような使いやすさを追求した。もう一つは費用対効果だ。『GooCo』は、他社の昔ながらのPC用の調剤システムと比べると決して安くはない。投資以上の価値を打ち出すべく、経営者の目線に立って単なる電子化だけではない省力化、効率化に取り組んだ。その成果が「1分薬歴」だ。薬剤師の仕事のなかで時間をとられる薬歴の記入が、『GooCo』では服薬指導をしながら、画面をタッチしていく仕組みで進められ、本当に1分で完了できる。労働環境の改善や優秀な人材確保にもつながる大きな特長だ。

少子高齢化を背景に大きな成長が見込まれる医薬のマーケット。そのなかで遠藤氏が特に注目しているトレンドは、在宅医療とセルフメディケーションだ。セルフメディケーションとは、軽症の場合などに市販薬を活用して自分自身で治療を行うことで、医療費の抑制を目指す国が推奨している。「かかりつけの薬屋さん」として、薬剤師が相談や指導にあたる場面はますます増えるだろう。また在宅医療が進展すれば、薬剤師は薬局を飛び出して患者の元に行く。いずれも患者と薬剤師の関係は今以上に密になり、処方箋通りに薬を出し、カウンター越しに接しているだけの存在ではなくなる。そのときにタブレッドはますます威力を発揮するだろう。国の目指す医療環境の実現に向けて、グッドサイクルシステムは重要なインフラを提供する役割を担う。

「家族を連れて行きたい薬局を作ろう」。これは、グッドサイクルシステムが掲げる行動指針だ。自分はさておき、家族に対しては最高の医療を受けさせたいと思うのが人の常だろう。薬も同じだ。同社が直接、サービスを提供するのは薬局や薬剤師だが、その先にいる患者に資することが常に念頭にある。薬局や薬剤師が身近な存在になり、活用されることで患者のQOLが向上し、ひいては社会が良くなる。同社は、その実現の一翼を担う。

だが、遠藤氏の構想はこれだけではない。薬剤師が薬局を飛び出し、タブレットを片手に患者の元へと出向くようになれば、薬剤師にできることはもっと広がる。「薬剤師は、物販機能を持つ唯一の医療従事者です。患者さんが必要としているのは必ずしも薬だけではありません。買い物など日常生活に困り、結果としてQOLを落としている患者さんもいるでしょう。患者さんと接点があり、生活ぶりを理解する薬剤師なら、タブレット一つあれば必要なものをドラッグストアで手配するなど、生活に踏み込んだ形での支援もできるのです」（遠藤氏）。コンビニエンスストアと同様に、今後は薬局やドラッグストアも生活のインフラとしての役割が増していくだろう。既に地域に密着した事業を展開するドラッグストアなどとも話しながら、『GooCo』のさらなる可能性を追求しているところだ。

そんな社会課題の解決にも取り組むグッドサイクルシステムに対し、世の中の期待も大きい。ベンチャーキャピタルの資金も入り、現在、本格的に組織を拡充しているところだ。上場ももちろん視野にあり、言ってみれば今は第二創業期にある。次のステージに向けて、成長を加速させるエンジンとなる仲間を求めている。

業界で常に先駆けとなるシステムを提案してきた同社は、これからも尖り続け、世の中にないものを出し続ける心意気だ。これから入る人は自分の手でそれを実現し、社会が良くなるのを目の当たりにできる。そのおもしろさと手応えは実に大きいだろう。多くの人に使われるサービスを作り、日本の医薬を取り巻く環境を、社会をより良く変えたいという思いに共感できる人は、ぜひ訪ねてみるといいだろう。